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空/折? 「歌をきかせて」 

ようつべで動画を見てSSを書く、第三弾。

友達からA-K-B-Lというジャンル名を賜りました(笑

これカプ表記していいのか、よくわかりません…。

「年上の君は 自由奔放で 次の行動が なかなか読めない」
という歌詞をSSに仕立てようとしたんですけど、
これでは、ただのカラオケできゃっきゃ話では……。

パオリンもいます~。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


歌をきかせて


 食事会という名の、先輩たち的には飲み会のような場から連行されてきたカラオケ店。
 家が近い、という理由と、迎えの教育係が遅れているという理由で後輩二人はここにいる。
 しかし、後輩がモタモタと曲を選ぼうかどうしようかとしているうちに、先輩二人 ―― 虎徹とアントニオはぐうぐう寝息を立てていた。
「タイガーさーん、バイソンさーん」
 マイクを使って呼びかけても、先輩二人は起きる様子がない。
 選曲に手間取っていた後輩 ―― イワンは困ったように隣の席を見る。
「もういいじゃん。ボクらだけで歌おうよぉ」
 マイペースはお手の物のパオリンがイワンのスカジャンの袖を引く。
「折紙さん、歌を聞かれるの恥ずかしいとか言ってたけど、これで心置きなく歌えるでしょ」
「まぁ……そうとも、言うけど」
「ボクは次これね」
 選択した曲を横目で見て、イワンはへぇ、と漏らした。
「ブリブリのアイドルグループじゃん。そんなの歌うんだ」
「番組に一緒に出たとき、この中の一人の人がCDくれたんだよ。ファンです、ってボクに挨拶に来てくれたの。聴いてみたらけっこうよかった」
「へぇー…こういう人って親切なんだ」
 あっでも、とイワンは何かを思い出したらしい。
「そういえば、この間僕も実は握しゅ…」
 言いかけたところで曲のイントロが始まり、イワンは一旦口をつぐんだ。



