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空/折 「傍らの遠距離恋愛」 

ハァイ! 某女の子アイドルの曲を聴いていても空/折SSが思い浮かぶのは
病気なのか心配になりつつあるほう、OKOです!

秋●●さんも48人の女の子たちも自分らの歌にこんな使用方法があったとは
思いもよらなかったに違いない!

両片思いで空/折な解釈をしてみました。

アイドルとかどうでもいいわよ、でも空/折なら読んであげてもいいわ、と
いう方へ。
この記事をいっちばーん下までスクロールすると歌詞の引用がついてますので
寸止め推奨です……。

これ上げてスッキリしたら、明日(ってもう今日だけど)入稿に行かれるように
がんばります~。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



傍らの遠距離恋愛



 ヒーローたちが連れ立ってランチをしていたときのこと。
 女性陣が隣のテーブルで恋愛話にワイワイしているのをイワンはぼうっと眺めていた。
「――あんた、そういうのはクールって言わないんだからね」
 馬鹿にされるのが何より嫌いなカリーナが身を乗り出して、イワンをチクリと刺した。
「そういう、って?」
「僕はそういうの興味ありませーん、みたいな顔して。エラそー」
「そ、そんなこと……」
 どうせさぁ、とカリーナは続ける。
「誰か好きになったことなんか、ないんでしょ」
 好きな人はいる、と即座にイワンは答えていた。
 見栄のなせる業だ。
 うっそマジで、と騒ぐカリーナにドヤ顔を返しながら、嘘じゃないよな、と思う。
 普段からあの人は今どうしているんだろうと考えてしまったり。
 その人が視界に入れば目で追ってしまったり。
 その人の言動に一喜一憂する。その人が元気そうなら、嬉しい。頑張っているところを見れば、自分も頑張る力をもらえる。
 そういうのを、好きな人というはずだ。
「いつから好きなの?」
 カリーナが目を輝かせて訊いてくる。
「十歳…くらいから」
「え、幼馴染みってこと!」
 じゃあ、とカリーナは声を落とした。
「今は離れて暮らしてるんだ。遠いんだもんね、あんたの故郷って」
「え……」
 カリーナの中では、イワンが遠距離恋愛中だということになってしまったらしい。
「う、うん」
 今さら違うと言えば、最初から説明しなくてはならない。それは面倒なので、イワンはうなずいてしまった。
「えー、どんな人?! 写真見せてよ!」
「い、今は持ってない!」
 イワンはそう叫ぶとカリーナから逃げ回る羽目になった。


