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空/折「etude 1 」 (IF設定) 

キースはスカイハイだけどイワンはバーテンダー(一般人)、というパラレルです。

5/4のSCC向けに、このパラレル設定で新刊を用意しています。そちらに盛り込めなかったエピソードとかを勿体なく思ってしまって、ブログにUPです。
根っこの設定は一緒ですが、本とはまったく違う話です。
(……なぜそんな手間のかかることをしているのだろう。。。いいや、楽しいから♪)
捏造設定てんこもりになっていきそうな予感がします。
たとえば…マベ氏はご存命で、ガツガツしたTVマンで悪い人だけど犯罪者ではギリなかったり。
まずは書いたことのなかったユーリさんとベンさんを出してみました。
あと、好きな音楽やゴハンやお酒を好きなだけ出したりしたいです。

実は、このパラレルは某お方の日記での一行からヒントを得て書き出しました。
ちゃんと本にしたら、そのこともいずれお礼かたがたちゃんと書きたいです。

先に謝っておきますが、このお話は続くかどうか、続いても完結できるか、続けてみても色々矛盾が生じるか…まったくわかりません。
あっ、SCC用の原稿はほぼ終わっています。ちゃんと完結した形で(笑)本になりますので。
ページ数とかキチンと決まったら、またその旨記事にしますね。まずはSCCの参加証が届いてから!


