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春コミ20 新刊 「 CROSS 」 

2015/03/15(日)の「HARU COMIC CITY 20」に参加します。
サークル名「OKOnomy」、配置は東ホール"エ"65-bです。

新刊は、『CROSS』 (全年齢向)です。
オフセ・28p・300yen

biting you


「デート」が上手くいかない、と言ったイワンに、キースは「お試しデート」を提案して……。
空→折スタートの空→(←?)折へ、というカンジです。

イワンとキースの視点が交互に入れ替わりながらお話が進みます。

- - - - - - - - - - - - - -



「CROSS」

(本文冒頭です。)


  1.


 そのとき、イワンの頭の中に浮かんだのは『しまった』という言葉だった。

「――あの、すみません!」
 その声を耳にしても、何か言っている人がいるとしか思えなかった。
 イワンは自分自身のことで目一杯だった。腕を掴まれてはいるが、そこに加わったのは大した力でもないし、目の前の顔は多少苛立っているものの怒りに我を忘れているようにも見えない。彼は、ここが往来だということも忘れていないし、周囲の人から自分たちがどう見えるか頭の片隅では気にしているのだ、と考える。
 でも、だからといって上手い対処法も思いつかない。
「あー…その、失礼」
 また、さっきと同じ声がした。道でも訊こうとしているんだろう、と思う。それにしては声が大きい。ひょっとして、僕たちに言ってるんだろうか?……イワンは首を捻らずに、横目だけで声のする方向を見た。
 そして、ギョッとして目を見開くことになる。
「割って入って申し訳ないけれど、あの、大丈夫かい?」
 少しだけ音量を押さえた声が続く。イワンはポカンと口を開けてしまった。
「……何でもないですよ。ねぇ?」
 応じたのは、イワンの腕を掴んでいる青年のほうだ。手を手前に引いて、きみからもそう言ってやってよ、と促してくる。
 イワンはまったく別の言葉を発していた。
「……ス、いや、キース、さん……」
「ああ、やっぱり! イワン、くんだよね。別人だったらどうしようかと思っていたよ。そちらはお友達かな?」
「え、誰?」
 イワンの腕を取った青年がつぶやくが、当人は忙しなく目を瞬くだけでそれには答えない。
「友人どうしで何か意見の相違があっただけならいいのだけれど、その、傍目には何かトラブルのように見えてしまってね。問題ないならいいんだ。邪魔をしたね」
「し、知り合い、っていうか……」
 イワンが言えたのはそれだけがやっとだ。しかし、そのひと言だけでキースが顔を曇らせるには十分だった。
 目をぎゅっと瞑ると、イワンはかなりの力をこめて腕をブンと振った。力いっぱい握られていたわけでもない腕はすぐに自由になる。
「あの、とりあえず、僕…帰ります」
「おい何だよ、それ」
「すいません。ごめんなさい。失礼します」
 そう言いながら後ずさるイワンと、失望の色を滲ませる青年の顔をキースはかわるがわる眺めた。
「……当てつけとかふざけんなよ」
 ボソリと吐き捨てて、青年は身を翻した。
 肩を怒らせて去っていく後ろ姿を見やりながら、キースは「マズイことをしてしまったのかな」と小声になる。
 イワンは細く長い息を吐きだした。
「……イワンくん?」
「いえ、大丈夫です。助かりました」
 助かったと言ったが、問題はこのあとに起こるのだった。
「いまの人とはどうしたんだい? 彼の様子を見ると、通りすがりに難癖をつけてきた類いの相手とも思えないんだが……何があったのか、訊いても?」
 確かにあの青年は洒落た恰好をしていて、キチンとした大学にでも通っていそうな雰囲気だった。そう、たとえば休日にデートにでも出かけたような。
 イワンは一瞬、息を止める。説明を拒否することもできたが、一応助けてもらった手前、そうも言えない。
 しまった、とイワンは胸のうちでつぶやいた。