 シュテルンビルトにも日本文化は浸透している。
 日本由来だとわからないくらいに市民生活に馴染んでいるものだってある。
 たとえば、このカラオケだ。
 これが日本発祥の遊びだとは、日本びいきのイワンに教わるまでは知らなかった、とキースは思い出す。
 薀蓄を披露するイワンに「そんなに好きなら今度一緒に行こう」と提案すると、飛び上がるようにして固辞された。
 そのまま帰ってしまいそうになることだけはやめさせたくて、キースは「わかったから、もう言わないよ」と発言を取り消さなくてはならなかった。
 だから、今日ここに足を運んだのだ。
 大きくはない建物とはいえ地下1階から8階までをカラオケルームが占めたビル。
 指定されたフロアでエレベーターを降りると、狭い廊下の両側に並ぶ部屋は歌を楽しむ客でほぼ埋まっているようだ。
 完全な、とまではいかないが防音機能のあるドアを開けると、中からかん高い声のお喋りが聞こえてきた。
「やっぱかわいいねー!」
「自分じゃ見られないよ」
「じゃあバーナビーさんに握手しに来たのを? ファンなんだ!」
「隣にいたんだ。そのとき、せっかくだからお願いしますって言ってみたんだよね」
「あっ、スカ…えーと、キース!」
 パオリンが開いたドアに顔を上げ、笑顔で手を振ってくる。
 廊下を誰かが通るかもしれないと思ったのか、スカイハイではなく本名に言い直した。
 部屋の中の様子を見て、キースは一瞬中に入ることを躊躇する顔になる。
「曲はじまっちゃう! 廊下に音が漏れるからドア閉めて」
「あ、ああ」
 思わずそう応えて、キースは後ろ手にドアを閉める。
 しかし、席につくのには抵抗があった。
 長いソファには両端に中年男が二人、ぐったりと眠りこけている。
 虎徹とアントニオだ。
 その斜め向かいのL字型のソファにどう見ても十代の少女が二人。
 時間は夜の十時すぎ。
 カラオケ店の店員はこの組み合わせをどう思っただろうか。
 キースは、思わずそんな心配をしてしまう。
 二人の少女のうち、片方はパオリンだ。
 いつもの黄色いトラックスーツ姿でマイクを握っている。
 イントロがはじまって、画面には水着の女の子たちが飛び出してくる。
 パオリンは立ち上がりはしないまでも、手の振りは画面の中のアイドルと同じように動かしながらリズムを取っていた。
 もう一人の少女も軽く手拍子をするみたいにしてパオリンの歌を待っている。
 誰だ。
 いや、とキースは思い直す。
 彼女には、うっすらと見覚えがあった。
 名前はわからない。
 年齢はカリーナと同じくらいか、少し上かもしれない。
 一体この二人はどんなつながりがあるのだろう、と思う。
 さっき一瞬、部屋に入ってきたキースを見て驚いた顔をしたあとで、弾かれたように視線を下げた。
 CMでは、その逆の動きをしていた。
 うつむいた顔を上げて、驚いた顔になる。それから嬉しそうに笑う。
 そう、名前は知らないがこの少女はタレントのはずだ。
 TVに映るときのようなメイクはしていない。
 グレイのジャージ素材のワンピースにスニーカー姿だが、それでもどこか華やかだ。
 タレントというよりアイドルというべきだろうか。
 パオリンがノリにノって歌う、まさにその曲を歌っているグループの中の一人だ。
 ずらりと並んだ少女たちをカメラが次から次に映していく。カメラに向かってウインクをしたり手を振ったりする少女たちのうちの一人なのだ。
 あ、いま映った。
 思わず見比べるようにキースは視線を下げる。
 すると、その少女もこちらを窺うように見上げてきて、視線がぶつかってしまう。
 またもや、彼女は素早く視線を逸らした。
 曲が間奏に入る。キースは尋ねた。
「いいのかい、こんな時間まで」
「ナターシャさんがお迎えにくるから。渋滞で遅れてるっぽい。それまでだもん」
 パオリンは答えたが、それは自分のことだけだった。
「それはよかった。それで、あの、こちらの」
 なぜいるのかわからない、そのどう見ても有名人の少女もまだ未成年だろう。
「……家、すぐそこなので」
 少女が言った。ボソリと。
 普段はこんな話し方なのかと感心しつつ、キースは「いや、しかし」と言い募る。
「じゃあボクたちが途中まで送ってくもん」
 パオリンがマイクを使って宣言するので、まぁそれならとキースはうなずいた。
「ところで、どうしたの? なんで来たの?」
 パオリンの口調は批難というより、単なる疑問のようだった。
「ああ、それは、ワイ…虎徹くんが」
 ヒーローではない人物が同席していることを思い出して、キースは言い直す。
「あー、待って! ウー、イェー!」
 セリフの後半は歌に突入していた。間奏が終わったのだ。
 パオリンと彼女は友人なのだろうか、とキースは首をひねる。
 カリーナと、ならわかる。
 カリーナは歌手として歌番組に出演することもあるし、それで知り合うこともあるだろう。
 しかし、パオリンとではわからない。
 それに何より、酔っ払ってグーグーと眠る中年男二人を前にして、その知り合いでもない女の子がなぜカラオケに参加しているのか。
 パオリンが彼女を呼んだのだろうか。まさか酔った虎徹とアントニオがすれ違いざまにでも声をかけたのだろうか。
 この少女も嫌ではないのだろうか。タダで歌えれば構わないのか。
