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SPARK 新刊 「ENOUGH ROPE」 

2014/10/ のCOMIC CITY SPARKに参加しておりました。
blogの更新をサボっていてすみません(>_<)
新刊はユーリさんメインの事件モノです。
『 ENOUGH ROPE 』(オフセ・36p・400yen)
enogh-rope

<STORY>
月曜の朝、ユーリ・ペトロフはいつも通りの一週間が始めようとしていた。その矢先、執務室に押しかけたアニエスから、現在シュテルンビルトに滞在中の著名人に《ルナティック》からの脅迫状が届いたらしいと聞かされ……

アニエスさんと虎徹さんは割と絡みますが、カプ要素はないです。(空折要素は全然ないです!・笑)
名前のあるオリキャラが被害者だったり関係者だったりで少々出てきますので、苦手な方はご注意下さい。
表紙とトビラには土鍋さんのイラストを戴きました!(……ありがたや)
表紙詐欺にならないように努力はしましたが、お手に取って中身をご覧戴ければ嬉しいです(^_^;)

「続きを読む」には作品冒頭を置いてあります。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ENOGH ROPE」


――Monday 08:30
 執務室に到着した部屋の主が、デスクの前に腰を下ろしたのと同じタイミングで、その携帯電話が着信を知らせる身震いを伝えてきた。スーツの胸ポケットから震動する精密機器を取り出す。
『おはようございます、管理官』
 どの時間帯でもパワフルな声が聞こえてきた。
「おはようございます」
 登録済みの相手との通話に、互いに名乗ることはしない。その効率重視の行動は評価したいところだが、続いた言葉はいただけなかった。
『今から会っていただきたいんです』
「これから書記官との打ち合わせがあります。そのすぐ後には取り調べの立ち合いですので」
『すぐ済みます。お願いします』
 電話器の中からそのセリフが聞こえたのと同時に、ドアの外で物音がした。続いて二人の人間の話し声。片方は秘書の、もう一人も聞いたことのある声だ。
 嫌な予感がする。
「……いま、どちらに?」
 電話の中から答えを聞く前にドアがノックされた。「どうぞ」と応えれば、ついさっき朝の挨拶を済ませたばかりの秘書が顔を見せ、「お電話中失礼します。OBCのジュベール様がお見えです。先ほどお約束をされたそうですが」と取次ぎをしてくれた。
 ふぅっと息を吐き、通話中のはずの携帯電話を仕舞おうとする上司に、秘書はわずかに怪訝な顔になった。
 司法局の裁判官にしてヒーロー管理官、ユーリ・ペトロフの一週間がこうして始まろうとしていた。


 OBCのプロデューサー、アニエス・ジュベールはこう切り出した。ヒーローを一人、要人の護衛につけたい、と。
「司法局から何も聞いていませんが」
「ええ。今、お話しするのが初めてですから」
 藪から棒だ。《ヒーロー》と呼ばれていても、彼らは各企業所属の広報マンのようなものだ。幾らこの街が特区でも、所定の手続きを踏まなければ、凶悪犯の追跡や逮捕に携わることはできない。市民からの通報を受け、司法局から《ヒーロー》に限定的な逮捕権限の許可が下りる。生中継の『HERO.TV』も、放送直前に口頭で事件の概要と予測される行動について司法局に申請があり、その日の当直官がGOサインを出しているのだ。
「今から生中継を始めるわけではないようですね」
「これを見てください」
 アニエスが小脇に抱えてきたタブレットPCをデスクの上に滑らせる。画面には画像が表示されていた。短い文章が印字されたカードを撮影したようだ。
 文の内容を理解したユーリの眉が寄せられる。
「……どういう意味ですか?」
「だから、これがヒーローを借り出したい理由。この人のところに届いたんです」
 アニエスはタブレット画面を指で軽く叩き、別のデータを呼び出した。女性のバストアップの写真が一枚、その横に経歴らしき数行の文字が見えた。
「ジャスミン・ジェフリーズ博士。微生物研究の第一人者。土壌の微生物を遺伝子操作により活性化させることで、農作物の生産性を飛躍的に高めることに成功しました」
 顔写真に添えられた経歴も、アニエスの話を裏づける内容だった。彼女はこの街の出身らしい。十代のうちに複数の学位を取得し、若くして華々しい研究成果を挙げている。
「今週、シュテルンビルトでコンベンションが開催されます。博士はそこで講演をするために現在、この街に滞在中。うちの人気番組で、ある分野のトップランナーに密着取材する硬派なドキュメンタリーがあるんですけど、今、このジェフリーズ博士に取材班が張りついてるの。里帰りでもあるから、それを絡めて半生を語ってもらうような構成にして。そうしたら昨夜、その取材班がこれを見つけた」
 アニエスの指先がタブレットの上を撫で、再び先ほどの文章を呼び出した。
「これ、脅迫状でしょう。そうは思えません?」
 ユーリは肩を竦めた。
「そうでしょうか」