 そのとき、キースの頭の中に浮かんだのは『しめた』という言葉だった。
 次に何が起きるか、このあとの物事がどう展開するかにまで、考えが及んだわけではない。しめた、というのは、たとえばヒーローとして犯人を追跡しているときに、相手がスピードを落としたとか転倒しそうになったとか、そういった瞬間に頭の中に浮かぶ『よし』『今だ』というような種類の言葉に過ぎない。
 だから、逆に言えば直感というか動物的な勘が働いて、思い浮かんだ単語だった。その証拠にキースは自分の脳の中の言葉に気がつくと、自分自身でひどく動揺した。
「――デート……そうか、ああ…デートか、なるほど」
「はい、あの…す、すみません」
 キースがあちこちに視線をさ迷わせているのは、自身の思いつきに驚いているのであったが、イワンは自分の発言がそうさせてしまったと思った。当然だ。二人は会話をし、イワンが先ほどの青年との関わりを打ち明けたところだったのだから。
『一応、デートをしてたんです』とイワンは言ったのだ。
 公園のベンチに二人は並んで腰を下ろし、視線のずっと先に置かれた不思議な形のオブジェに子供たちが果敢に挑みかかっていくのを眺めていた。
「いや、すまなくなんてないさ! そうだね、さっきの彼はオシャレをして確かにデートという感じだったね、うん」
「でも、今日が初対面だし、まだお茶を飲んだだけで」
「それで、どうして揉めるようなことに? ああ、いや、ぶしつけな質問だったね。すまない、答えなくても」
 キースは顔の前で手を振り、発言を取り消そうとする。しかし、イワンは目を上げると言った。
「……いえ、いいです。っていうか、聞いてもらえますか。もう、みっともないところ見られちゃったんで、この際」
 最初は女の子とデートをしてみたのだ、とイワンは言う。
「日本の文化…っていうか、ニンジャの出てくる映画とかアニメとかのファンが交流するサイトで知り合った女の子と実際に会うことになって……でも、なんか、あんまり」
「楽しく、なかった?」
「まぁ、はい。メールのやりとりをしている間は、すごく気が合うような気がしてたんですけど、顔を合わせてみると全然話が弾まなくて。お互い歳も近いし…あっ、彼女はすごく可愛かったんです。僕みたいな髪の毛ボサボサで服もダサいタイプじゃなくて、学校でも人気ありそうな」
 そういう格差がマズかったのかもしれないけど、とイワンは声を落とした。
「格差?」
「美人でオシャレで、モテそうっていうか友達が沢山いそうだったし、僕と趣味は同じでも他に共通点もなくて」
「はぁ……」
 格差というなら、まだ何者にもなっていない学生と、大企業に所属して大勢のファンを持つヒーローということ自体が大きな差だとキースには思えたが、若いイワンの中では友人の数のほうが重大な要素らしい。
「それで、今度は趣味が云々とかじゃなくて、ヒエラルキーの中での立ち位置が近い人のほうがいいかな、とか…先にメールとかで盛り上がるのも控えて、まずは会ってみようかなとか、思ったんですけど、やっぱり……」
 詳しくは語らなかったが、どうやらどの相手とも初回のデートが不首尾に終わったらしかった。
「あー…あの、それで、どうして急に、いや急にというか、さっきのような恰好いい男の子と…その……」
 恐る恐るキースは尋ねる。先ほどの彼とも『デート』だったのだと言っていたはずだ。
 イワンの回答は単純明快だった。
「女の子のほうが、なんかシビアじゃないですか」
「シビア、かい」
「自分のことを好きなのかもハッキリしない、会話も弾まなくて楽しくないヤツと一緒にいても、確かに何のメリットもないからしょうがないかな、とは思いますけど」
 そんなにキッパリしたものだったかどうか、記憶はあやふやだ。十代の頃なんて男女問わず、恋人とも友人とも関係なく新しい物事や知らない人に出会いたくて仕方ない頃だろう。少なくとも自分はそうだった、とキースは思う。
 一緒にスポーツをするだとか、インドアな趣味ならコミックの感想を喋りあうのでもいい、そういうことをしているうちに自然と人と人が親しくなっていくのだと思う。
「自分が男だからとりあえず女の子と会ってみようと思っただけで……特にどういう人が好みっていうのもないし、だからって男の人で好きなタイプとかもないですけど……一緒に歩くのに気持ち悪いってほどのこともないから、ひょっとして、男どうしのほうが気楽かな、って」
「それで、さっきの彼と?」
 イワンはこっくりとうなずいた。
「すごくマトモそうな人が来てびっくりしたんですけど、軽く話しながらお茶を飲んで、カフェを出たら…その……部屋に来ないか、って言われて」
「え、っ」
「女の子だったらそう安売りみたいなことしないし、そんなにグイグイ来る人にはお目にかからなかったんですけど……考えてみたら、男子学生なら、すぐにそういうことをしたがっても、不思議じゃないのかなって」
