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空/折 「休日についての秘匿と真相」 


女子会vs天然男子とネガティブ男子。前作「何にでも君は、いつでもあなたは。」とちょっと繋がってます。あ、読まなくてもわかります。ジョン様はお元気になられましたよ、と。 無自覚なような、お互いちょっと意識しはじめたような、そんなお話。誰得。女子会書くの楽しかったです(笑)。

 
休日についての秘匿と真相
 


 ジャスティス・タワー内のトレーニングセンター。
 トレーニングメニューを一セット終え、ミネラルウォーターのボトルを傾けるキースの耳に明るい声が入る。
 カリーナとホァンが休憩にやってきた。別室で組み手でもしていたのか、ホァンは意気揚々としているがカリーナはさかんに腕をさすっている。
「ああ、あれ見てたんだ?」
「うん。面白かった」
「すっごい笑えるよね。で、最後はけっこう泣けるし」
「夕方、家族とテレビ電話で話したあとだったから、ジーンとしちゃった」
「うちのママなんてふつうに涙ぐんでた」
 キースのいるテーブルの前で、二人の少女は足を止めた。
「ここ、いーい?」とカリーナ。
 キースが「どうぞ」と言うのと同時に二脚の椅子が引かれている。
「食べてね」とホァンはテーブルに中華風の揚げ菓子らしきものの入った紙袋を置き、まず一つ自分の口に放り込んだ。
 二人はテーブルに着く前同様、さえずるように会話を続けた。
 誰それが恰好いいだの、誰の演技が弾けているだのというのは、どうやらドラマの感想らしいことがわかる。
「フハイハイもひのうおやすみらったの?」
 話題が一段落して、ホァンが尋ねる。口に揚げ菓子を頬張っているらしいが「スカイハイも昨日お休みだったの?」と言っているようだ。
「ああ。久しぶりに丸一日休養したよ」
 日課の軽いワークアウトとパトロール以外はゆっくり休んだ一日だった。
「ふーん。らにひてあほふの?」(何して遊ぶの?)
「昨日はジョンと散歩をした、そして買い物と食事をしたね」
「たのひかっら?」(楽しかった?)
「ああ、とてもね。とても充実していたよ」
「ジョンってレトリバーの? 買い物とか外食にも一緒に行くんだ?」
 首にかけたタオルで汗を拭いながらカリーナが言う。
「うん。ジョンと遊びにおいでと誘ったから、三人いや二人と一頭――」
「あれぇ? それって」
 口の中のものを飲み込んだホァンがつぶやく。
 気がつくと、心なしか左側の空気が冷えている気がする。そちらに首を回すと、カリーナが細い眉を吊り上げていた。
 そうなんだぁ、とカリーナは唇を尖らせていた。
「うわぁ。スカイハイでもそんなことするんだ」
 そんなこと、の意味がわからずにいると、右側からホァンがポンと手を打った。
「あっ、昨日のドラマだ。ウチに犬を見においでよ、って女の子を呼ぶの。ねっ」
「……え?」
 今度は首を右に向けると、また揚げ菓子に手を伸ばしながらホァンが笑っている。
「主人公の妹がね、悪い噂のある先輩の家に行っちゃうの。夜になっても帰ってこなくて、それで主人公が心配して探し回ったの」
「家族同然とか言っててもワンちゃんをダシに使うんだぁ。ふぅん」
 二人が昨夜見ていたドラマでは、どうやらペットをきっかけに女性を家におびき寄せる輩が登場したらしい。
 いやいやいや、と慌てて口を開く。
「それは違う。勘違いだ」
 自分自身が軽蔑されることはともかく、ジョンまでその手先のように思われるのは気の毒だ。
「違うの? じゃあ、誰とショッピングと食事をしたのよ?」
「どんな人?」
 二人の少女が身を乗り出してくる。思わず体を引いてしまう。
 誰と休日を過ごしたのか。
 買い物や食事につきあってくれたのは誰か。
 キースは無意識にガラス張りになったトレーニングルームのほうに視線を投げた。
 今日は来ていないが、いつもこの席から振り向くと、マシンに向かって汗を流す、プラチナブロンドがちらちらと動くのが見えるのだ。
「視線そらしてるし。アヤシイんだけど」
 カリーナの不審そうな声に、口を開きかけて閉じる。
 散歩を兼ねたウインドゥショッピング、それからテラスのあるカフェでの食事。
 なぜ、その相手の名前がすっと口から出てこないのか。
 歩きながら幾度となく屈んでは退屈していないかとジョンの様子を伺ってくれたこと。
 食べ方が奇麗だということ。それなのにけっこうな量を一口で口に運ぶこと。
 川べりのウッドデッキで、川面を渡る風に遊ばせていた白銀の色をした髪。
 話を聞いてくれているときにゆっくりになるまばたき。
「その人、美人?」
 ホァンが尋いてくる。
「うん。そうだね」
 反射的に答えていた。
 しまった、と顔をあげれば、クスクス笑いと呆れたようなため息が返ってくる。
 カリーナはホァンの肩をつかんで揺すりながら
「気をつけようね! かわいいペットにも食べ物にも釣られちゃダメよ!」
 と気合のこもった声で忠告していた。
 キースは後輩の前で小さく息をつくしかなかった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


