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砂 + 空/折 「Three Men in Freeway」 

10月7日のシティ・スパークで、砂のプチオンリーがあることを知りまして。
砂メインの本が出せたら参加できるのにな、とここ数日考えていました。

というわけで練習も兼ねて砂(+空/折)なSSを。
もう少し、この話に前後をつけたい。これだけだと5~6ページかな。

タイバニのキャラってみんな好きだから、みんなに幸せになってほしい。
エドは前科がついちゃったし、もうヒーローにはなれないんだろうけど、
それでもそれを受け入れた上で幸せになってほしかったりします。

題はイギリスの?ユーモア小説(スリーメン・イン・ア・ボート)から。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 

Three Men in Freeway, To Say Nothing of the Dog!

フリーウェイの三人の男 (犬は勘定に入れません)



 フリーウェイをシュテルンビルトへ向かう途中、俺たちの乗った晴れた空みたいな色の車は一軒のダイナーへ立ち寄った。
 店へは俺が行くことにした。最初は中で食おうと思っていたけど、犬がいるから残るという運転手と、そいつが残るなら自分も残ると俺のダチが言い出したからだ。
 俺だけ中で食って戻って、また交替に飯を食って…ってのも考えたけど、先を急いでるんだ。何か買って戻ってくる、と俺は宣言した。
 金を受け取ってダイナーへ歩いていくときにふっと、これってパシリじゃねぇのか、と気がつく。
 でも、まぁいいか。俺は軽く息をついた。アホみたいなハデで明るい車の中、甘ったるい雰囲気にまみれてるのには飽きてきてたんだ。
 看板を見上げると《Starvin' Irvins》と、今はまだ明かりのついていないネオンサインが踊っている。腹ぺこアーヴィン。悪くない気がする。
 強い陽射しを銀色の外壁が跳ね返してくる。ジェラルミン製の古いバスを改装したらしい店構えだ。 
 店に入ると、ところどころ削れた木の床は飴色をしていて、壁には古びた地図やポスター、チェックのテーブルクロスのかかったテーブルにはでっかいケチャップとマスタードのボトルが並んでいた。揚げ油とグレービー、それから甘ったるいケーキか何かの匂いが迎えてくれた。食事ってのはこうでなくちゃ、って気分になる。
「いらっしゃいませ」
 厨房の奥から男の声。こいつがアーヴィンだろうか。
 カウンターの奥のほうには二人の女が座っていた。両方ともTシャツの背中とデニムのお尻が見える。片方が立ち上がった。立ったほうはウエストから膝の上までの小さなエプロンをしている。
 俺とあんまり歳が変わらなそうな女の子だった。彼女は微笑んで、メニューを差し出してくる。
「決まったら呼んでください」
「持って帰れるものがいいんだ」
「一応、なんでも持ち帰り用の箱には詰められるけど」
 でも、と言って彼女は笑う。
「食べづらいかも。どれもソースたっぷりなのがここの売りなの」
「あんたのお勧めは?」
「断然チリ・ドッグ。チリコンカーンとチーズがいーっぱいだから。ポテトもついてるし」
「じゃあ、それを3つ」
「お飲み物は?」
「俺はビール。あとの2つは……」
「アルコールがダメな人にはミルク・シェイクがお勧めよ。ここの特製」
「じゃあそれ。ああ、待った」
 俺は運転席のヤツから言われていたことを思い出した。
「レモネードある? あれば、片方はレモネード」
「ありますよ。チリ・ドッグが3つに、ビールとミルク・シェイクとレモネードね」
「待ってる間に、俺にもう一杯ビール」
「はい。少々お待ち下さい」
 ウェイトレスが中に引っ込む。後ろ姿を眺めながら、この子は俺が何年かぶりに喋った女の子だって気づいた。
 俺たちの会話が聞こえたらしくて厨房では調理がはじまっているみたいだった。
 カウンターの手前に腰を下ろした。すぐに冷えたグラスとビールの小瓶が持ってこられる。
 俺はビールを注いだ。キンキンに冷えてる。きらきらと泡が弾ける金色の飲み物。一息に半分くらいを喉に流し込んだ。うまい。
 ウェイトレスはまだ俺の隣に立っていた。そのエプロンのポケットから丸まった…いや折り畳まれた紙が覗いている。
「これ、何?」
「蛙。折紙なの」
「オリガミ?」
 そんなような名前を俺のダチも名乗ってる。
「日本発祥の遊びで、紙を折って動物や何かの形を作るの。あたし、最近ハマってるんだ。見て、ここを押すと紙の蛙が跳ねるから」
「本当だ。面白いな」
 カウンターの上を紙製の蛙が跳ねた。そういや、面会に来たダチもそんな話をしてたような気がする。一枚の紙が工夫次第で色んなものに変わるんだ。いい名前で僕は気に入ってる、とか何とか。
「ねぇ、あれアナタの車? すごく素敵」
