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空/折 「境界線にキスを」 

ハァイ、女の子アイドルの曲を聴きながら空/折を書く自分に
開き直りつつあるほう、OKOです!

もう、これ連載だと思いきろうかな……A●Bを聴いて空/折を描く、
という企画なんだと思おうかな……。


恋人が年上なのが不安で、わがままを言ってしまう…みたいな歌詞だったのに
なぜか書いてみたら唇フェチの人のキス話になってしまいました(笑)。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



境界線にキスを



 ソファの隣に座るキースの、その横顔をイワンは眺めた。
 恰好いいなぁ、と見とれているわけではない。(もちろん恰好いいとはたびたび思うのだけれど。)
 正確には、その唇をイワンは見つめていた。
 厚みのある大きめの唇。両端が少し上を向いている。
 それから、その色合い。
 イワン自身は元からの血色の悪さゆえか、鏡に映る自分の唇はいつも青白く見える。
 唇が荒れやすくてすぐにカサカサになる上に、ストレスを感じたりすると無意識にむしってしまったりもするので、自分の目にはあまりきれいには映らない。
 それに比べて、キースは元からの血色のよさのなせる業か、健康的な艶やかな唇だ。
 たぶん、忙しくてもあまりイライラするタイプではないし、唇を噛んだりなどしないのだろう。
 ビキニを着てポーズを決めてグラビアに載っている女の子たちの半開きにした唇だって、あっちはルージュやグロスをたっぷり塗っているのに、こんなにきれいな色をしているのは稀だと、イワンは思う。
「……イワン、くん?」
 呼びかけられてはじめて気がついた。
 イワンはキースの唇を注視するあまり、もう少しで触れそうな位置まで人さし指を突き出していた。
「あ、ぅわ、す…すみません」
 右手の指を左手で覆い隠し、慌てて引き寄せる。
「何かついてるかな?」
 キースが笑って、自分の口元を指した。
「いえ、違うんです」
 イワンが視線を下げてまたそろそろと上げると、キースはまだこちらを見つめていた。にこにこと。
「あの……すみませんでした」
 うん、と一つうなずいて。
「ひょっとして、キスしたくなった?」
 そんなことを訊いてくる。イワンは一拍置いてからみるみるうちに真っ赤になった。
「ち、ちが…っ」
 言葉尻は消えてしまい、無理にキスを迫られているかのように自分の口元を両手で隠してしまう。
 そんなイワンを見て、なぜかキースまで頬に血をのぼらせている。
「冗談だよ、すまない」
 年上で、いつもは曲がりなりにもリードしてくれる人ではあるが、色っぽいからかい方やジョークには免疫がない。
 謝ったりしないでただ鷹揚に笑っていればいいだろうに、とまだ顔が赤いままのイワンでさえ思う。といっても、イワンだってそんな反応だなんて当分…いや、もしかしたら一生できそうにない。
 イワンが見守る中で、キースはもそもそと後頭部を掻いていたりする。
 なんだかそれを見ていたら、急にイワンはわがままを言ってみたくなった。
 この、可愛い恋人に。
「……キースさん」
「うん?」
「あの、やっぱり……キス、してもいいですか」
「え、するの?」
 思わずそう訊き返してしまってから「あ、いや」とキースは早口に言う。
「だって、すごくきれいなので」
「え?」
 くちびる、とイワンはゆっくり発音した。
 それから伸び上がるようにして、キースの唇に、唇で触れる。
 柔らかい。
 ちょっと申し訳なささえ感じる。
 カリーナの言ではないけれど、リップクリームくらい塗るように気をつけたほうがいいかなぁ、と思ったりもする。
 イワンの反省をよそに、キースは微笑んでくれている。
「急にどうしたんだい?」
「何となく」
 照れもあって、短くそう答えてしまってからイワンは慌てたように言葉を継ぐ。
「あ、嫌でしたか」
「まさか。嬉しいよ」
 本当に? と目で尋ねる。
 キースからも視線だけでうなずきが返ってきて。するりと腕が伸ばされてくる。
 イワンはこちらも腕を伸ばして、けれどキースの腕をそっと元の位置へ追い返してしまう。
「じゃあ」
 と、イワンは悪戯を思いついたような声になった。
「僕からキスさせてくださいね」
「きみから?」
「はい。キースさんからは、しちゃダメです」
 ん? と首を傾げてから、キースは「いいよ」と笑った。
 最近ではガチガチというほどではないにしろ、それでも触れ合うことに緊張の色を見せるのがイワンだ。それなのに、イワンのほうから、それも楽しい遊びのような言い方でキスをしたいと言われて、キースは嬉しくないはずがなかった。
 キスは…キスに限らず触れ合うことは、二人ですることだ。
 イワンからする、キースからしてはいけない、と言われてもそれに何の違いがあるのかキースにはわからなかった。
 けれど、それは間違いだとすぐに気づかされることになった。
 イワンは尖らせた唇で、幾度となくキースの唇の輪郭を確かめるように触れてゆく。
 ときどきは立ち止まるようにして、押し当てた唇に少しだけ体重をかける。けれど、それは唇が噛み合うことにはつながらない。