 その翌日。同じテーブルに今日はネイサンとホァンが先についていた。
「おはよう、オリガミさん」
「あら、おはよう。ここ、どぉぞ」
 二人が後からやってきたイワンに挨拶をする。
「おはようございます」
 トレーニングの一度目のセットをこなし、タオルで汗を拭いながらイワンも相席になった。
「――じゃあ、お休みの日に料理に挑戦したわけね。エライわぁ」
「エラくもないよ。雑誌に載ってた通りにやっただけだし」
 二人の会話を水分補給しながらイワンは聞くともなしに聞いていた。
「そしたらレシピが二十人分だったんだよね」
「ちょっと、何それ。気づきなさいよ」
「ひき肉2キロって多いなぁとは思ってたよ。まぁボクの胃袋的には問題なかったけどね」
「完食したの、それ?! 大体、二十人前って何の雑誌よ」
「格闘技の雑誌で、格闘家の合宿所ゴハンって連載があるんだ。毎回おいしそうで」
「女の子向けの雑誌読みなさいよ! 今年はこういうファッションが来る、みたいな」
「えーっ、興味ないもん」
 お説教が入りそうになったからか、ホァンがイワンの方に顔を向けた。
「オリガミさんは最近オフの日あった?」
「あ、うん。一昨日がそうで」
「へー。何して過ごすの?」
「フツウだと思うけど……買い物したり、ご飯に行ったり」
「そうよ、こういうのがフツウよ」
 とネイサンも話に加わった。
「ちなみに、それってお一人さま?」
「あ、いえ、一昨日は三人…いや、二人と一頭っていうか」
「あらぁ。ペット連れなの、お友達?」
「はい。前にその犬がケガをしてたので、どうしてますかって尋いたら、元気になったから会ってやって、みたいなカンジで」
「あー、それって知ってる」
 ホァンがポンと手を打つ。
 知ってるって何を、と慌てるイワンをよそにネイサンも同意した。
「一昨日の夜やってたアレでしょ」
 と、その口から出てきたのは何やらドラマのタイトルらしい。
「ドラマでね、ある女の子が犬を見においでよ、って男の先輩の家に誘われるってシーンがあったのよ、ねー」
 ねー、の部分は二人で声をハモらせている。はぁ、とイワンはうなずく。
 ふーん、とネイサンは顎の先に指を持ってきて唸った。
「うちのペット可愛いから見においで、って……定番よねぇ」
「へ?」
「すごくいい眺めだから部屋においでよとか、珍しい何とかが手に入ったから見においで、とか食べにおいでよとか。ねぇ?」
「えっ、えっ?」
 きょときょとと小動物のような落ち着きのない動作をするイワンに「やぁだぁ」と笑いを含んだ声が上がる。
「なぁに、その顔。意中の相手を部屋に呼ぶ定番の口実だって言ってるのよぉ」
「えっ?! な、何ですかそれ! い、いやいやいや、違いますよ!」
 今度はゼンマイをめいっぱいに巻いたバネ仕掛けの人形のようになるイワンだった。
「あ、あの! 勘違いされてるみたいですけど、あの、男の人ですから、相手の、あの、犬の飼い主さんは!」
「あら、そうなの? やだ、ちょっと大丈夫だったぁ? 今の言い方だとアナタより年上の、オトナのオトコなんでしょ、彼」
「大丈夫って何ですか、大体っ部屋になんて上がってないですから! 外で会って、その、散歩して買い物してご飯を食べて、っていう」
「ワンちゃん連れてウッドテラスでカフェデートね、ふふ」
 そういう自然体な休日の過ごし方っていいわぁ、とネイサンがうっとりと遠い目になる。
「いや、ええと、どっちかって言えば、僕がジョ、いや犬と遊びたいって言い出したっていうか、元気ですかって聞いたのは僕の方っていうか!」
 ホントにそういうんじゃないですからやめてくださいよぉ、とイワンは盛大に眉を下げて情けない顔になった。
 向かいの席の二人は笑い声を上げる。
 怒涛の質問が途切れて、イワンは細く息を吐いた。
 トレーニングルームを何とはなしに眺める。今日そこにいないことは知っている、長身の影がないことを確かめてしまう。
 一昨日のことをこんな風に噂されて、本人が耳にしたらどんな反応を示すだろう。