 空になったトレイで、ウェイトレスは半分開いているブラインドを指した。あの青いオープンカーか。まぁ今は幌を降ろしてあるけど。目立つよな。俺が「ああ」と言おうとすると、カウンターの逆の端に座った女が口を開いた。
「持ち主だったら運転するでしょ。そしたらビールなんて飲むワケないわ」
 ハスキーボイス。Tシャツの胸にプリントされた子供向けのキャラクターがくしゃみしたみたいに顔を歪めてる。豊満な中身のせいで。
「あんたがあのド派手なトラックの持ち主?」
「そうよ。いいでしょ? 乗せないわよ」
 俺たちが話しているのは、レゲエに転向したゴッホが彩色したみたいな大型トラックのことだ。客がこの若い女だけで、停まってる車もあれだけなら、この女の乗ってきた車があれってことだ。
「どこから来たの? よく刑務所への行き帰りの人が立ち寄ってくれるんだけど、あなたは違うでしょ? あんな車でかわいい犬まで乗ってるし。あら、お友達もすごくハンサム」
 面会帰りの奴らが立ち寄るってことか。ところがどっこい、まさかの出所したばっかりなんだけどな。確かにオープンカーに犬乗っけて迎えに来るヤツは普通いない。普通は。
 ほんの小一時間前のことだ。俺は収監されることになった事件を起こしちまったときくらい驚いた。
 出所する俺を迎えに来たのは、ダチだけじゃなかった。ド派手なオープンカーに、ブロンドのマッチョが白い歯を剥いて笑っていた。後部座席にはそいつによく似た金髪の大型犬が愛想よく尻尾を振っている。
 そして、助手席にちょこんと座ってるのが当のダチだった。
 一体こりゃどうなってるんだ、と聞けば、運転免許は持っているが自家用車を持っていないダチのために、車の持ち主が自分の車を転がしてきてくれたらしい。
 その親切なマッチョマンはどこのどなただよ、と尋いたら、ダチは真っ赤になって何やらボソボソとアスファルトに話しかけていた。聞こえねぇよ、とイラッとした俺に、ガタイのいいハンサムは言った。
『挨拶が遅れて申し訳ない。私たちは…その、少し前から交際しているんだ』
 退屈しているだろう犬を車から降ろして遊びはじめた二人が、ダイナーの窓に下がった赤いブラインドの隙間から見えた。呑気だ。ピクニックにでも来たみたいだな。それにしても、交際ねぇ。でも、あいつら恋人には見えない。兄弟? それも雰囲気が違うしな。実際のところは十くらい歳が離れた職場の先輩後輩だ。本当につきあってんだろうか?
「あいつら実はさ」
 俺はビールで濡れた唇を親指で拭うとニヤッと笑う。
「駆け落ちするところなんだ。俺が手引きしてやって」
「えっ、恋人どうしなんだ、すごい!」「うっそ、マジで?!」
 ウェイトレスもトラックの姉ちゃんも声をあげて、身を乗り出した。
「二人のキューピッド役になった愛犬と、思い出の車以外は全部置いて再出発するんだとさ。シュテルンビルトで」
「何それロマンチック!」「都会のほうが身を隠せるってこと? へぇー」
「俺もちょっと街を離れてたんだけど、そしたらあいつら、いつの間にかそういうことになってて」
 この部分だけは嘘じゃない。二人の女はきゃあきゃあと何やら楽しげに語り合いながら、窓の向こうの二人を眺めてる。
 そうしてるうちに、駐車場にデカいバイクが三台停まる。鋲のついた皮ジャンを着た、悪役レスラーみたいなオッサンが三人、犬とじゃれあってる男二人を睨みつけながら店に向かってきた。
「いらっしゃいませ」
 ウェイトレスはロマンチックなゲイカップルについての憶測話をやめて、仕事に戻る。メニューをおっかないオッサンたちの前に三枚置いて振り返る。テーブルの端に座っていたオッサンの手が伸びるのが見えた。
 俺は、ビールを寄せると、その影になる位置で両手をかざした。向こうの端に座っているトラックのお姉ちゃんからは見えないはずだ。カウンターの天板が二枚の手のひらの分だけズ、ズ、ズ…と波立つ。砂が流れていくみたいに。まるで蟻地獄でも発生したように。
 テーブルの上の流砂の手前に、俺はさっきウェイトレスが置いていった紙の蛙をセットした。さっきの女の子の手つきを思い出して、蛙の尻のあたりを指でおさえて、離す。折紙の蛙が流砂に飛び込んでいった。
「……いてっ」
 紙製の蛙が飛び出したのは、コワモテのバイカーのうちの一人の鼻面にだった。正確にはそいつらがついているテーブルに発生した流砂の出口から、だ。
 鼻の頭に当たってから床に落ちた蛙を眺めて、オッサンはきょとんとしている。女の尻を撫でようとしていたことは一瞬、忘れたらしい。「あっ、ごめんなさい」とウェイトレスは蛙を拾い上げるとカウンターに戻っていく。成功だ。
 俺はテーブルの上にかざしていた手をどけ、NEXTで発生させた流砂を消すとまたビールを喉に流し込んだ。うまい。仕事のあとの一杯ってヤツだ。
 一度脱獄を成功させてしまったせいで、ムショの中での俺の監視は厳しくなった。休憩中なんかでもNEXTを発現させることは許されなくなった。こっちは感覚を忘れたくないのに。だから、俺はものすごくこっそりと技を磨かなければならなかった。俺は今や、小さいものならある程度遠くまで砂に乗せて正確に移動させることが可能だ。怪我の功名だろう。