 イワンは自分の唇を使ってキースの唇の柔らかさと厚みを調べるように、ただほんの少しだけ押しつけてくる。
 わずかに開いたイワンの唇が、キースの下唇だけを挟むとも呼べないようなやわやわとした力で挟む。
 そうしておいて、かすかな息遣いをこぼしてイワンの唇はまた離れていってしまう。
 まるで止まっても花を揺らすこともしない、小さな蝶のように。
 これにはすぐにキースが焦れた。
 舌を入れることを知らなかったかのように、思い切り歯を喰いしばりながらキスに応えてくれた頃ならともかく、今日はなぜだかそよ風どころかニュートリノ並みに触れたかどうか疑わしいキスだ。この比喩はおかしい、ニュートリノは通り抜けてしまうんだったか。
 キースが顎を突き出すようにして、深さを求めてもイワンはそれには応えてくれようとしない。
 顔を傾けられると、逃げるようにイワンは顎を引いてしまう。
 キースは困ったように眉を寄せて、舌先でイワンの唇の輪郭をなぞろうとした。
 イワンは短く笑って、今度は体全体を後ろに引いた。
 いつもは深くまで舌で探りあっては甘い吐息をこぼしてくれるのに、今はそういうキスは欲していないらしい。
 まだ今は、なのか。今日は、なのか。
「言ったじゃないですか。キースさんからは、しちゃダメですって」
「イワンくん」
 かなり情けない声で名前を呼ばれて、イワンは笑みを深めた。
「ここから」
 と、キースの二枚の唇が作る細い隙間を、そっと指先でなぞる。
「舌、出しちゃダメですから。僕がいいって言うまでは」
「イワ…」
「口、とじててください」
 こんなことをしていたら、あとが怖いのに。そう考えるのに、それでもイワンは続けたくてたまらない。
 キースが諦めたようにイワンに従うと、また唇どうしが近づく。
 噛み合わせてはいない唇は、まだ乾いたままだった。
 そのはずだが、イワンはこっそりと舌で潤しておいたらしい唇を尖らせてキースの下唇に吸いつくようにした。
 ちゅっ、と高い音がして、キースは肩を揺らしてしまう。
 もっとあからさまな水音だって二人してたてたことはあるのに、今のささやかな音にひどく敏くなっている。
「イワン……」
「もう…ちょっと」
 目をとじて、イワンはそうつぶやいた。感触を追うのに、視覚は邪魔だ。
 音をたてることが楽しくなってきたのか、イワンは何度も尖らせた唇を押しつけては離れていく。
 笑い声をこぼしたあとで、今度はイワンはちょっと捲れ気味の上唇、その先端でつつくようにしてキースの唇の輪郭を辿る。
 普段からちょっと拗ねているような、キスをねだっているようにも見えるその唇をキースが目に留めていることは知っているからだ。
 恋人からだけではなくて、女性だったらコケティッシュなパーツになったろう、と面と向かって言われたことも何度かあるくらいだ。
 くすっとキースが息を漏らす。
 どこで触れているか気がついて笑ってくれたのかもしれない、とイワンは思う。
 そうなら、少し楽しい。
 もうそろそろかな、とイワンは薄目を開けた。
 案の定、キースが手を伸ばしてきた。舌はだめだとか、キースからしてはだめだとは言われたが、他の場所に触れてはいけないと言われていないのだと気づいてしまったらしい。
 イワンには柔らかなキスを続けることを許したままで、激しいキスの最中のように、キースは手のひらで背中をさすったり、指をイワンの腿に這わせたりする。
 そうされると、もうだめだ。
 はぁっ、と熱のあがった息を吐いて、イワンはのけぞるようにしてキースから離れる。離すことができたのは顔くらいで、がっちりと抱きしめられているせいで二人の位置は近いままだ。
「……もう、キスはいいの?」
 ささやくような声も、近すぎてくらくらする。
 もう、イワンの悪戯は強制終了させられるところだった。
「あーあ」とイワンは言ったが、声に力が入っていなくて、甘く掠れた喘ぎにしか聞こえなかった。
 イワンは視線を上げる。
「……『俺のターン』ってカンジですね」
「え? 誰の何だい?」
 わかる人にはわかるような用語をイワンが使ったら、目の前の恋人は不思議そうな顔になった。
 ええと、と気を取り直したようにキースが言う。
「キスしても、いいかな。私から」
 イワンは笑ってうなずいた。
 焦らして、勿体つけた分だけお返しが待っていそうな気がする。
 こうなったのは成り行きだけど、それも悪くない気がした。
「もう…ずっと、キースさんのターンで、いいです」
 イワンは言って、瞼を下ろす。
 唇が重なった。
 さっきまで触れていたのとは別のもののように思える唇を、味わった。





   ハートのどこかに
   隙間があるようで
   かまってくれないと
   スースーしてくる
   あきれられちゃう境界線まで
   試してる


          『わがままコレクション』


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Posted on 2012/04/18 Wed. 17:48 [edit]

category: SS(空折)

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