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空/折 「熱とわがままと罰と馬鹿」 

診断メーカー「おしたおしたー」での結果が面白かったので書きました。
あざとイワンを目指しました。(しかし失敗します。)

はっ! 10/31はバニーさん誕生日なのに…空折上げてる……



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

熱とわがままと罰と馬鹿

■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



「大丈夫かい?」
「大丈夫です」
 イワンは控えめに笑ってみせる。控えめ、というより今日は力のない笑みに見える。
「ごめんなさい。ここまでついて来てもらっちゃって」
「何を言うんだい」
 キースは本気で目を剥いた。
「困ったことがあったら助け合うことが大切じゃないか」
「はい。で、すね」
 ましてや、とキースは言葉を次ぐ。
「私たちは恋人どうしなんだ。遠慮はいらないよ」
「……ありがとうございます」
 トレーニングを早々に切り上げたイワンの顔色を見て、キースはその帰り道に付き添いを買って出たのだ。
 イワンの家は日本家屋だった。勝手知ったる、とまではいかないが何度か訪れたことがある。キースはどうにかイワンを家の中に導いた。
 無論、とキースは思う。ここを訪れたのは遊びに来た《だけ》だ。自分の部屋に招いたときも同じだ。イワンはまだ若いし、自分との歳も離れている。ましてや二人は多忙だ。焦って関係を急ぐことはないとキースは考えていた。
 だから、この家も足を踏み入れたのは居間だけで、どの部屋がどこにあるのかはよくわからない。
 それを思い出したように、途中からイワンが先に立って廊下をゆく。
「とにかく早く寝たほうがいいね。ひと寝入りしてから、食事と薬を」
 言いかけて、キースは気がつく。日本の家というのはベッドではなくて、布団を一々上げ下ししなくてはいけないのだと、イワンは話してはいなかったか。
「フトン、を敷いてあげようか」
「ああ、それなら大丈夫です」
 イワンは少しばかり気恥ずかしげに笑った。
「朝、忙しくて」
 イワンの指が襖を開ける。
「敷きっぱなしなんで、今日」
「それは、よかった」
 キースは喉の奥に何かが引っかかるような心地がした。
 ぐしゃぐしゃに乱れているわけではないが、少しよれて敷かれた布団に何とも言えずいけないものを見てしまったような気がする。
 イワンは枕元から布を取り上げると、キースに背を向けてから穿いていたカーゴパンツをストンと落とした。キースは飛び上がりそうになる。
「な、何を」
 慌てて回れ右をするキースに、イワンは不思議そうな顔になる。
「寝間着に着替えます」
「……あ、ああ、そうだね!」
 紺色の布と見えたものは、畳まれた浴衣だった。ガウンのようなその衣類をイワンはすぐに身に着け終えた。
 わざわざすいません、と声をかけられてキースが振り返ると、襟元から伸びたイワンの白い首筋に目がいってしまう。
「じゃあ、あの、失礼して」
「そうだ。ゆっくり休みたまえ」
 一礼したイワンが顔を上げる。
 くいっ、とイワンの指がキースの袖を引いた気がした。
 しかし、そんな程度の力であれば、キースは引き戻すこともできたはずだ。本来なら。
 イワンが尻をついたのは畳の上だった。まだ布団まで辿り着いていない。
 そのままどさりと上半身を後ろに倒す。それをキースは追った。
 キースの右の膝がイワンの腹を乗り越え、体の上に完全に跨る形になる。
「……イワン、くん」
「キース…さん……」
 いま、ここに。仮に誰かが入ってきたら、自分はイワンに襲いかかっていると受け取られてしまうだろうとキースは思った。
 大丈夫かい、と尋かなければ。
 でも、それはひどく困難な事業だった。
 いつもより赤く見える唇に、唇を重ねてしまいたい。
 馬鹿な。二人はキスを交わしていた。それでも、こんな恰好でキスをしたことはない。
 投げ出された手に、キースはそっと指を絡める。体温が高い。
 イワンはぼうっとしたまま、苦しげな息遣いを漏らすだけだ。
「んん……」
 火照った頬、仰け反った首筋。ほとんど閉じた瞼が時折ぴくぴくと動く。
 本当に具合が悪いのかもしれない。いや、悪いに違いない。
 このままイワンを抱き上げて、布団に入れてやらなければ。そう頭では考えられるのに、キースはのしかかったままの姿勢から動けないでいた。
 そのとき、イワンの唇がほんの少し隙間を開けた。
 誘いこまれるようにさらに顔を近づけたところで、彼は何か言っていると気づく。
「…んま、と」
「え?」
 熱によるうわ言かと眉をひそめる。
 イワンはかろうじて聞き取れる程度の声でつぶやいた。
「……まんまと誘いに乗りおったな…馬鹿め…はは……ごほッげほッ」
 笑おうとして息が続かず、咳き込んでいる。
 いまのは何だろう。冗談なのか。
 ジョークにしては身を挺しすぎてやしないか。
 キースが声をかけようとすると、その下でイワンの目が見開かれた。
「ああ!」
「イ、イワンくん…?」
「モノローグを口に出してしまった……」
「は?」
「心の声を喋っちゃいました!」
 心の声? と聞き返すキースの前で、イワンの頭がゴトンと音を立てて畳の上に落ちる。
「……イ、イワンくん?!」
 ショックのあまりか熱のためか、どうやら意識を失ったらしい。
 我に返ったキースが両肩を掴んで揺さぶっても、頬をつねってもイワンはしばらく目覚めなかった。