 イワンが初対面の人の部屋に上がりこむわけにはいかない、と伝えると、そのつもりで呼び出したんじゃないのかと言い募られ、腕を掴まれたという。そこにキースが通りがかったのだ。
「別に出し惜しみをしたわけじゃないですけど、ただ……それだけって何か違和感あるし、もう少し…普通に知り合うみたいなことも、するべきかなぁと思ったりして」
「いや、それが正しいと思うよ」
 キースはうなずいてやる。身許もハッキリしない相手と二人きりになるというのはヒーローという職についているのに危険だとか、そういう意味もあるが、やはり心を通じあわせてから進むべきステップだと思う。古臭いと言われようが、そう信じているのだから仕方がない。
 それに、とキースは隣に座るイワンをチラリと見た。
 さっきの彼とも、その前に出会ったという女の子たちとのデートをイワンが失敗してしまったと聞いて、キースは少しばかり、いや、大いにホッとしているのだった。
 なにせ、キースはイワンのことが、好きなのだ。ほんの少し前からそのことに気づいてしまい、少々息苦しい思いで日々を過ごしている。だからといって、すぐに何らかの行動を起こすつもりもなかった。キースもイワンも重責ある職についている。仕事に支障をきたすことはできない。
「普通は、人を好きになってからデートするもんですよね」
 イワンから質問を投げかけられて、少し慌てる。好き、という言葉が出てきただけでドキッとしてさえいた。
「まぁ、そうだね」
 じっと見られている。経験談を語れということだろうか。
「うーん、たとえば……」
 こういうことは何かの拍子に盛り上がって喋るとしても、目の前で背筋を正して待っている相手に話すものではないと思うのだが、仕方がない。
「たとえば、親切だなとか、笑顔の素敵な人だなと思ったりする。もっと話をしたいと思うようになって、それで」
「それで、食事に行ったり、映画でも観に行ったりするんですよね」
「お互いに共通点があれば、出かけるのはどこでもいいと思うけれど」
「それで何か話すわけですよね」
 そうだ、イワンは会話が不得手なほうだった。キースは思わず口を挟む。
「無理に会話をしなくても……その、自己アピールの面接ではないのだし」
「そういうの、上手く想像できないっていうか」
 うーん、とイワンは唸ってから視線を下げた。
「僕、どっかおかしいのかもしれません」
「だけど、誰かと出会ってみたいと思って、一歩を踏み出した。それは、すごいことだ。大きな一歩だよ」
 キースは励まそうとしたが、イワンは脱力した笑みを浮かべた。
「でも、今にも挫折しそうです」
「見知らぬ人に会うのは、けっこう疲れるものだよね」
「そう、そうなんですよね。普通は、もっと子どもの頃に、クラスメイトと出かけたりするんだろうなぁ。それでノウハウを学んで。そういうの、してこなかったから」
 ここで、キースの脳裏に何か閃くものがあった。先ほど『一応、デートをしてたんです』とイワンが言ったときに感じたのに似たものが湧いたのだ。
「――それなら、こういうのはどうだろう」
「こういう、の?」
「さっきのきみの言葉を借りるなら『一応、デートのようなもの』を私としてみるというのは」
「……スカ、いえ、えっと…キースさんと?」
 望み薄かな、と思う。なにせ、こちらの本名すら呼び慣れていないのだ。これでは、さっき初対面で腕を掴み、強引な誘い方をした青年と似たようなものかもしれない。
「言い方が悪かったね。私はクラスメイトではないけれど、もし二人でどこかに出かけたら、きみが『デート』らしき経験を得ることはできるかと思ったんだ」
 狡い言い方だろうか。親切めかした提案だが、実のところ、職場以外で彼と出掛けてみたいだけなのだ。
「そ、そんなことお願いできないです」
 イワンは慌てたように首を左右に振る。
「そうかな。ただ休日に会ってみるというだけなんだけど。勿論、無理にすることじゃない。まぁ、今のは私のほうも、最近友人と喋ったり食事をする機会も減って、寂しいものだから言ってみたんだ。困らせたのなら謝るよ」
「謝るなんて、よしてください。……その」
 イワンはおろおろと視線を振ったあと、キースをそっと見上げた。
「本当に、いいんですか。そんなの。……あの、友達もいない僕みたいなヤツの、社会復帰を手伝うみたいな」
「大袈裟だね、きみは。困っている友達は助けたいよ」
「そ、それなら……あの……」
 お願いします、とイワンは膝に手を置いて頭を下げた。

(サンプルおわり。)
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Posted on 2015/03/05 Thu. 16:58 [edit]

category: オフライン

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