If you don't relent, I will sharpen my sword;
I have bent and strung my bow.
I have also prepared for myself
the instruments of death.
I make ready my flaming arrows.

「――『もしお前が考えを変えないのなら、私は剣を研ぎ、弓を張って構えることになる。また、死に至らしめる武器を用意し、我が炎の矢を準備する。』」
 アニエスが声に出して読み上げた。残念ながら受け取って、楽しい気分になるカードではなさそうだ。
「支離滅裂というほど意味が分からないわけではないが、だからどうという要求も読み取れませんね」
 要求が曖昧だ。思い直せと訴えてはいるが、従わなかった場合にどうなるというのか。
「誰かを思い出しません?」
「誰か、とは?」
「最近顔を見せないけど、こういう芝居がかった言い回しが好きなヤツがいるでしょう。この街には」
「どなたか、お知り合いですか」
「連絡先を知ってたら、独占取材を申し込めるんですけど。……《ルナティック》ですよ」
 とんでもない。ユーリは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「密着取材に同行してたディレクターが気づいて、慌てて連絡してきました。昨夜の真夜中に。ヒーローをすぐに召集してほしいって言うのを宥めて、わたしが朝一番にこちらに出向くことにしたんです」
 まるで夜中の二時三時に叩き起こさなかったことを感謝してくれとでもいうような口調だ。ユーリはチラリと時計に目をやった。書記官との打ち合わせまで、あと十分もない。これでは朝のコーヒーは諦めざるをえない。
 それにしても、この文章からは《ルナティック》らしき雰囲気が漂ってくるらしい。報道局の人間でさえこうだ。ユーリは嘆息したくなった。
「ヘリペリデスファイナンスにも今頃、ドキュメンタリー番組の責任者から話を通していますわ」
「護衛役は折紙サイクロンですか?」
 意外さを滲ませたユーリにアニエスが言葉を返す。
「博士はコンベンションに参加するんです。講演に表彰にパーティー。大勢の前で火ダルマになってほしくないわ。注目を集めて犯行に及ぶのは、《ルナティック》の得意技でしょう。不特定多数が博士に接近できる場所では、折紙サイクロンが彼女に擬態してくれたら、と考えています」
 確かに、生身の女性ではひとたまりもなくても、ヒーロースーツであれば、あの青い炎にも少しは持ち堪えられるかもしれない。俊敏に動けるヒーローであれば、攻撃を避けることもできるだろう。
 しかし、この件に関して、ユーリには納得できない根本的な問題があった。
 デスクに置いたままの、アニエスが持参したタブレットPCに触れる。
「この生物学と遺伝子工学の専門家は、憎まれたり、粛清されるような経歴の持ち主なのですか?」
 経歴に再度目を通す。生年月日を見れば、ユーリよりわずかに下の年齢だ。携わった研究と所属した機関について書かれているだけで、それが何か弊害を引き起こしたとも思えない。
「件のディレクターも首を捻っていました。《ルナティック》でなくても、なぜこんな脅しをするのか分からないと。だけど、シュナイダー氏の事件のとき、《ルナティック》は犯人の復讐の意図に気づいて手を貸したわけでしょう? 何を考えてどう行動するかは誰にも分からないし。真面目な学究の徒で、ようやく復帰したばかりなのに気の毒だわ」
「復帰?」
 略年譜を見れば、ここ数年間、これといった活動が記されていない。
「精神的なところから体を悪くしてしまっていたみたい。ほら、よく聞きません? 天才といわれる人たちは、物事を突き詰めて考えるからかしら」
 精神の脆さと知能の高さに相互関係などないだろう。誰であれ、人間はあっさりと心を病むのだ。目を離した一瞬のうちに、心は姿を変えてしまう。
「ヒーローが護衛として出動するのはいいとして、なぜいつも通り正規の手順を踏まないのですか?」
 シュテルンビルトの司法局は、ことヒーロー事業に関しては、他都市のお役所と違ってスピーディーに動く。
 アニエスは苦笑を浮かべた。
「当の博士が警察に届け出てくれないんですよ。取材をお願いしている立場上、こちらも出し抜くみたいなことはできません」

