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空/折 「落とした鍵と拾った鍵 ~ ロッカールーム 2nd レポート」 

ロッカールーム・レポート 第二弾です。
(前作はこちら。)
前の話とは微妙につながっていませんけれども。
主役はどっちかというと牛さんなのかも(笑


落とした鍵と拾った鍵
― ロッカールーム2ndレポート



 ジャスティスタワー内のトレーニングジム・エリア。
 コンコン。
 アントニオは軽く二度ノックをして、返事を待たずにロッカールームのドアを開ける。
 誰もいないな、と思いつつ、気配を感じて視線を下に向けた。
「うぉ! な、何やってんだ、折紙?!」
 思わず裏返った声を上げてしまった。
 折紙サイクロン…のスーツを脱ぐとテンションが低空飛行する仕様の、イワンが床に這いつくばっているのだ。トレーニングウェアに着替えてはあるので、ジムを使った後なのか、使う前なのか。
 アントニオは最近知ったネットスラングの「 orz 」という文字列を思い出した。
 ちょっとしたことですぐ凹むイワンの脳内では一時間おきくらいに再生されていそうな文字列「 orz 」だが、何も本人がやってみせなくてもいいだろうに、と思う。
 イワンは床と同化したような姿勢のまま、か細い声で言った。
「……おはようございます……何か…長細いものを貸してもらえませんか……」
「ああ?! 長細い、もんって…どうした?!」
「……うう…長細くて、薄いものを……ど、どうしよう……」
「長細くて、薄いもん? あ、お前、何か落としたな」
 アントニオには察しがついた。ロッカーと床との隙間、1センチもないその隙間にイワンは何か落し物をしてしまったらしい。
「おい、ロッカー持ち上げればいいじゃねぇか」
「あ、やめたほうがいいです」
 ロッカーに手をかけようとしたアントニオを見て、イワンがようやく上体を起こす。
「それ、僕もまず考えたんですけど。このロッカー、ビスか何かで床に固定されてるんです」
 つまり無理やり動かそうとすると(アントニオの力なら持ち上げられる確率が高いが)床もロッカーも傷つける可能性があるということだ。
「ああ、そういや……」
 アントニオはかなり前の記憶を引っ張り出した。
 かつて自分もこのロッカーを動かそうとして諦めたことがあるのだ。
 ジャスティスタワーの別のフロアの廊下で、虎徹に公共の物を壊すなと訓示を垂れていらした自分より若そうな裁判官殿の澄ました横顔を思い出す。
 壊し屋が愛称にされていることを忘れて、へらへらと挨拶をしに行った虎徹を笑って見ていたアントニオだが、ここで備品を壊せば親友と同じ目に遭いかねない。
 はぁっ、と一つ息をつくとロッカーから手を離す。
 後輩のしょぼくれた姿をいつまでも眺めていても仕方がないので、自分のロッカーを開けて着替えていく。
「ったく。折紙、お前何をこんな隙間に落としたんだよ」
「……鍵、を…いや、何でもないです、平気です」
「鍵って家のか? それとも会社のIDカードか?」
「何でもないです、鍵じゃないです、ごめんなさいっ」
 アントニオが着替えを終えても、イワンはまだ諦めきれない様子で床にしゃがみこんでいた。
「大家にでも、上司にでも頭下げて再発行してもらえよ。もしくはこのロッカーを取り外せるように役所のほうに頭下げるか」
「……そう、します」
「オレはジムに行くぞ」
「はい、行ってらっしゃい……」
 力なくイワンは返事を寄越す。
 家の鍵だか会社のカードキーの類だか知らないが、アイツは絶対前にも同じ鍵をなくしているに違いない。だから言い出しづらくて凹んでいるのだろう、とアントニオは勝手に納得した。


「おいおい」
 アントニオが苦笑混じりにつぶやいたのは、トレーニングジムに入ってすぐの地点だった。
「ここにあるじゃねーか」
 足元にキラッと光るものを見つけて屈んだところ、そこには折紙サイクロン…のヒーローマスクを可愛らしくデフォルメしたキーホルダーが転がっていたのだ。もちろん、その先には鍵がぶら下がっている。
 自宅の玄関ドアのものらしい銀色の鍵。
 早く折紙に教えてやろう、と取って返すアントニオの背後ではジムの先客が一人、不可思議な表情になっていた。
 その人物はおそるおそる自分の穿いているハーフパンツのポケットに手を入れてさぐってみた。
 続いて、その左右のポケットの布地をひっくり返すまでしてから、段々と顔色を失っていく。
「――ま!!」
「……ああ?」
「待つんだ、そして、待ってくれ!!」
「おぅわ!!」
 絶叫すると同時に全身を青白く光らせてNEXT能力を発揮したのは、スカイハイことキースだった。
 風を起こして、アントニオが出て行こうとしたドアを風圧で塞ぐ。
「おい、何すんだよ! 手ぇ挟むところじゃねぇか!!」
「あああ、す、すまない、そして、申し訳ない」
「謝るのはいいから、風を引っ込めろ!!」
 キースが風を巻き起こしながら走り寄ってくるので、後ろに撫でつけてあるアントニオの髪がぐしゃぐしゃになりかけている。
「失礼した。あの……その手に持っているものは何かな?」
「何って……」
 アントニオは大きな手を開いてみせた。その中央にちんまりと、折紙サイクロンのマスクを模したキーホルダーとそこにつながった鍵がひとつ。
「折紙のヤツな、鍵をロッカーの下に落としちまったってさっきしょぼくれててよ。ここに落としてたんだな、と」
「そうか、ここに! それはいけない! 私が届けてあげよう!」
「え、なんでスカイハイが」
 キースは疑問に答える前に、アントニオの手の上の鍵をサッと取り上げた。
「っていうか、そのキーホルダーついてたら、ロッカーの下に入り込むわけねーよな? なんだ、アイツ」
 あの隙間は1センチもないくらいだ。鍵が滑り込んでも、キーホルダーでつっかえるはずだ。
「ははぁ、ロッカーの下だね。うん、それも私が風を吹かせて解決だ! まかせたまえ!」
「あ……? ああ、そうだな、解決だな」
 今の会話の展開に何かしらおかしなところがあるような気がしたが、キースが届け物をすると言っているのだ。まかせておくことにした。
「あー…じゃあ、頼むわ」
 この後も予定があるのだ。さっさとトレーニングにかかりたい。アントニオはストレッチからはじめることにして、風のおさまったジムの奥へと進んだ。