 カリーナが次の仕事だから、といなくなって。いつの間にか他のメンバーも三々五々散って。
 広くなったテーブルにちょうどいいや、とばかりにノートパソコンを出したイワンはブログの更新に勤しんでいた。
 コーヒーの良い匂いに顔を上げると、キースが湯気のたつカップを手にしていた。
 気がつくとテーブルには斜め向かいの席に一人だけが残っている格好になっていた。
 ランチに遅れて合流したキースは今さっき食べ終えたところだった。
 目が合って、申し訳なさそうに顔を戻そうとするイワンにキースが声をかける。
「本当は持っているんじゃないのかな?」
「本当は?」
「……写真」
 キースの声がずいぶんと低くかすれて、それに気がついた本人は慌てて咳払いをした。
 だが、言い当てられたイワンは瞬きを繰り返すばかりで、そんなキースの狼狽には気がつかない。
「はは、実は」
 財布の中にはカードがあるし、携帯電話の中にも画像がある。
 イワンをいつも元気づけてくれる人――スカイハイの。
 曖昧に話したせいで、遠距離恋愛の相手ということにされてしまった、先輩ヒーロー。
「あ、でも、今は…ちょっと……まだ、その」
「無理に見ようなんて思っていないさ」
 キースがすぐに声を返すと、イワンは目に見えてホッとした様子になる。
 見たいような…見たくないような、キース自身そんな不可思議な気持ちなのだ。
「その人は遠くにいるの?」
「遠く…ですかね、会えなくて」
「会いたくなるだろうね」
 うーん、とイワンは唸った。
 スカイハイと顔を合わせたことがあるのは、折紙サイクロンであってイワンではない。
 イワンが口をきいたことがあるのはキース・グッドマンであって、スカイハイではない。
 おかしな理屈だけど、イワンにとってはそうなのだ。
 会いたいだろうか。
 もし自分がヒーローにならなくて、スカイハイの正体を知らなくても、会いたいと思っていただろうか。
 暴力事件を起こした犯人を追いつめたり、窮地に陥った市民を助けるのが彼の役目だ。
 もしくは、所属する企業やスポンサー会社のイベントで集まった人々に手を振ってみせたりする。
 犯罪者になって渡り合いたい気持ちなんてないし、事件に巻き込まれるのなんてごめんだ。
 会場に詰めかけたファンの一人として手を振り返すのも、いまとなってはもう無理だ。
「会いたくならないの? 一秒でも長く顔を見たいとか、声を聞きたくならないのかい」
 そうですね、とイワンは顔をあげる。
「いてくれたら、いいっていうか」
「だって、きみのそばにはいないんだろう」
 キースの声がどこか詰るような色を帯びる。
「きみをそんなに惹きつけて、なのに、顔を見ることもできないなんて」
「そばじゃなくても、いてくれたら……けっこう嬉しいんです」
 イワンは少し笑った。前髪に隠れて顔の上半分は見えないが、口元が本当に嬉しそうに綻ぶのがキースの目には映る。
「いてくれたら、っていうのは…この世の中に、って意味で」
 たとえば、空。
 いつも頭の上にひろがっている、大空。
 スカイハイが飛ぶ空なら、少しくらい眺めてみようと思うのだ。
 うつむいて歩きがちな自分だけれど、スカイハイが飛んでいる空なら、そっちに顔を向けてみてもいいかな、と。
「絶対に、その人のほうが僕より大変なことがいっぱいあるだろうし……なのに僕がへこたれてちゃいけないよな、とか」
 その人の後ろでTVカメラにちょこっと映りこむのが関の山で、何ひとつ助けになるようなことはできないのに。
「その人が、生きて動いて、仕事してるんだな、って思うと……元気になれるんです」
 そこまで言って、イワンは吹き出した。
「あ、僕が元気になったとか言っても、たぶんキースさんの百分の一くらいの元気さですけどね」
「そんなことはないよ」
 キースも笑い返したが、一瞬だけどこか痛めたような表情をよぎらせた。
「そんなふうにきみが笑うところを見たら、その人だってきっと嬉しいよ」
「僕だけじゃないんですよ」
「え?」
「僕だけじゃなくて、みんながその人のこと好きなんです」
「ええ?」
 キースは唖然とした顔になった。
「みんな、その人のことが大好きなんですよ。その人に元気をもらうんですから」
「そ、そんないい加減な」
「えーと…いい加減とかじゃなくて、みんな納得してますし」
「納得なんてしてはいけない、そんな何人もを秤にかけるような……!」
「大丈夫ですよ。みんなを平等に勇気づけて、笑顔にしてくれるんで」
 言いながら笑みを深めてゆくイワンを、キースはわずかに眉を寄せたまま見守った。
「……きみが、笑っているのは、私だって嬉しいよ」
