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空/折 「ロッカールーム・レポート」 

ギャグ小話。牛さん受難…。空折カプ成立後ということで。

ロッカールーム・レポート



 ジャスティスタワー内のトレーニングジム・エリア。
 午後を少し回ったロッカールームではアントニオがトレーニングウェアから私服に着替え終わるところだった。
 アントニオがバタンとスチール製の扉を閉めたのと同時に、部屋の奥のシャワールームに続くドアが開いて、キースが姿を見せる。
「やあ、もう帰りかい」
「ああ、まぁな。お疲れ」
「あー…今日はいい天気だね。うん、いい天気だ」
 キースは肩にタオルを羽織ったまま話しかけてきた。アントニオは唸るように返事をする。
「はぁ。ああ、そうだな」
 よく天然だと評される男だが、何だか会話が上滑りしている。
「夜から雨らしいね。気を付けなければ」
「ああ、雨ね……」
 そうだ荷物を持って帰るんだったな。普段なら手ぶらだが、今日は会社から資料類を受け取った帰りだった。
 アントニオはロッカーをふたたび開いた。
 ロッカーの扉の内側には少し大きな鏡が嵌めてある。
 そこに映っていたのは、背後に立つキースの後ろ姿だった。
 背中合わせに立つ、着替えをはじめた彼の背には真っ赤な蚯蚓腫れが数本、くっきりと刻まれていた。
 見間違いようがない、随分色っぽい傷だ。
 アントニオの手から荷物が滑り、床にばら撒いてしまう。
 その音に驚いたようにキースの手からも着ようとしていたTシャツがヒラリと落ちた。
「大丈夫かい」
 チラリと見るとキースはこちらに顔を、つまり入口に背を向けていた。
 大丈夫かい、と言いつつ一緒に拾おうとはしてくれない。当たり前か。それに大した荷物をひっくり返したわけでもない。
「あ、いや、手が滑った」
 そういや今日のこいつは何か変だった、とアントニオは思い返す。
 トレーニングルームから自分より早くに引き上げてきたはずなのに、長々とシャワーを浴びていたな。
 背中を覆うように肩にタオルをかけたまま、無駄口をきていたっけ。あれは不用意に背中を見せないためか。
 万人が認めるヒーローらしいヒーローといったって、それは職業だ。聖人君子ではない、それはわかる。それにしても、気の荒い猫のようなのと付き合っているとは知らなかったな、と思う。
 背中ごしにキースがもそもそと動いているのがわかる。落としたTシャツを拾って袖を通しているようだ。
 その時。
 コンコン、と軽いノックが聞こえて、中からの返事を確認しないままドアが開いた。ここは男子のロッカールームだ、普段なら特に何の問題もないのだが。
「おはようございます。……え、あっ」
 声の主は顔を上げなくてもわかる、イワンだ。
 アントニオが立ち上がりざまに体ごとドアの方を向くと、イワンはまじまじとキースを見ている。
 見られている方の先輩はまだ首を突っ込んだだけというような捲れ上がっていたTシャツを伸ばすとくるりと振り返った。笑顔。
「ああ、おはよう」
「あっ、はい……あ、バイソンさんも、あの、どうも……」
 語尾がしゅわしゅわと消えそうになっていく。その顔はみるみるうちに赤くなる。こいつ見たな、とアントニオはため息をつきたくなった。
 いくらみんなのヒーローでもお前の憧れのヒーローでもそこにいるのは生身の人間だ。成人男子なんだからしょうがねぇだろ。それくらいで一々動揺すんなよ。つーか、ショックを受けたくなかったらレディ並みにノックは三回、中からの返事を待ってからドアを開けろ。
 ロッカールーム内に変な空気が発生しつつあるようだが、知ったことかとばかりにアントニオは自分のロッカーの扉をバタンと閉めた。
「お先ー」
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です」
 後ろ手に入口のドアを閉める。ふう、と今度こそ息をつく。
「あ、あの、すみません」
 ドアの向こうでイワンの声がした。
「それ、あの、背中の……痛かったですか? ですよね? す、すみません」
 アントニオは今吐いたばかりの息を吸い込んでしまった。ひゅう、と喉が鳴りそうになる。
 何を話しかけてるんだあいつは。僕って対人スキルが低くて、って言ってやがったくせに社交性どころか突き抜けてんだろ、その質問。戻って行って頭のひとつも叩いてやりたくなるが、立ち聞きしていたことになってしまう。