 一枚の紙が工夫次第で色んなものに変わる、か。確かにそうだ。ウェイトレスのお尻だって守れたしな。
「三人前できたよ。包んでくれ」
 アーヴィン(推定)の声がする。ウェイトレスは「はぁい」と応えて奥へ引っ込んだ。俺はビールを飲み干す。
「紙皿と、それからプラスチックのナイフとフォークも入れておきました。紙ナプキンもいっぱい。でも、気をつけて食べて」
 礼を言って金を払う。
「そうよね、ハネムーンにチリコンカーンまみれなんてかわいそうだわ」
 そう言って笑うトラックの姉ちゃんだって、口の周りがそのチリコンカーンで真っ赤だった。
「だよな、あいつらあれしか服持ってないんだ」
 適当に相槌を打って、三人前にしちゃでかい紙袋を抱えて席を立つと、ウェイトレスが追ってきた。
「さっきはありがとう」
 小声でそう言って、紙袋の上に何かを乗せてきた。蛙だ。折紙の。
「さっきって?」
「あのバイカーがあたしを触ろうとしてたんでしょ。あなたが助けてくれた。どうやってか知らないけど」
「こいつが助けたんじゃないのか」
 俺は折紙の蛙を摘み上げて、自分のポケットに仕舞う。
「でも、これは記念にもらっとくよ」
「チリ・ドッグが気に入ったらまた来てね」
「ああ、考えとく」
 にやけそうになる頬を心の中で叱りながら、俺はダチとその恋人(プラス犬)の待ってる車に戻った。
「すごいね、エド」
 紙袋を受け取りながら腐れ縁のダチであるイワンが言って、俺は驚く。そこにずっといたはずなのに、何を知ってるっていうんだ?
「ほら、キースさん、前に話したとおりでエドワードはすごいでしょう」
 イワンはにこにことつきあいたての恋人とやらに話しかけている。
「何の話だよ」
「エドワードくんは、女の子から絶大な人気があるって話さ」
 キースが満面の笑みを浮かべて、俺の肩越しに後ろを指した。さっきの店の入り口を。
 戸口にはウェイトレスが立って手を振っていた。その後ろからセクシー系のトラックの姉ちゃんまで顔を覗かせている。おいおい、口くらい拭いてこいよ。
「紙袋の中身は?」とイワン。
「食べづらくて美味いチリ・ドッグが3つに、ビールと特製ミルク・シェイクと普通のレモネード」
「それを注文する十分かそこらで、どうして女の子二人とそんなに親しくなれるんだい?」
 キースが目を丸くする。
 バカめ。あそこの女二人は、半分以上は駆け落ち中ってことになってるお前ら二人を眺めに出てきたんだ。
 この二人がこの先の巨大都市を守ってるヒーローだって後ろの女の子たちが知ったら、と思うとおかしくて仕方がない。つきあってるんだってさ、この二人。
 説明するのはアホらしいから俺はイワンに向かって言ってやった。
「お前のカレシは浮気願望があるみてーだぞ」
「いやいやいや、何てことを言うんだ! イワンくん、本気にしてはいけないよ! さぁ、出発だ!」
 昼飯を抱えたイワンと犬と俺まで車に押し込めるようにしながら、キースは自分も運転席に滑り込んだ。慌てすぎだろ。
 助手席でイワンは笑っていいのかどうかよくわからないという顔をしていた。
「いいじゃねぇか。今の話でそんなに慌てるなら、本当に浮気されたらすぐにわかる」
「……なるほど」
「こら、二人とも!」
 シートベルトを締めながらキースが困ったように叫んだ。
「まぁ、いいや。行こうぜ」
 もう少しこのフリーウェイをのぼって行って、俺はそこで新しい暮らしをはじめるのだ。
 フリーウェイか。信号や一時停止が必要ないってだけだ。この先に自由が待ってるわけじゃないことくらい、わかってる。
 檻の中にいた頃より窮屈な思いをすることもあるだろうけど、それでも何とかやっていかなきゃならない。
「あの子、まだ手を振ってる」
 イワンが振り返りながらそんなことを教えてくれた。
 俺は買ってきたばっかりのビールを開けると、口に持っていく。
 シュワシュワと喉に弾けるアルコール。こういう旨いものを二度と失わないようにしないとな。
 俺はサイドウィンドゥから腕を出して、その濃い緑色の瓶を真っ青な空と乾杯するみたいに突き出した。


■ E N D ■


……というカンジで出所後な砂本を出したいです。砂+ヒーローズ+オリキャラなカンジになりそうですが。
(オリキャラといってもこのSS程度だと思います。)
ちょっと今月中で、もう少し知恵を絞ってみます。

今月中というのはね、空/折だって締め切りがもう20日かそこらなのです……。アワワ;;

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Posted on 2012/09/03 Mon. 21:42 [edit]

category: SS(砂)

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