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空/折 「彼が無口でいる理由」 R18 

一応R-18です。ご注意を。

声も聞かせたがらない、顔も見せたがらない恋人。
なのに、そんな相手に溺れてしまう、不安……とはいえやっぱり甘めな空折。

お友達に「なんか空/折なネタくださいー」と無茶ぶりなお願いしたら、
エチ-の間じゅう無口すぎる折にネガティブハイになっちゃう空、というお題を
いただきまして。
キース視点って難しかった!けど、挑戦してみて楽しかったです!



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


彼が無口でいる理由




 抱き合ったあとの、そしてそこから眠りにつくまでの短い時間。イワンはいつもより打ち解けてくれる。
 といっても他愛ない会話を交わすくらいだ。
 特別甘い言葉を告げあうわけでもない。
 寝そべったままで、最近の面白かったことや今度してみたいと思っていることを喋る。
 普段は懸命に話題や言葉を選ぶのに、それが面倒になったようにつらつらと色々な話をしてくれる。
 素肌に触れても緊張する様子はなくなる。
 眠気のせいか、ゆっくりになるまばたき。
 少しだけ幼くなったような口調でとり散らかった話をする。
 その時間のために、彼はそれより前の行為を甘受してくれているような気さえする。


 行為の最中、イワンは声を殺そうとする。
「……イワン」
 ほとんどささやきレベルの声で呼ぶと、下敷きになった体が震える。
 十分すぎるほど狭い場所がさらに噛みつくようにうごめく。
 彼の中はひどく狭い。
 当たり前だ。湿らせた指先を含ませて、押し込んで、執拗に捏ねて、どうにか慣らした場所なのだ。
 これ以上引くことも、突き入れることもできないと思うくらいに。
 鋭敏になった性器から受け取る感覚に叫びだしそうになるくらいに。
 逃げ場がない。どこもかしこも。
 すぐそこにいる。
 これ以上ないほど近くに。
 そう感じると、もっと欲しくなってしまう。
 最初のときから、そうだった。
 つけ根まで彼の中にもぐると、化学作用が起きるみたいにこちらの体が勝手に反応をはじめてしまう。
 冷静に考えたらほんの少しの深さのはずなのに、きつい場所をこえて進んでいくと、その深度に怖くなって引き戻す。
 熱い抵抗に、しびれる。
 頭の奥まで。
 下敷きになった体が呼応するように震えるのがわかる。
 その震えは、どんな意味だろう。痛みか、恐怖か、嫌悪か、それとも快感か。
 それを確かめることすら放り出して、もっと奥までもぐりたくてたまらなくなる。
 次は、もっと、中へ、奥まで。
 触れたことのない場所がないくらいに。
 溺れる、という言葉は喩えではないのだ。
 キースはいつもそう思っている。
 わずかな器官を触れあわせているのにすぎないはずだ。
 それなのに初めてのときからずっと、何度めであっても彼に――イワンの体に溺れてしまう。
「……、っ」
 キースが動きはじめると、声を聞かせたがらないイワンの、噛みしめているはずの唇から隠しきれない熱を孕んだ息がこぼれて、それもまたキースを夢中にさせる。
 イワンは顔を見せたがらない。
 いつも背中を見せる。少しずつ血の気のよくなって汗ばんでいく、それでも白い背中を。
 自分の体重を支えきれなくなって肘が崩れる。
 荒くなる呼吸を隠すように枕に顔を押しつける。
 頭より高くもたげられた腰。小刻みに震える内腿。
 仰け反る背中も、振り乱す髪も、暗い部屋の中でも白く映る。
 割いてしまいそうなほどにシーツを握りしめる指。
 鋭い角度になった指の関節が白く白くなっていく。
 せめて、こちらの手でも腕でも握りしめてくれたらいいのに。爪を立ててくれればいいのに。
 キースはそう思うが、それはいつも叶えられない。
 はじめの頃よりは、イワンの好きな場所と形を探しだせる気がした。
 目の前の体にすがりつくようにして腰を進める。
 どちらかが、いやもしかしたら二人とも壊れてしまうのではないかと少し恐ろしくなる。
 激しく動く二人の下で、ベッドのスプリングが嘲うようにかすかに軋む。
 イワンの背が電流でも流されたように跳ねた。
 前に回した手から彼が熱を吐き出したことが知れる。
 ほとんど同時に、根元を引き攣るような収斂に襲われてキースの意識をさらっていく。
 すぐに終わりの高さがやってくる。
 傷つけないようにと思いながら、イワンの腰骨のあたりを両手でつかむと深く押し入りながら背筋を震わせる。
 放出される熱が通り抜けるたびに痛みが走るようだった。
 何度目かの脈動のあと、もう何も残っているはずがないのにまだ高い波が強く押し寄せてくる。
 肉体的な繋がりはどうでもよかったはずだ。
 愛しているのは、イワンの控えめな性格や、弱音を吐かない芯が強いところだとか、本来の性質とは180度違うのに皆を楽しませるために明るく振る舞う努力だとか、そういった精神なのだと思ってきた。
 彼が望まない限り、体を繋げることなんて欲するべきではないと思っていた。
 なぜそんなことを考えられたのだろう。
 一度、触れてしまうとそんな綺麗事は、簡単に揺らいだ。
 見事なまでに消し飛んでいた。
 ただ、知りたかっただけだ。イワンの、見たことのない顔を、反応を、見たかった。
 イワンの腰から手を離そうとすると、鱗でも剥がれるみたいに指が一本ずつ外れていった。
 指のかたちに楕円に赤くなった肌を見下ろす。傷にはなっていないはずだ。
 キースは、イワンの隣に体を落とした。それだけで腕が震える。
 しばらく天井を眺めて荒い呼吸を繰り返していた。
 ゆっくりと横に首を倒すと、うつぶせのままのイワンが見える。白銀の髪に隠された横顔。
 彼の肩も激しく上下しているのが見える。
 啜り泣くような息遣いが聞こえる。
 まさか泣いてはいないだろう。しかし、真実はわからない。彼の顔は見えない。
 肩をつかんで、こちらを向かせてしまえばいい。
 キースに、それはできない。
――本当は、もうこんなことをしたくない?
 そう訊いてしまいたい。けれど、うなずかれてしまったら。
 いや、イワンは肯定などしないだろう。首を横に振るはずだ。それが嘘でも。
 けれど、目に浮かぶ安堵の色を見つけてしまうかもしれない。
 だから怖い。
 それに、もしももう嫌だと懇願されても、彼を手放せる気がしない。
 それが恐ろしい。
 