 もう知るか、と一歩踏み出そうとした、その足を縫いつけたのはキースの答えだった。
「さっき気がついたんだよ。今朝までは気にならなかったな、そう、夢心地で」
 何だよその答え。天然とか自然体とかいう範囲踏み越えてないか? 後輩にそんな説明すんなよ。恋愛映画で二枚目俳優しか言わねぇぞ、いや観たことねぇけど。 
「えっ……あ……そ、ですか……いや、あの……すみません……」
 後輩も盛大に照れるな。羨ましいなぁとか何とかおだててお茶を濁せ。
 まぁイワンが見損ないましたとキレるとか、キースが不躾な質問に腹を立てているとかいう状況よりはマシだ。そう自分に言い聞かせ、今度こそアントニオは力の抜けた足を踏み出した。
 その直後、イワンはつぶやいた。
「……次、は、気を…つけますから……」
 え、ちょ、おま、何言った?
 イワン、おい、折紙サイクロンの中身、何だと、他人様の背中についた爪跡について、なにゆえお前が『次は気をつける』必要があるんだよ! あれ? え、嘘、なに、そういうこと? さっき何回もスイマセン連呼してたのそういうこと?! いつの間にそういうことになってたんだよお前ら!!
 アントニオがドアのこちら側で顔色を失っているのとは対照的に、室内のキースは笑い出したようだった。
「えっ、何で笑うんですか?」とイワン。
「くくく……、すまない、ははは……だって、イワン君それは……次もあるって、期待していいということだろう?」
「えっ! そうなりますか?! なるのかな? なるか、な! えええ、き、期待って、それは、すいません、そんな意味じゃ!」
「そんな意味じゃなかったのかい? じゃあ、あれっきりにしたい、ってそういうこと?」
 拗ねるようにキースは言うが、声はしっかり笑っている。対するイワンはプチパニックだ。
「いやいやいや、違くて、あっ三回も言っちゃった、じゃなくて、ええと、だから、次は、ああ次とか言うからアレなんですよ、今度はもう少し、何ていうか落ち着いてですね」
「嬉しいなぁ! じゃあその今度はいつにしようか」
「ええっ、そうなりますか?! あの、今度って、次、みたいにあの、そういう具体的なアレじゃないっていうか、いやあの!」
 次も今度もニュアンス一緒だろ、と胸中でツッコミを入れていると、廊下の曲がり角から賑やかな声が聞こえてきた。
 こんな場所で聞こえてくるということは、間違えようがない。ヒーロー女子二人組だ。もう一人も女子を騙っているが認めない。アントニオは猛然とそちらへ進む。
「おい!」
 露出度の高い衣装を着ている割には潔癖そうなカリーナと、男女(いやこの場合は男女ではないが)関係に疎そうなパオリンの前にアントニオは立ち塞がった。
「ロッカールームに入る前に言っておくッ!」
「えっ、何?」「ん?」
「おれは今、おかしな空気をほんのちょっぴりだが体験した!
 い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
 おれは 『おいおい空気の読めない坊やだな、そんなこと尋くなよ』と思っていたはずが……
 おれのほうが空気を読めていなかった……。
 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが、おれも何の話をしてるのかわからなかった……
 勘違いだとか誤解だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
 どこかで聞いたようなセリフを一息に言い切ったアントニオに、二人の少女は目を丸くした。
「わぁ、ボクもそれ知ってる! でもボク的にはスタンドより波紋のほうが好きだな、修行して強くなるっていうところが!」とパオリン。
 カリーナはアントニオが背にしているロッカールームのドアを指して言った。
「あのねぇ……どう見えてるか知らないけどあたしたち女なの。女子更衣室を使うから。そっちに入んないわよ」
 行こ行こ、とカリーナはパオリンを促して、廊下の一番奥にある女子用のロッカールームに消えていった。


《 E N D 》


 ・ ・ ・ ・ ・

●ルナレフの名台詞を使ってみたかったのです(笑

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Posted on 2011/11/30 Wed. 20:26 [edit]

category: SS(空折)

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