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【再版しました】見切れ・冬コミ新刊 「little little bone」  

『little little bone』 オフセ、44p、500円、全年齢向。
※ 冬コミにて完売したため、再版しました ※

bone01
(実際は薄紫っぽい色の表紙です…紙名がアジサイ? 藤?)

空→折からの空折になるまで。イワン視点で、もだもだ成分多めです。

見切れ・参ではスペース№ う 17、サークル名 「今夜も赤飯」さまにて委託、
冬コミでは東地区“F”ブロック-18a 、サークル名「OKOnomy」にて販売したものです。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


※ ここにはイワンとキースしか出てきませんが、本では虎と牛以外のヒーローズがわらわら出てきてがやがや会話したりします。


(本文6pから10pまで)


<前略>

「きみがね、私とこうやって並んでなんていたくなくなるかもしれないから、先に話してしまおう」
「あの、それってどういう」
「……イワンくん」
「はい」
 好きなんだ、と言う。あまりにきっぱりとした言葉だ。はいグッドマンです、と電話に出るときのような。何々をください、と店先で注文するような。
 恋の告白とは思えないくらい、サバサバと告げられた。イメージしていたのとは全然違う。
 想像していたのは、自分が愛を打ち明けられるシーンではなかった。しかも、同性の先輩からだなんて。自分はこれでも男なのだから。誰かに、いつか、そういう類の言葉を告げるのだろうと。漠然と考えていた。
 イワンは目をしばたく。何度か唇を開閉してようやく、か細く掠れる声を出した。
「僕を、ですか」
 きみを、とキースは顎を引いた。
「できれば、つまり、恋人になりたい。そういう意味で」
「できれば?」
「そう、できれば」
 ポンポンと言葉を返されて、イワンは不安を覚えた。
「いえ、あの、違うんです」
「違う?」
「えっと、違うっていうのは、あの、いまのって別に茶化したとかそういうのじゃなくて」
「そうだろうね。私もふざけているわけじゃないんだ」
「これってドッキリとかでも」
「ないよ。こんな普段着で何をどう驚かそうっていうんだい?」
 すいません、とイワンは反射的に謝罪してしまう。謝るべきは私のほうだ、とキースが言い返して、イワンはさらに恐縮した。
「驚かせただろうね。それについては申し訳ないと思う。気分を害したなら、それも」
 キースは笑った。白い歯が見える。歯を見せるのって動物だと威嚇なんだっけ、とイワンは思い出した。そしてうつむく。
 誰と話していてもイワンは大概、一瞬顔を上げて、数秒だけ我慢して、それから自分のつま先に視線を落としてしまう。
 ただね、と言いかけてキースは視線を空に向けた。「たとえば…きみから『どうしてそんなにこっちを見ているんですか?』と尋かれたとして」
 はぁ、とイワンは顎を引くが、同時に自分ならそんな質問はしないだろうと思っていた。
 キースにじっと見られていることに気づいたら、きっと自分のほうに問題があるのだと確信してしまうに違いない。調子が悪そうだとか、不調法なことをしておきながら気がつかないとか。
 イワンの考えが読めるはずもないキースは照れくさそうに笑ってみせた。
「そう尋かれたら、たぶん私は馬鹿正直に答えてしまう気がするんだ。『実は、きみのことが気になっていてね』って」
 気になる、と面と向かって言われてもイワン自身は片方ずつ別の靴下を履いてきてしまったんだろうか、と解釈しそうな気がする。と、イワンは考えて自分の足元を見た。いつものワークブーツなら靴下は見えないのだ、大丈夫だ。
 いや、大丈夫とかではなくて。
「他の誰かから同じように尋かれても、やはり私は嘘をつけないように思うんだ。だから」
 だから、バレる前に自分から言ってしまおうと考えたのだろう。
 でもそれって。イワンは声に出さずに考える。
 ガマンができないだけじゃないんだろうか。本人の口から出たばかりだ。馬鹿正直って。良く言い換えれば素直とか実直になる。
 その差はなんだろう。言って言いっ放しなら馬鹿正直、誠実にその後も対応しそうなら実直になるのか。
「胸の中にしまっておけたらいいんだろうけれど、言わずにいられなかった。少し前に、たった一言を伝えなかったせいで悔やまれる出来事があってね」
 知っている。女性陣が騒いでいた一件だ。散歩の途中で出会った女性から励まされたというのに、感謝の言葉ひとつ伝えないうちに彼女は姿を消してしまった、と。
 向かい合うイワンの表情の変化に気がついたらしい。キースは大きくかぶりを振った。
「その、あれはもう終わったことなんだ」
 イワンは緩みそうになる唇を噛んだ。ものすごくソープオペラな香りのする台詞だ。あれはもう終わったことだ。お願いだ、信じてほしい。自分が言われる種類の言葉だと思わなかった。