 あの人なら、ただ鷹揚に笑っているだけだろうか。
「えー、そういうんじゃないんだ? 詰まんないわぁ」
「詰まんない、って。でも事実ですから」
「お散歩にショッピングにランチしただけ?」
「だけ、です」
 いつも愛犬と歩くのだという散歩のコース。時々立ち寄るのだという川べりのカフェ。
 この人はこういう場所で休日を過ごすのか、とやけにドギマギした。
 ウッドデッキに吹く、海に近いことがわかる風。午後の日差しの中での会話。
 話が弾んだとは言い難かったが、ぽつぽつと話して顔を上げると『聞かせてくれてありがとう』と言われて慌てたこと。
 何に使うのかわからないインテリアグッズをショーウィンドウの外からじっと眺めていたら、背後から店の中に向かって『これを包んでください』と店員に呼びかける声がして。危うく用途不明のものをプレゼントされてしまいそうになって『違うんですそうじゃなくて』と大騒ぎしてしまったこと。
「……ステキな人なの?」
「えっ、はい」
 反射的に答えてしまってからイワンはビクッと肩をすくめた。
 ああ何言ってるんだ僕は、と内心で叫んでいそうな顔をみるみる赤く染めた。
「そお。いいわねぇ。アタシもステキな人とデートしたいわぁ」
「あっ、いや、何ていうか、その、デート、じゃ」
 イワンはガタガタと椅子を鳴らしながら立ち上がる。
「そっ、そうだ、あんまり休んでるとトレーニングの意味なくなっちゃうんで! し、失礼します!」
「はぁーい、頑張ってぇ」「うん、またねー」
 二人は腰掛けたままヒラヒラと手を振った。
 バタバタとイワンが立ち去って、その後ろ姿が部屋から消えてから。
「ボクさぁ」
 ホァンは口を開いた。
「そっくりの話、昨日聞いたよ」
「そっくり?」
「一昨日のお休みの日の話。何をしてたのって聞いたら、ス――」
 Sの発音をしかけた少女の唇の前に、褐色の人差し指がすっと立てられる。
「んーん。野暮なことしないの」
「野暮?」
 何が? という顔をしながらも、言わなくても通じたらしいと知ってホァンは口を閉じた。
「どうして二人とも誰と遊びに行ったか言わなかったんだろ」
「二人とも? 言わなかったの? そぅお」
「ブルーローズなんて昨日『家族同然なんて言ってたペットをダシに使うなんて』とか言ってプンプンしてたのに」
 ネイサンは含み笑いを漏らす。
「そんなこと言ってたの? あのお嬢ちゃん。まったくお子ちゃまねぇ。恋なんて手練手管がなきゃ面白くないじゃないの」
「でもス、えっと、あー、あの人は言い訳しなかったよ。困った顔してたけど」
 なんでだろ、とホァンは思案顔になる。昨日、先輩をからかって悪かったなと思っていたのだ。
「あのねぇ。たとえば、とーってもステキなプレゼントを贈られたら、どう?」
 淡いピンクに彩られた爪で指されて、ホァンは瞬きをした。
「え? とーってもステキなんでしょ。すごく嬉しいんじゃないかな?」
「そうねぇ。それが、ものすごーく好きな人から思いがけなく贈られたプレゼントだとしたら?」
「うーんと。じゃあ、きっと滅茶苦茶嬉しいと思うな。……それが何?」
「そんなとっておきのプレゼントみたいな時間のことを、アナタだったらみんなに自慢する? それとも」
 言葉を切って、ラメ入りのピンク色の爪を今度は自分の唇の前に立ててみせた。
「……それとも、自分だけの秘密みたいにして大事にしまっておきたくなる?」
 ふふっ、と厚みのある唇を尖らせてネイサンは笑った。
「つまり、そういうことよ」


 《 E N D 》
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Posted on 2011/11/17 Thu. 21:23 [edit]

category: SS(空折)

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