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龍薔薇 「甘くて、辛い」 

……ハァイ! 14日は麦チョコを食べていたほう、OKOです!!
龍さん薔薇さん、二人のちゅー顔が見たい! けど、絵心がない!! というわけでSS。
ハッピーバレンタインなのに、ちょっと切ないのを目指しました。
たぶんわたししか楽しくないです、ごめんなさい。。。
今夜はバレンタインな空/折が相当数UPされるのでしょうが、ネタが思いつかなくて…。
次はとろっとろ(…)でR指定な空/折でも、と思ってるのでお許しください!!




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


甘くて、辛い ― アマクテ、ツライ


「上出来じゃない?」
「だ、ねっ!」
 ダイニングテーブルの上に広げられた手作りのチョコレートにカリーナとパオリンの顔がほころぶ。
 ここはライル家のダイニング。
 発端は一週間前にさかのぼる。虎徹の娘、楓からオリエンタル・タウンではバレンタイン・デーに女子生徒どうしが手作りのチョコ菓子を交換しあうのだと聞いたパオリンが瞳をキラキラと輝かせはじめたのだった。
「それ、ボクもやってみたい!」
 パオリンは叫んで、隣に立っていたカリーナを見上げた。
 なんであたしが、という顔をしていたカリーナだったが、虎徹が「作ったらオレにも食わせてよ」だとか言うのを聞いているうちに、ボソッと「……ウチでやってもいいよ」と発言するに至っていた。
 いざとなったらクッキーくらいはよく焼いてくれる専業主婦の母に頼ろうというカリーナの目論見だった。しかし、あまり手際のよくない少女たちを見かねて手を出しそうになる母親に、カリーナが「わかったから!」「やってみるから!」「向こうで寛いでて!」と連呼しはじめて、母は苦笑しながら買い物に出掛けてしまった。
 カリーナのお母さんが戻ってくる前にこのキッチンの有様をザッとでも片付けておかないと、と思いながらも、パオリンはどうにか形になったチョコレートを愛おしそうに眺めてしまうのを止められずにいた。
「あっ、写真」
 パオリンは携帯電話を取り出して、写真を撮影する。
「なに、折紙じゃあるまいし」
 ブロガーとしても人気の同僚の名前を出すカリーナにパオリンはへへへ、と笑う。
「親にメールする。現物は送れないから」
「……そっか。パオリンのパパとママ、きっと喜ぶよ」
「うんっ」
「エライ、エライ! 女子力すごいUP!」
 カリーナが上体を横に倒してくる。
「えへへ」
 笑いながらパオリンが同じようにすると、二人の額とこめかみの中間くらいの場所がちょん、とくっつきあう。
 ダイニングチェアに座っているのでお互いにグラグラして危なっかしい。ふざけて押し合うようにするとどちらからともなくクスクス笑い声が起きた。
 横目になれば隣の人の顔を見られるが、そうしてみると今度はお互いに変顔になっていて、噴き出してしまう。
 パオリン、とカリーナが名前を呼ぶ。
「なんか、またやってみたいことあったら言って」
「んー…」
 親しくなったネイサンとカリーナ、パオリンは時々仕事帰りに食事に行くようになった。
 そこで交わされる会話の中で、パオリンはこれまでかなり特殊な環境で育ってきたことがわかってきた。
 ネイサンとカリーナがわかったのではない。パオリン自身が、それに気づいたのだ。
 言葉もろくに話せないうちからNEXT能力、それも電撃という凶器にもなり得る能力を発揮してしまったパオリンに、両親はできる限りの英才教育を施した。
 両親は何を置いてもそばにいてくれたが、それでも常に大人に囲まれて勉強と修行ばかりの幼少時代を過ごしていた。
 当たり前のことだとパオリンは考えていた。NEXTという恩寵を得た自分が努力するのは当然だ。そして、それが両親の、一族の、そして故郷の誇りになる日が来るのだと。
 幼少時代のエピソードを披露するたびに、はじめは面白がっていたカリーナは眉をひそめるようになった。ネイサンは初めからあまり表情を変えずに微笑んで聴いてくれていた。
 誇らしげに語り終えたパオリンが顔をあげると、ほんの少し呆然とこちらを眺めているカリーナと目が合った。そのときはじめて、何だか恥ずかしくなった。
 ネイサンがカリーナの他に、自他ともに認めるお子ちゃまの自分まで食事に誘おうとしたときに、パオリン自身も不思議に感じたことを思い出す。
 たぶん大人である先輩はパオリンの経歴を薄々知っていて、他愛ない話をしながらの同僚との食事の機会を設けようとしたのだと思い至った。
 その日から、ヒーロー業をしていれば誰しも自分のことでかなり手一杯ではあったけれど、パオリンは普通の、他愛ないような時間を過ごすことの大切さを覚えていった。
 んー、と宙を見つめたままのパオリンにカリーナが話しかける。
「ほら、買い物とか。前に行ったとき、パオリンだけ何も買わなかったじゃない」
 先日、ネイサンも含めて三人で食事のあとに買い物に行ったのだが、二人が選んでくる服があまりにきれいな色やかわいい柄ばかりで、パオリンはピンと来なかったのだ。