 実際に口にする人をこんな間近で見ることになるとは思わなかった。しかもキースさんが言っている。それも僕に。
「もし、公園の彼女がまたフッと現われても、私の気持ちは揺らぐことはないよ」
「えーと、はい」
 そんなことはわからないでしょう、と喉元まで出かかった言葉をイワンは飲み込む。
「こんなことを打ち明けたら、きみを困らせるだろうとは考えた。それでも」
 迷惑はかける、と決めているのだ。堂々と宣言するところがおかしい。
「私のことは気にせずに、きみの気持ちを教えてほしい。たとえば、距離をおきたいということでも」
 気にせずに、か。無理だろうとイワンは思う。どうでもいいことにすらクヨクヨする自分は特に。
 イワンはうつむいたまま少し笑った。
「あれ、噛んだかな」
 イワンの笑いの根拠が別のところにあると思ったらしく、キースは眉を上げた。
「噛んでません」
「私は、大事なところで呂律が怪しくなることがあってね。いわゆる決め台詞はもうさすがに大丈夫だが」
「噛んでませんでしたから」
 本当に? たぶん平気でした、と短い往復があってから二人の声が途切れる。
「……そうだ。きみのどこに惹かれたかということを説明すべきなのかな」
「なのかな、って」
「すべきだね。よし」
 仕事にとりかかるような声にイワンは慌てた。
「あ、いいですいいです」
 イワンは顔の前で両手を振り回す。
「どうして」
「いや、いいです」
 キースは背後を振り返った。散歩中のテリアがなぜだかキースの真後ろで足を止めているのだ。すいません、と飼い主らしき女性がリードを強く引く。いかにも秋らしい深みのある色のストールをそよがせながら女性はテリアを引きずるようにして去っていった。
 遠ざかっていく高価そうなストールを眺めながら、イワンは口を開いた。
「あの、僕はですね、ちょっとウケよう精神が旺盛なほうなので」
「ウケよう精神?」
「どこか褒められると、意識しすぎてセルフパロディみたいになっちゃうんです。まぁ主に仕事では」
「いいことなのではないかな、褒められた部分を伸ばす努力というのは」
「ていうか、ワザとらしいとか、やりすぎとか、そっち系なんです。僕の場合」
 そう? と応えるキースは、どうもよくわかっていないようだ。イワンは押し切る。
「なので、いいです。僕のどこがいいかとか、言わないでください」
「そうかい?」
 そういうことなら、とキースはどうにか納得してくれたようだ。
「あの、それじゃあ」
 イワンは顔を上げた。キースは困ったような顔をしている。
 何だかおかしい。困り顔になるのは本当なら僕のほうじゃないだろうか。
「映画は、どうしますか」
「映画?」
 先週のことだ。
 今日に似た、時間に余裕のある帰り道にキースが話してくれた。
 実は元同僚が映画に出ているんだ、と。ポセイドンラインで、部署は違えど親しくしていた同期の男性が数年前に一念発起して俳優を志したのだという。レッスンと下積みを経た彼が、名前のある役をはじめてもらったのだそうだ。
 すごいですね、とイワンは素直に感心した。ヒーロースーツとマスクなしでカメラに映ろうなんて、自分は考えたこともない。
 こういうシーンで、こういう台詞を言ったんだ、とキースは新米俳優から聞かされたらしい。見つけてもらえたら嬉しい、と言われて、ぜひ観に行くと応えたのだそうだ。
 聞けば、海外の映画祭にも出品している作品だという。それは観てみたいです、とイワンが言い、それなら一緒に行こうという話になった。
 今週末から映画は公開になる。
「映画には、行きますよね?」
「いいのかい?」
「いいって?」
「いや、だから。きみが嫌じゃないのかと」
 そういえばさっきもキースは、自分の話を聞いたらイワンは並んでいることも嫌になるかもしれない、と言っていた。
 このいつでも朗らかで前向きな人にしては変なことを気にするんだな、と思った。僕じゃあるまいし。
 好きだ、という言葉は確かに聞いた。恋人になりたいという意味だとも言われた。
「だって、キースさん」
 イワンはキースの顔を見る。
 嫌ではない。
 急に嫌悪感が湧くということもなかった。
「約束でしょう、これは」
「デート、になるかと」
 二人が喋り出したのはほとんど同時で、約束とデートという二つの単語が混じって聞こえた。
「……え?」
「先週、話をした時点ではただの映画の約束かもしれなかった。でも、いまはちょっと、意味合いが」
「違って、ますかね」
 好きだと言われて、そう言った人とどこかへ出掛ける。それはデートなのか。普通ならそうだろう。しかし、この数分でお互いの態度が変化したわけでもなかった。実感がない。
 デートになる、とキースが言うなら、キースとしてはそのつもりなのか。何が変わるのだろう。

<後略>

(サンプルおわり)
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Posted on 2013/03/01 Fri. 02:08 [edit]

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