 キースの手に髪を梳かれて、イワンはゆっくりと瞼を開ける。
 幾度かまばたきをした後の瞳に不思議そうな色がわずかに混じった。
 いつもなら湯気の匂いをまとったキースが『シャワーが空いたよ』と教えてくれるのだ。
 今日はそうではない。さっきの汗が冷えてしまっただけのような恰好で、キースはベッドの縁に腰掛けていた。
 キースは何も言おうとしない。イワンは視線をシーツに落とした。
「……忘れないうちに聞いてもいいですか」
「うん、何?」
「キッチンのキャビネットの脇の、床に置いてある」
「ああ、あの手提げ。ワインだよ」
 キッチンの光景を思い出すように目を細めてキースは言った。
 無造作に床に置かれた手提げ袋とその中の包装紙とリボン、そのどれもがやけにキラキラしていた。
 それを渡されたときのお互いのバツの悪さを思い出して、キースは苦笑する。
「貰いものなんだ。同僚がね、パーティーに持参しようとしてオフィスに忘れてしまったらしい。途中で気づいても、戻るともう間に合わない。だから使う機会がなくなった、と譲り受けたんだよ」
「その人、飲めばいいのに」
「ワインは嫌いなんだそうだ。特に、ああいうスパークリングワインは」
 自分では決して口にしないものをわざわざ用意して、しかも置き忘れて出掛けてしまい、他に贈る相手もいないというのだから、その人物の何ともいいがたい心情も理解できなくもなかった。
「飲みたい?」
「え、今? まさか」
 真夜中にワインを開けようというキースの提案を冗談だと受け取ったのか、イワンは面白がるような顔になった。
「嫌いかな、スパークリングワインは」
「飲み…ますけど。今度」
 そこまで言って、イワンは小さく笑った。
「スパークリングワインってコルク抜き使わなくていいんですよね。よかったです」
「何がだい?」
「……覚えてないんですか? 前にキースさん、ワインを開けるときに瓶の中でコルクを割っちゃって。ワインを飲むのにティーストレーナーを探さなきゃいけなくなって」
 イワンの口元がほころぶ。
「ああ、あったね。いがらっぽいワインにしてしまったっけ」
 釣られたようにキースも一瞬笑みを受かべて、それからストンと落ちるようにその顔から笑みが消える。
 イワンは身じろいでから尋ねた。
「なんか、疲れてます? 今も、うとうと…してました?」
「いや…少し考え事をね」
 彼らしくなく言葉尻を濁すキースに、イワンは目を眇めた。
 何を考えてたんですか、と訊こうとしてそうすべきではないのかもしれないと唇を閉ざす。
 キースが小さく息をつくと、イワンの隣に体を横たえた。
「私からも、聞いてもいいかな」
「あっ、はい」
 イワンはうなずいたが、なかなか質問は返ってこなかった。
「キース…さん?」
 呼びかけると、キースは枕の上に顔を伏せた。イワンは眦を大きくして、まるで急に拗ねてしまったかのようなキースを見守ることになった。その背中を見つめるしかなくなる。
 いつもの、行為の最中の二人と反対の行動をとっていることを、お互いに気づいているのかどうか。
「……私は、ちゃんとできているのかな。その…つまり、君の恋人として」
「え、っ?」
 イワンは聞き返したが、それは聞き取れなかったからではなかった。キースの声はうつ伏せになったままでも十分すぎるほどよく通る。
「だから……きみは、楽しいだろうか? ちゃんと、満足している?」
「ま――」
 イワンは衝撃的な単語の頭文字だけ発音すると、あとは唇をその形に開閉させた。
 楽しいとか満足だとかいうのは、つまりさっきまで自分たちがしていた行為のことで。
「嫌、ではない…のかな」
「それは――」
 イワンは咽そうになりながら、どうにか言葉を返す。回答に時間制限があるような気がして。
「それは、ないです」
 ふぅっ、とキースが息を吐いた。その厚みのある肩が上下するのが見える。
「だったら」
 一度、言葉を切って。次に持ち出された提案に、イワンは息を止めた。
「だったら、褒めてほしい」
 もっと甘い空気になってもよさそうな言葉を、キースはどこか苦しそうに告げた。