 いまどきの十代というのは、見知らぬ酔っ払いが眠りこけていてもあまり気にしないものなのか。
 キースがまだ立ったままぐるぐると思考しているうちに、曲が終わった。
 パオリンがペコリと頭を下げ、少女がパチパチと拍手をする。
 拍手をしながら、少女はL字型のソファの一番端まで移動していった。
 直角になった部分にパオリンが腰を下ろす。
「座んなよ」
 と、パオリンはキースに言う。
 確かにガードマンのようにドアの脇に立ち尽くしているのも妙だ。アイドルがわざわざ席を詰めてもくれたのだし。
 キースが腰を下ろすと、パオリンが言った。
「さっきの続き! どうしてここがわかったの?」
「ああ、虎徹くんからメールをもらってね」
 答えながら、キースは携帯電話を取り出すとそれをパオリンに手渡した。
 TV画面に曲名が表示され、つづいてカラフルな映像が映る。
「あ、オ…えっと、はじまるよ。予約してた曲」
 パオリンはキースの携帯電話を握ったまま、顔を斜めに向けた。
「え、いいよ」
「歌いなよ」
「いいって」
「なんで、好きな曲なんでしょ」
 言い合ってはいたが、言い争っているようではなかった。
「うわ、これ何?! 変すぎる!」
 顔を携帯電話のメール画面に向けたパオリンがはしゃいだ声をあげる。
 それを後ろから覗き込むようにして、少女もププッと噴き出した。
 一時間ほど前に虎徹から届いたメールは要約すれば、食事会が終わってカラオケに行く。キッドと折紙も一緒だ。それだけの短い内容だった。
 それなのに実際に眺めると何ともひどいもので、間違った予測変換がそのままだったり、食事、の文字のあとについている絵文字がドクロだったり、壊れたレコードのように「カラオケにに行くく」と書かれていたりするのだった。
 室内にはカラオケの曲が響き始めるが、少女二人はひどいメールに夢中だ。
「ひどいよ、なんでキッド、のあとの絵文字がヒヨコなの?!」
「黄色いから、じゃない?」
 ボソッとつっこみを入れる少女の声に、キースも笑ってしまった。確かに、色だけは合っている。
 それから、あれっと思う。キッド、という呼び方がパオリンを指すとわかるのか。
 ひょっとして、ヒーローをやっていると打ち明けた仲なのか。
「そういえば、メールにも書いてある折紙くんは――」
 どこに、と続けようとしたキースの声をパオリンの笑い声が遮った。
「折紙、のあとなんてこれ、おにぎりだよ!」
「色も合ってないし。僕、三角じゃないし……」
 お互いを指さしあって笑っている少女二人。
「……『僕』?」
 キースがぽつりと言うと、はしゃいでいた二人は動きを止めた。
 そういえば、どこかで見た記憶がある。恐る恐る見上げてきて、視線が合うと慌てて下げる、そういう動きを。
 TVの中ではない。もっと近くで。
 そうだ、出会ったばかりの頃のイワン……スーツを脱いだ折紙サイクロン。
 ボソボソと喋るくせに、質問には律儀に全部答える。
 すぐに目を逸らすくせに、いつの間にか目が合っている。
 いてほしくはないのかと思えば、席を詰めてくれたりして気を回してくる。
「もしかして、きみ、イワ――」
 キースがやっと思い当たったと口を開こうとすれば、少女……アイドルに見えるが、動きはイワン……はパッとマイクを取り上げた。
 そして、サビまで来ていた曲を歌い出す。
 あまりリズミカルとも言えない調子っぱずれな声で。
「とっしうえーのー」
「とっしうえーのー」
 もう一本のマイクを取り上げてパオリンが満面の笑みでコーラスをする。
「きっみーなのーにー」
「きっみーなのーにー」
 上半身をひねると、パオリンはキースを指した。
「だーれーよりもー」
「だーれーよりもー」
 その奥で、歌詞の表示される画面に向かってマイクを握っている後ろ姿。
「「かーわーいーく思えーる」」
 歌を歌うことに集中しています、というフリを懸命に背中でしながら。
「とっしうえーのー」「とっしうえーのー」
 ところどころでこちらを指してくるパオリンのせいか、自分のことを唄われているような気分にキースはなってくる。
「きっみーなのにー」「きっみーなのにー」
 声を張りすぎて音が外れている。けれど、それは何とも素敵な歌だった。
「「ぼっくにはーいつーだってー ティーンエイジャー」」
 TV画面の中には可愛らしい少女たちが微笑んでポーズを取っている。
 エンディングのメロディーが盛り上がっていく。
「歌詞が好きなんだよね? ね?」
 マイクを通してそう尋ねているパオリンの奥で、アイドルだったらありえないような口元をぐにゃりと歪めた顔で……推定イワンはキースにチラリと視線を投げた。
 

≪ E N D ≫


・ ・ ・ ・ ・ 


   年上の 君なのに
   誰よりも 可愛く思える
   年上の 君なのに
   僕にはいつだって ティーンエイジャー

              『上からマリコ』


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Posted on 2012/04/20 Fri. 22:28 [edit]

category: SS(空折)

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