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


キース(スカイハイ)×イワン(バーテンダー) その1


 ジャスティス・タワー、中層フロア。
 会議室が詰まったエリアには同じようなドアが並ぶ。そのうち「G1001」のプレートがついたドアを開けて廊下に出てきたのは、司法局所属のいわゆる《ヒーロー管理官》、ユーリ・ペトロフだった。
《ヒーロー管理官》と、まるでヒーローチームの一員のように呼ばれているが、彼の仕事はヒーロー事業とヒーローたちの活動を円滑に進め、また法律にのっとっているかを見定めるアドバイザーだ。
 ここシュテルンビルト市は戦略的総合特別区域である。
 特区としての範囲は、大きなところでは経済面、国際化から研究機関の強化、NEXT能力者を含めた個人の資質開発など多岐にわたる。
 法律にはこうある。「当該地域の特性に応じた特定事業を実施し又はその実施を促進するものとする」。
 そして、こう続く。「この法律において「特定事業」とは、特定事業別表に掲げる事業で、規制の特例措置の適用を受けるものをいう」。ユーリが担当するヒーロー事業を含め十一の事業が表になっている。ここまではいい。
 肝心なのは、このあとだ。「この法律において「規制の特例措置」とは、法律により規定された規制について、後の章で規定する法律の特例に関する措置をいい、これらの措置の適用を受ける場合において当該規制の趣旨に照らしこれらの措置と併せて実施し又はその実施を促進することが必要となる措置を含むものとする」。
 つまり、こういうことだ。
 緩めるべき法律は指定してあるが、その法律をどう緩めるか、何に対して緩めていいかはその都度判断して良い、と。
 フレキシブルと讃えるべきか、いい加減だと呆れるべきか。法律とは概ねこういうつくりになっている。
 たとえばポセイドンライン所属のヒーロー、スカイハイが空を飛んで人命救助に向かうことは、航空法に対しての特別措置がなければ不可能だ。
 法律上、かのヒーローは超軽量動力機(Microlight plane)の亜種扱いである。
 これを知ったら市民は落胆するだろうか。
 しかしながら超軽量動力機は、基本的に家や道路のある区域では飛べず、また飛び立った場所から別の場所に降りることも許されていない。
 それでは犯罪者の目の前にヒラリと降りることなど不可能だ。だから、規制の特例措置を適応する。
 新しい事案が出ればその都度、担当者たちが額を突き合わせて特例措置の適応に関しての議論を繰り返す。
 特区があり、ヒーロー事業がある以上、この果てのない作業を繰り返さなければならないのだ。
 廊下に出たユーリは、法律上は超軽量動力機の亜種に区分される男の姿を認めた。
 いや、それはヒーロースーツを着ていれば、の場合だ。スカイハイ…いまはTシャツにジーンズというラフな格好のキース・グッドマンが廊下で誰かと立ち話をしている。
 近づいていくと、話し相手はこれもヒーロー業に従事しているバーナビー・ブルックスJr.だった。しかも、二人は話し合いというより口論をしているように見える。
 彼らだって人間なのだから口喧嘩くらいするだろう。まさかNEXT能力を使っての乱闘など起こすまい。ユーリはそう考えて、脇を通り過ぎようとしたが、それは許されなかった。
「ペトロフ管理官! ちょうどいいところに!」
 キースからやけに通る声で呼び止められた。このあとも仕事が詰まっている。不快な表情が出ていなければいいが、と思ったがバーナビーはあからさまに「あーあ」とでも言いそうな顔つきだった。
「管理官からもお願いしていただけないだろうか。バーナビーくんの叔父上に」
 キースが勢い込んで言うのを、バーナビーが軽くいなす。
「彼は肉親じゃありません。死んだ両親の友人で、育ての親ですよ」
「とにかく、マーベリック氏に、私の記憶を消して貰えるように手を貸していただきたい」
「……なんですって?」
 ユーリの眉が寄る。
「私はヒーローとして知り得た情報を、私的に流用してしまいそうになっている。その瀬戸際にいるんです」
 それは見逃せない、という目つきになるユーリに、バーナビーは小さく首を振ってみせた。
「とにかく、廊下で大きな声で話す話題ではないようですね」
 ユーリはそう言うと、すぐそばの会議室を覗く。ドアに「G1005」のプレートがついた部屋は空室で、ドアの横のパネルを操作すると、あと二時間使用予定はない。
「お二人ともこの部屋に入ってください」
 ユーリに従って、二人は会議室に入った。キースはひどく真面目な顔で、バーナビーは思いきり迷惑そうだ。
「……さっきまで、この向かいの部屋で取材を受けていたんです。終わって部屋の外に出たところでこの人に捕まりまして」
 さっさと終わらせたいのはユーリと同じらしいバーナビーが口を開いた。
「もとはと言えば、僕が育ての親にもNEXT能力があることを明かしてしまったのもいけないんですが。マーベリックおじさんに記憶を消してほしいと言うんです。あの人が記憶を弄るNEXTを持っていたことは、管理官もご存知ですよね」
「ええ。持っていた、のですね」
「マーベリック氏の…NEXT能力は消滅してしまったのかい?」
 うなずきあう二人に、キースだけが眉を寄せた。
「まさか。あの人は番組に口を出すのと同様、いつまでもしぶとそうですよ。たぶん、今でも強力なNEXT能力があるでしょう」
「たぶん?」
「詳しい経緯までは存じませんが、マーベリック氏は当局の要請を受けてチップを埋め込む手術をされたはずです。NEXTが発動されると、それを感知して苦痛を与えるというチップを」
「その通りです。ヒーローでもなければ司法局の職員でも捜査員でもない人間が、しかも報道を扱うTVマンが何の規制も受けずに持っていていい能力ではありませんからね」
 アポロン・メディアの役職に就くにあたって、当局と何らかの取引をした上で恩着せがましくチップを埋め込ませてやったのだろうと、バーナビーは見ている。自分を育ててくれたのは非常に抜け目のない男だ。
「激痛に耐えてでも人ひとりくらいの記憶を弄ることはできるのかもしれませんけど。そんなことをするくらいなら、あの人ならお金を積むんじゃないですか」
 バーナビーの発言にユーリは苦笑した。
「そうだったのか……」
 キースはガッカリした顔を隠さなかった。ユーリが尋ねる。
「一体何があったのですか? ヒーローとして知り得た情報を、私的に流用しそうだというのはどういうことです?」
 キースが口をモゴモゴさせている間に、バーナビーが口を開く。
「管理官のお手をわずらわせるような話ではないんです」
「いや、これは重大事だよ」
「どこがですか。つまりこういうことでしょう? 好きになった相手からファンレターをもらった。自分で聞き出す前に、その人の個人情報を知ってしまった、って」
「は……?」
 発声したあとユーリはポカンと開いたままになってしまいそうな口を閉じようと努力しなければならなかった。
「この人は救助した相手に一目惚れしてしまった。それだけのことですよ」
「それだけとは酷い! 実に無情だよ、バーナビーくん!」
「単にキース・グッドマンとして知り合えばいいだけの話でしょう。それで上手くいっても振られても、万事解決ですよ」
「だから! そのためにはあの手紙に書いてあった事柄を参照して、ということになるじゃないか!」
 そこまで叫んで、キースはユーリのほうを向いた。すがるような目つきだ。
 ユーリは力なく告げることになった。
「……それくらいなら当局も目をつぶると思いますが」
「そんな!」
 キースは裏返った声で叫ぶ。バーナビーもそれに被せるように声を荒げた。
「まったく…あなたはどうしたいんですか?! その人と親密になりたいほうを優先したいのか、その特異な倫理観を優先したいのか、二つに一つでしょう」
「だって、それでは彼が信頼を寄せてくれたヒーローはどうなるんだ?!」
「……“彼”?」
 ユーリの片眉がピクリと痙攣する。
「管理官、これ以上聞く必要はありません。さあ、出ましょう。さあ」
 バーナビーはユーリの背を押すようにして会議室から出ていった。後にはションボリと肩を落としたキースだけが残される。
 しばらくキースはそのままでいたが、諦めたのか部屋を出ることにしたようだ。
 ドアを開けようとすると、外からバーナビーの声が聞こえてきた。
「……わかりました」
 ノブを掴んだまま、キースは動きを止める。
「え?」
「今夜、あなたの願いを叶えてあげますよ。あとで連絡します」
 親切心からの言葉のはずなのに、なぜだかバーナビーの声は聖者を堕落させようとする悪魔じみて響いて、キースはその姿勢のまま固まってしまうことになった。