「私のしていることが、少しでも君の意に叶っているなら。どこがいいか、何が好きか、教えてほしい。わからないんだ。私が馬鹿なだけかもしれないが、君がどう感じているのかわからなくて。ひどくつらそうで、耐えてるように見える」
 言い終えて大きく息をつくキースの隣で、どさりという音が聞こえた。
 咄嗟に起き上がってそちらに首を向けたキースが、驚いた顔になる。
 入れ違いのように、今度はイワンがうつ伏せに倒れ込んでいたからだ。
 枕にしがみつくようにして、ぎゅっと背を縮こまらせている。
 キースはため息をつきそうになって、それを慌てて引っ込めた。
 かわりに名前を呼ぶ。恐る恐る。
「……イワン、くん」
「最初は――」
 顔を伏せていることを加味したのだろう、普段より声を張ったら予想外に大きな声を出してしまって、イワンは自分でも驚いたように口を閉じた。
 空咳をしてから、震える声で言う。
「ええと、最初は…その……我慢してればいいんだろう、って思ってました。終わるまで…ただ、我慢してれば、って」
 何か言おうとするキースを遮るように、イワンは言葉を継いだ。
「さ、最初っていうか、実際にする…前、は……何ていうか、こういうのだって、思ってなかったから」
 でも、と言ってイワンはひゅぅっ、と息を吸い込む。
「今もしてますよ、我慢。あの、別の意味で…き、聞くに堪えない声とか、何かとんでもないこと言いそうで……手を伸ばしたら、引っ掻いたりしそうだし…顔だって、その……ぜ、絶対変だし……」
 そこまで言うと、抱えた枕を折り畳もうとするみたいに背を丸めてしまう。
 さっきまでの、体を繋げていたときの再現のように。
 実際には行為の最中ではないのだ。いつものように折り重なってはいないキースの目には、その白い背中の綺麗なカーブがよく見えた。
 ゆるい弧を描く背骨の上に、キースが手を載せるとそうされたイワンの体が小さく跳ねる。
「……あ、褒めて、ないです…ね」
 そんなことに気がついて、律儀に恐縮してみせたりしている。
「イワンくん」
「はい」
「いま君が言ったこと、確かめさせてもらえる?」
 背に載せた手を背骨に沿ってそっと降ろしていくと、イワンはかすかに身をよじった。
「それって、これから?」
「そう。これから、すぐ」
「い…いいです、けど――」
 イワンが息を飲んだのは、どうにか承諾したところを仰向けにひっくり返されたせいだ。
「えっ、ちょ…聞いてました?! あの、顔…変な顔だろうから、って……」
 慌てて抱え直そうとする枕を、キースの手が乱暴にならないように取りのけていく。
「それも、確かめさせて」
 枕を追うようにして上がったイワンの両手に、キースの手が降りていって指どうしが絡まるような繋ぎ方になる。
 イワンは大きな瞳をゆっくりと瞬いて、困ったような顔になっていた。
 シーツの上で仰向けに縫いとめられてしまったことにも、まだ思い至らないような様子で。
「……ほんとに?」
 イワンの子供じみた訊き方に、キースは小さく笑った。
 そう、抱き合ったあと彼の口調は少しだけ幼くなるのだ。
 いつもより瞳の色を見せてくれるような、ゆっくりになるまばたき。
「あの…ダメだったら言って…くださいね」
「うん、そうするよ」
 ちょっと尖らせた唇の上にそっとキスを落とす。
 ダメどころか、きっと。
 沢山褒めることになるのだろう、と思う。
 抱き合ったあとの、そしてそこから眠りにつくまでの短い時間。
 いつもより、そして今よりたぶんもっと打ち解けてくれるはずの恋人に。
 話題も言葉も選ばないで、とり散らかった話をすることになるだろうな、とキースは思った。


 《 E N D 》

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Posted on 2012/05/01 Tue. 22:42 [edit]

category: SS(空折)

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