「えっ」
 イワンが一瞬真顔になって、ふたたび笑顔をみせる。ただし、今度は恥ずかしがっているような控えめな笑みに変わった。
「うわ、すいません」
「な、何がだい?」
「気持ち悪いですよね、なんか一人で盛り上がっちゃって」
「いや、そんなことはないよ」
「引きますよね、あー、ホントすいません」
「だ、大丈夫だよ。大丈夫だから」
 オロオロしはじめるイワンの手をキースが上から握りこんだ。
「気持ちが悪いなんてことはないよ。どちらかといえば……いや、とにかくイワンくんが話してくれるのは嬉しいんだ。それがどんな…ことでも」
「え…えっと……はい」
 なぜだか手を握りあって、体温をわけあうような恰好のまま二人はしばらくお互いの重なった手を見つめていた。
「……キースさんは」
 イワンがぽつりと声を漏らす。
「どんな人に元気をもらいますか?」
「元気?」
「僕って覇気がないって、子供の頃からいつも言われてて……あ、そ、それはどうでもいいんですけど」
 元気って、とイワンは続けた。
「朝起きたらもう、あるんですか? 自分の中、とかに」
「元気…?」
「はい、元気」
 至極マジメに小さく顎を引くイワンに、キースは笑いをこらえながら答える。
「私だって落ち込むこともあれば、やる気の出ない日もあるよ」
「……あるんだ」
「あるさ。何だと思っているんだい?」
 キースがわざとらしく大仰に言ったら、イワンが目に見えて慌ててしまった。
「う、すいませ……」
「怒ってないよ。驚かせてすまないね。ええと…そうだなぁ」
 キースが上を向いた。そこには青い空がある。
 もしかして、とイワンは思う。空を見上げれば自然と湧いてくるものなんだろうか。やっぱり自分とは出来がちがう。
「たぶん、応援してくれる人から、かな」
 ひとつうなずくとキースは言った。
「うん、そうだね。どこかで誰かが手を振ってくれたり、名前を呼んでくれると、自分がそこにいるんだと教えてもらえるんだよ」
「そんなので…いいんですか」
「私がもうちょっと頑張れば、誰かが元気になってくれる。そう気がついたときは、私も元気になるんだ」
 見ていてくれる人がいる、待っていてくれる人がいる。
 それは単純な、だけどもの凄い奇跡だ。その素晴らしさにイワンも――折紙サイクロンもすぐに気づくだろう、とキースは思う。
 イワンはキースよりずっと、ファンとの交流にデビューから一貫して重きを置いているのだし。
「どんな立場や職業でも、ヒーローだって、そうは変わらないよ。みんな、それぞれ頑張って暮らしているんだ」
 キースはずっと包んでいたイワンの手の甲をぽんぽんと叩くと手を離そうとした。
 その手がぐいっと引かれる。
「え、どうしたんだい?」
「あの、嬉しいです、すごく」
 今度はイワンのほうからキースの手を握って、そんなことを言う。
「僕が…勝手に好きなのとか、いいんだって、役に立ってるんだって……だから、嬉しくて」
「え? 何だって? 勝手にとか役にとか、どういう?」
「――あ、わぁっ!」
 自分の失言に思い当たったイワンが、握っていたキースの手を投げ捨てるようにして立ち上がった。
「イ、イワンくん?!」
「あ、あの、今度……」
 イワンは一度顔を伏せたが、勢いよく顔を上げるといつもより幾分力のこもった声で言った。
「今度、その…『好きな人』の写真、見てください」
「えっ」
「見てもらいたいんです。今度、持ってきます」
「ああ…それじゃあ、ぜひ」
 眉間に皺を作りそうなのをどうにか我慢しながらキースは答えた。
「はい!」
 イワンはパッと表情を明るくすると、あたふたと荷物をしまって、一礼して走り去ってゆく。
 キースは、その遠ざかる後ろ姿を困ったような顔で見送った。


 傍らの遠距離恋愛が終了するのは、あと少しだけ未来の話だ。




《 E N D 》





   ベッドの右の壁
   いつでも君がいる
   (略)
   遠距離ポスター
   近くにいるのに
   君は切ないほど
   手が届かない
   遠距離恋愛
   しているみたいに
   なかなか会えないけど
   誰よりそばにいる

       『遠距離ポスター』



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Posted on 2012/04/14 Sat. 00:37 [edit]

category: SS(空折)

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