 その夜。
 バーナビーから連絡を受け、指定された場所…そこそこ賑やかな通りに立っていたキースを見つけて、黄色いタクシーがスピードを落とした。
「申し訳ないね、君の貴重な時間を――」
 後部ドアが開いて、覗き込んだキースが言いかけた挨拶を止めた。
「よおよお、お疲れさん」
 開いたドアから姿を見せたのは、バーナビーではなく、その相棒の鏑木・T・虎徹だった。
「ワイルドくん…?」
「誰に見えるんだよ。さっ、乗れ乗れ」
 一旦タクシーから降りた虎徹に押し込まれるようにして、キースはバックシートに乗せられる。
「ベンさーん、出して」
 運転席にいるのは虎徹の知り合いらしい。
「はいよ」
 黒人のドライバーがバックミラーごしに笑うと、タクシーは発進した。低く流れるラジオの曲に合わせて鼻唄まじりに車を走らせる。
「どうして君が?」
「相棒だもん、オレら。バニーちゃんが受けた相談は、オレが受けたも同じ」
「それは…すまない」
「いーの、いーの。面白そうだもん」
「面白そう?」
 キースは昼間、バーナビーの育ての親に自分の記憶を消してもらいたいと頼んだはずだ。
 それに対して、バーナビーは『あなたの願いを叶えてあげます』と言ったのだ。
 面白いだろうか。
 普通の人間なら腹を立てるかもしれない同僚の発言に、しかしキースは困惑する。
 見たことのないNEXT能力の発現を目にできる機会に、職業的な興味を感じているのだろうか。
 ひょっとして虎徹は詳しいことを聞かされていないのではないか、と思い直した。
「……どこに向かっているんだい? この先にあの、マーベリック氏が?」
 キースは尋ねた。バーナビーの親代わりの人物の名前を挙げてみる。
 タクシーはシルバーステージの繁華街を抜けてゆく。こじんまりとした商店やレストランが車窓から見えた。あのメディア界の大物がこんなところにやって来ているというのだろうか。
「大丈夫だって。お前の会いたい人が待ってるから」
 虎徹は愉快そうな笑顔を見せる。
 やはり、彼は面白いと感じていそうだ。
 キース自身は、実際のところ薄っすらと恐怖さえ感じる。
 記憶を失うのだ。
 コンピュータのファイルのように緻密に範囲を指定できるものなのだろうか。
 たとえばキースの風を操る能力なら、普段からの訓練の甲斐もあってかなりの精度だろうと思う。
 しかし、かのメディア王はかれこれ十数年、NEXT能力を使用していないはずだ。
 キースが消し去りたいのは、《彼》の個人情報だけだ。
 そんなピンポイントな記憶の消去など可能だろうか。それは虫がよすぎる要望かもしれない。《彼》に関するすべてを、忘れてしまうことになるのかもしれない。
 そのほうがいいのかもしれない。
 本当は、NEXT能力に頼って忘れる必要さえないのだ。
 思い出さないようにすればいい。そして、会いたいと望まなければいい。
 そうすれば、忙しさに紛れてチリチリした淡い想いなど次第に感じなくなるのだ。
 これまでもそうだった。
 車窓を流れる風景を眺めるキースの隣で、ラジオから聞こえてきた曲に虎徹は体を揺らしはじめた。
「お、この曲オレ好きなのよ」
「いいよねぇ。これ」
 運転席から相槌が返ってくる。ハンドルの上で太く短い、だが器用そうな指が踊りだしていた。
 曲がサビに到達するとラジオからの女性たちのコーラスに合わせて、車内の男二人も歌声を響かせた。
「「WHAT A SURPRISE (なんて驚きでしょう)」」
「「You just came into my life (あなたが私の人生にやってきた)」」