 コンコン、とノックを二回。
「はー…い」
 ロッカールームの中からはふにゃふにゃとしたイワンの声が返ってきた。
「失礼するよ」
「……っ!!」
 ドアノブが回るのと同時に聞こえてきた声に、イワンは文字通り飛び上がった。
「キー…ス、さん」
「なかなかジムのほうに来ないから、どうしたのかなと思ってね」
「な…何でもないです、今から行きます」
 イワンは青い顔でそう告げる。キースはイワンに近づくと、その目の前でしゃがみこんだ。
「え? ……わっ」
 キースの手のひらがイワンの膝を撫でたのだ。
「膝、真っ赤だよ」
「あの……」
「こんなふうに膝をついていたのかな」
 キースがさっきまでのイワンのようなポーズをしてみせると、イワンが顔を歪める。
「あの……す、みません……」
 イワンもすとん、と膝を落としてしゃがみこんできた。キースは苦笑する。
「鍵を落としたんだって? バイソンくんが言ってたよ」
「ごめんなさい……コピーを作れない、大事な…なのに……」
「あのカードキーは、キーホルダーをつけられないからね。私もちょっと不便に思ってるよ」
「ほんとバカなんです……キースさんの家の鍵なんだって…う、嬉しくて…ニヤニヤして眺めてたから、こう、スルッって落としちゃって……」
 しゃがみこんだままの姿勢で、キースは手を伸ばしてイワンの髪をくしゃっと撫でる。
「私だって似たようなものさ。ずーっと身につけていたくて、ジムのほうにまで持っていったら、実は…早速さっき落としてしまったんだ」
 これ、とキースはイワンの鼻先でチャリッ、と音をさせた。
 折紙サイクロンのマスクを模したキーホルダーと、そこにぶら下がった鍵がひとつ。
「え…嘘……」
「もっと気をつけないといけないね。鍵ひとつのことなのに、こんなに浮き立った気持ちが、どうにも抑えきれなくて。申し訳ない」
「謝らなくて、いいです……っていうか、何つけてるんですか、それ」
「キーホルダーだけど?」
「それをキースさんが持ってたらおかしいでしょう」
「だって君の家の鍵だから」
「絶対変ですから、センスないです」
「本人がそれを言うかな」
 変です、いや可愛い、という声が何度も往復して、
「誰にも見せないから、それならいい?」
 最後にキースは言うと、決定事項だと言わんばかりに、かすめるようなキスを贈った。
「え、あ、あの」
「さあ、早く片付けようか。こっち側から風を送ればどうかな? そこから落としたの?」
「あー、はい……ここからスーッと入っちゃって」


――ああ、なぜ10ドル札のことなんか思い出したのか。
――あれは去年…うっかり手を滑らせてロッカーの下に滑っていったオレの10ドル札……。
――豪快なフリをして、結局器が小さいんだよな、オレは。
――あとで良かったんだよ! あとでスカイハイに10ドル落としてたんだ、風で出してくれって頼めば!
――いや、金を大切にする態度は正しいはずだ。1セントを笑うヤツは1セントに泣くんだ。
――しかし、今泣きたいのはオレだ。『だって君の家の鍵だから』? オレがさっき拾ったのはアレか…いわゆる合鍵ってヤツか…?
――合鍵ってことはアレだ…つまり……そのあとで『チュッ』って音してたけど……ああいいや、考えるのよそう……。
 脳内反省会を繰り広げながら、廊下を一人、抜き足差し足でトレーニングジムへと戻っていくアントニオの姿があった。
 そぅっと、出来うる限りそーっと歩くアントニオを嘲笑うかのようにエレベーターの扉が勢いよく開く。
「おう! 何だ、アントニオ、両足とも捻挫でもしてんのか?」
 ひゃはは、と笑いながら降りてきたのは虎徹だった。その半歩後ろからバーナビーも「おはようございます」と会釈を寄越す。
「はよーっす!」
 ノックとほぼ同時にロッカールームを開けた虎徹が、嬉しげな声を発した。
「二人して大掃除か?! お、10ドル! 山分けしようぜ!」
「こらぁああああ!!」
 アントニオは、一刻も早く離れたいと思っていたはずのロッカールームの前に駆け戻っていった。


 ■ E N D ■


 ・ ・ ・ ・ ・

このあとホコリまみれの虫の死骸を見つけて兎さんが青くなります。(← 虫、苦手そう。)

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Posted on 2012/03/02 Fri. 00:13 [edit]

category: SS(空折)

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