★ ☆ ★ ☆ ★


「――っ」
 イワンは目を開けた。自室の天井が見える。
 和風の木目の天井。胸の上には愛用の布団。
 ああ、なんだ夢か。
 ひどい夢だったけど、夢でよかった。
 というか、夢でなかったらどうしたらいいのか。
 ちょっと具合が悪いみたいです、なんて甘えて送ってもらって。あまつさえ無防備に誘うような素振りをしてみせて。
 それでまんまと押し倒されてみたら、実際にかなり熱を出していて、モノローグを口に出してしまったなんて。
 しかもそれが『嬉しい』とか『ずっと待ってたんです』とかでなく、あんな時代劇の悪代官みたいな。
 馬鹿めとか言っちゃったし。
 イワンはふぅっと細く息を吐いた。
「ああ、起きたみたいだね」
 キースの声がした。いま吐いた息をイワンはいっぺんに吸い込まざるを得なかった。
「氷嚢を変えようか」
 声がして、額の上から重みがスッと取り払われる。
 まだジンジンと冷たく感じる額は氷嚢を作ってもらっていたかららしい。
「キ…キ…キースさ……」
 なんでここにこの人が。
 送ってきてはくれたんだろうか。だったら、どこからが夢なんだろう。
「起きなくていいよ」
 布団の上から肩を軽く押し戻される。さっきの感覚を思い出して、イワンは肩を竦ませた。
 横になったイワンの上に身を乗り出したキースは、こちらも同じほど、いやもっと動揺を見せた。
 もしかして、この反応は。
「い、いや、すまない! さっきは、その……」
 さっき、ということはつまり。
 申し訳ない、とキースは膝をついて頭を下げた。
「どうかしていたんだ、具合の悪いきみに何ていうことを……許してくれとは言わないが、どうか今日だけは面倒を見させてほしい!」
「えっ、あの」
 イワンは枕の上で頭を動かした。
「さっき、キースさんが僕に…ええと……あれって、本当のこと、なんですか」
「申し訳ない!」
「じゃあ……そのときに、ひょっとして、僕は何か言って…たり、しませんでしたか?」
「ああ、確か『まんまと誘いに乗り――』」
「うわぁあああ! やめて! やめてください、ごめんなさい!!」
 イワンは熱も跳ね除けそうな勢いで、蕎麦殻の枕をふっ飛ばすと突っ伏した。
「いや、もとはといえば悪いのは私だ! どうか頭を上げてくれ!!」
 キースは突っ伏したイワンに触れることはためらわれて、その頭上でおろおろと手を振り回す。
 二人はさっきからフルボリュームで言い合っていた。ここが一戸建てだから良いようなものの、壁の薄いアパートであれば隣人が迷惑しそうな騒ぎようだ。
「イワン、くん……?」
 またぐったりしてそのまま眠りに落ちたのかと、キースは恐る恐る名前を呼ぶ。
「……ごめんなさい」
 うつぶせになったままで、イワンは小さな声を出した。
「どうしてきみが謝るんだい?」
「馬鹿とか言って」
「仕方ない。私は馬鹿だ」
 キースは頬を緩める。
「具合の悪い人にやってはいけないことだった。いや、健康な人にだってしてはいけない! 私は大馬鹿で正解だ」
「熱はありましたけど」
 顔を見せたくないし、キースの顔を見られないイワンはもそもそと何かの幼虫のように動く。
「けっこう熱が出てたみたいです。でも、僕はそれに気づいてなくて。だから、さっきのあれは…芝居です。ズルです」
「きみは朦朧としてたから、あんなことを思いついたんだよ」
「買い被りです」
「熱で変になってたんだ。まんまと…なんてつぶやくくらい」
「それはやめてください! 記憶から抹消して!!」
 さらに体を縮めようとするイワンの頭のそばに、キースはさっき本人が吹っ飛ばした枕を置いた。