  WHAT A SURPRISE  まるで砂の中のダイアモンドのよう
  WHAT A SURPRISE  すごく特別な人
  SUCH A SURPRISE  あなたは魔法のように現われた
  WHAT A SURPRISE  あなたがここにいてくれて嬉しい

「いい歌だろ?」
 虎徹が間奏の間も楽しげに言う。まさか自分の歌声を評したわけではないだろう。
「そろそろだよ、お二人さん」
 タクシーがスピードを落とす。サイドウィンドゥから景色を眺めていたキースは眦を大きくした。見覚えのある路地だ。
「……まさか、ここは」
「はい。着きました」
 含み笑いでベンが言うのも、キースには刑の宣告のように聞こえる。
 同時に、キースの側の後部ドアが開いた。運転席から操作されたものらしい。
「ほら、降りろよ」
 虎徹が脇から声をかけてくる。しかし、キースは従わなかった。その身体が青白く光る。
 バン、と音をたてて後部ドアが閉まった。
「どうしてここに連れて来たんだい?!」
「あのなぁ…。つーか、こんなところで力を使うなよ」
 タクシーのドアが閉まったのは、キースの起こした風の力だった。虎徹に言われて、キースも我に返る。運転席ではベンが困ったような顔をしていた。
「あ、ベンさんなら平気。オレの元・上司だから」
「金髪のお兄さんの正体が何であれ、驚きゃしませんけどね。通りを歩いてる人が見たらビックリするかもしれないよ」
「……はい」
 シュンとするキースの背を虎徹がつつく。
「早くしろって。バニーちゃんがさ、もう中で待ってんのよ。オレらの席用意してくれてんだって。『もしも怖気づいて来なかったら、キース・グッドマンは女の子に声をかけられて途中で男友達を放り出してどこかに消えてしまった、いつもあの人はそうなんです、とバーテンダーにたっぷり愚痴を聞かせますから、そのつもりで』ってメール来てるけど。どうする?」
 勢いよく振り向いたキースの目の前に、その通りの文面のメールを表示させた携帯電話が翳される。
「あんまりだよ、ワイルドくん! バーナビーくんも、二人して!」
 さっきまで物思いに沈んでいたのが嘘のようにキースは泣きっ面になった。
「あんまりたぁ何だよ。こんなに友達想いなコンビはいないぜ? それにさぁ、ほら、ベンさんを家に帰してやろう」
 キースが財布を出そうと懐に手を入れようとすると「お代なら先に気の利く後輩さんからいただいてますよ」との答えがあった。
 また、キースの側の後部ドアが開いた。二人は車から降りる。片方はため息をついて、もう片方は鼻唄を歌いながら。
「じゃあな、ベンさん。お休み」
「はいよ、そっちは頑張って」
 タクシーが走り去って、二人は路地を進んでいく。
 路地の奥に控えめな『BAR 鏑木』の看板が見えた。


 昼間、バーナビーが指摘したとおり、キースは恋をしている。
 だが、救助した瞬間に、その相手に対して一目惚れをしたわけではない。
 いくらなんでも、そんなことはありえない。
 職業倫理の問題だけではない。どんな絶世の美女でも、犯罪や災害に巻き込まれたときは『怯えて傷ついた人間』にしかならないからだ。そこに個性はない。
 確かにその人物を窮地から救ったのはキースだ。ヒーロー《スカイハイ》として。
 その後、キース・グッドマンとしてその相手と再会した。偶然にだ。これは胸を張って言える。
 顔を見てすぐ、あの時の、と気がついた。元気そうでよかった、と思っただけだった。
 そして、その人に惹かれていることに気づいた頃、《スカイハイ》にファンレターが届いた。
 ファンレターは数多いが、いまでも必ずザッとであっても目を通すことにしている。
 ポセイドンライン ヒーロー事業部 気付 スカイハイ様――。
 その封筒を裏返したとき、キースは我が目を疑った。
 毎日思い返しては胸を高鳴らせている相手の名前がそこにあった。
 イワン・カレリン。
 それが、以前に救い、いまは恋をしている相手の名前だ。



その2 に つづく)

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Posted on 2012/03/21 Wed. 22:48 [edit]

category: SS(空折)

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