「つきあうから、あたし。パオリンがしてみたいこと」
「してみたいこと? 他に?」
 くっつけあっていた顔を離して、パオリンは横を向いた。
「ボク、キスしてみたい」
 パオリンがどいてしまったから、カリーナは小首を傾げたような姿勢になったままでいる。
「ねぇ。キスしたい」
 もう一回、ちゃんと言ってみる。
「……っ、な!」
 カリーナは言葉になりきれていない声をあげて、それから一拍置いて上半身を仰け反らせた。
「いまの、タイガーが驚いたときに言う『……っ、だ!』に似てたね」
 パオリンはそう言って、もう一度「……っ、だ!」と叫んでいる。物真似のつもりだけれど、似ていない。
「何言ってんの、あんたは!」
「なんで怒るの? タイガー、言うよね?」
「いまはアイツ関係ないから! その前のことよ!」
 カリーナは立ち上がって握り拳を作っている。
「キスって言ったの?! な、なんで?!」
「だって、してみたいもん」
 パオリンは唐突に首をひねる。
「顔の真ん中に鼻があるのに、どうやったらぶつからないの?」
「そんなもん、二人がちょっとずつ、こう、顔を曲げればいいでしょ!」
 じゃなくて! とカリーナが声のトーンを上げた。
「あのねぇ! そんなの、好きな人としなきゃダメよ!」
「カリーナのこと、好きだもん」
「わ、かるけど! その、好きじゃダメ!」
「じゃあ、どの好きだったらいいの?」
 う、とカリーナは言葉に詰まる。
 パオリン自身も、よくわからない。これは、どの、好きだろう。
 両親のことは好きだ。愛情と尊敬を持っている。それから、一族の、故郷のみんな。思い出せば嬉しい気分になる。
 そして、ヒーローとしてともに働く仲間たち。ほとんどが自分よりずっと年上だけれど、ライバルで、だけど悪に立ち向かうときや人を救うときには助け合う、仲間。
 その中で、一番年の近い、同じ性別のブルーローズことカリーナ・ライル。
 長い、カールした睫毛で流し目を送ったり、ツンと顎を上げて《女王様》と呼ばれる表情をするかと思えば、普段は目を真ん丸にしたり頬を膨らませたりもするところが、すごくかわいい。
「ボクは、カリーナが好きだよ」
「だから……」
 カリーナは下唇をきゅっと噛み締めた。そんなことしないで欲しい、とパオリンは思う。ちょっとぷっくらとした、あの唇はいつでも楽しそうにほころんでいて欲しい。
「じゃあ何、折紙とかタ、タイガーでもいいの?! してみたくなったとき、そこにいたら、そうやって頼むの?!」
 うーん、とパオリンは考え込む。とりあえず、腰を抜かして周囲に助けを求めそうなイワンの姿がすぐに目に浮かぶ。
「……してくれると思う? あの二人」
「ちょっと、何それ! ダメに決まってるでしょ!」
「でしょう?」
「ああ、もう、何なの! そんなこと頼んじゃダメだから!」
 ほら、とカリーナはパオリンの手を引いてイスから立たせた。
「格好だけだからね」
 早口にそう言って、カリーナが首を前に突き出すようにする。ほんの少し傾いだ顔。
 ふわっと長い髪がこちらに落ちかかってくる。
 メイクしていなくても長くて、カールした睫毛。青じゃなくて栗色がかった金色の睫毛のほうが、好きだな、だって似合ってるものと思う。
 さっき散々試食したせいか、カリーナの唇が近づいてくると、なんだかチョコレートの甘い香りが濃く香る。
 ちゅっ、と小鳥の声みたいな、可愛らしい音が短く鳴った。
 こうやってキスするんだ。そう思って、ほんの少しパオリンが唇を尖らせると、かすかに、覚めかける夢みたいに、唇にふわりと触れた、唇。
「……っ、な!」
 さっきと同じ驚きの声を発して、カリーナは飛びずさった。
「うーん、……ちょっと、わかった」
「ああ、そう!! じゃあ、もうこの話はこれでおしまい!! 他の人にもしちゃダメだからね!!」
 カリーナは耳まで真っ赤になりながらも、どうにか年上としての矜持を保とうと必死になっている。
 パオリンは聞き分けよく、コクンとうなずいて見せた。
「……わかった」
 わかったのは、カリーナには申し訳ないが『キスの話をしてはいけない』ことではない。
 わかったのは、目の前で顔を真っ赤にして「それじゃあ、片付けるわよ!」と腕まくりしている人が、やっぱりとってもかわいいということ。
 すぐそばで見た唇がすごく魅力的で、ほんの少しだけれど触れた唇が柔らかくて、かわいい音を立てたこと。
 自分のことを『そういう』好き、ではない人と交わしたキスでも、こんなにふわふわとした気分になってしまうこと。
 それから、自分には『他の人にキスをせがんだりしちゃダメ』という人が、本当は別の人にそれを望んでいるのだということ。
 はじめての、未遂のうちに入るのかもしれないキスは、甘くて、それからちょっとだけ、辛い気持ちを連れてきた。


 《 E N D 》

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Posted on 2012/02/15 Wed. 00:00 [edit]

category: SS(龍薔薇)

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