「……じゃあ、記憶から抹消するから、今日は面倒を見させてくれる?」
 イワンは後ろ手に枕を探り当てると、その上に頭を載せた。ゆっくりとうなずく。
 そして、意を決したようにごろんと寝転がってみせた。
 目にしたほうのキースはぎくりとしたように背を震わせる。
 まだ熱を帯びて赤みがかった頬をしたイワンが髪も襟元も少々乱した格好で、ぽうっと見上げてくるのだ。襲い掛かるような真似は二度とすまいと誓っても、どうも心臓に悪い。
「記憶から抹消するってことは、今後一切言わないって意味ですからね」
 キースは空咳をしてから顎を引く。
「了解だよ。そしてオーケーだ」
「じゃあ、僕も忘れます。僕はキースさんに送ってきてもらって、それから布団に横になった、だけです」
「許してくれるの?」
「許すも何も。看病してもらってる、だけです」
「きみは寛大だ」
「キースさんこそ」
 イワンは唇を尖らせる。
「引いちゃわなかったですか?」
「何のことだい? ここまで送ってきたら、もうきみはウトウトしていたんだよ」
 わざとらしく驚いた顔を作るキースにイワンは笑う。
「……そうでした」
「ここにいたんじゃ、きみも落ち着かないだろうから、私は隣の部屋にでも」
「あの」
 キースの言葉を遮って、イワンが口を開く。
 立ち上がろうとしたキースは中腰のまま固まらざるを得なかった。
 イワンが眉を寄せた顔をして、布団の端をそろそろと持ち上げたからだ。
「ええと…何をしているのかな」
「僕は熱があって朦朧としているので、あの…心細いので、もしよかったら一緒に……」
「ひとつの布団に?!」
 最近干してはいないが、来客用の布団くらいはある。でもそれを言う気にはならなかった。
「だめですか」
 キースは天井を向いて考えあぐねているようだ。
 やっぱり嘘です、ごめんなさい、とイワンが口を開こうとするとキースが言った。
「絶対に何もしないと、きみと神様と故郷の両親とジョンと、そしてこの街に誓ってからだ」
「多い」
 イワンは笑って、腕が疲れるから早くしてください、と付け加える。
 キースは笑いを噛み殺しているのか泣きそうなのかどっちともとれるような顔で、布団に滑り込んできた。
「これは罰なんだろうか」
「まさか。ただの病人のわがままです」
「寛大だと言ったのを取り消すよ。なんて冷酷なんだ」
 自分の肘を枕にして寝そべりながら、下手な役者のように大袈裟に言う。本気で言っているようには思えない。
「でも誓って何もしないから」
 そっちの発言は本気らしい。イワンはうなずく。
「……あの、僕がちゃんと治ったら」
「うん?」
「我慢しないでいいですからね」
 仰け反ったキースの頭が肘から落ちて、布団からもはみ出して畳を打つ音がした。
 イワンは目を閉じる。緩んだ口元は布団で覆った。
「おやすみなさい」



 ■ END ■




AにBが意識が朦朧とした状態で押し倒されたときの反応は
 ↓
「馬鹿めが!まんまと誘いにのりおったわ!」(イヤ…怖い…)
 ↓
「本音と建前が逆でしたすみません」

……というのが診断メーカーで出て、ツボだったので書きました(笑)。
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Posted on 2012/10/30 Tue. 22:44 [edit]

category: SS(空折)

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