(略)

 執務室を出て、廊下を進む。会議室は階下だ。帰ろうとするアニエスもユーリの隣を歩み、エレベータの呼び出しボタンを押して、体を脇に寄せる。
 そのまま会釈でもして通り過ぎようとしていたユーリを呼び止めるように、アニエスは声をかけた。
「嬉しそうに見えませんね」
「嬉しがるようなことが起きていますか?」
 要人への脅迫めいた手紙に、影武者として駆り出されるヒーロー。どちらがどうなろうとユーリには痛くも痒くもなかったはずなのだが、事件の端緒が耳に入ってしまっては、後々対応の是非を問われかねない。関わりができれば立派な厄介事だ。
 しかも、脅迫じみた文面が《ルナティック》の仕業ではないかと予想される始末だ。まったくの無関係だと、これ以上ないくらいユーリには分かっても、それについては誰にも説明しようがない。《ルナティック》が自分ではやっていないと言っています、などと一介の裁判官の口から言えるはずがない。
「少しは面白がるかと思ったんですけど」
「……何ですって?」
 ユーリは目を眇めてアニエスを眺めた。冷ややかな視線には慣れっこなのか、辣腕プロデューサーは涼しい表情を保ったままだ。
「ヒーローたちがその特殊な力を活かして、事件を解決したり人を助けたりしようとしてる。ああいう馬鹿馬鹿しいTVショウより、人知れず彼らが本当に役に立ったほうが嬉しいんじゃないかと思って」
「『馬鹿馬鹿しいショウ』ですか」
「勿論、わたしはそんな風に考えてないわ。自分の作ったものには自信を持ってますから」
 そうであれば、なぜそんな言い草をしてみせるのか。尋ねられる前に先手を打つつもりか、アニエスは口を開く。
「ねぇ、ペトロフ管理官。あなたって、どうしてヒーロー関連事業の担当官になったの?」
「今の役職なら、上が決めたことです」
「嫌なら断れるでしょう。異動願いだって出せる。ヒーロー管理官のお仕事は、もう何年目?」
 ユーリがヒーローたちを観察するようになってから、幾つもの季節が過ぎた。それは、管理官という肩書を持つずっと前からだ任を解かれても、彼らの仕事ぶりは見続けるつもりがある。この土地にいる限りは。だが、その考えを目の前の女プロデューサーに告げる必要はなかった。
「わたしはね、以前、報道部門にいたんですよ」
 局の花形部署だ。しかし、アニエスの横顔は自慢げには見えない。
「ウイークデイの夜十時から、基本は九十分間。毎晩、何を流すか決めるの。トップニュースはどうするか、何分のボリュームにするか。記者が取材してきたネタを吟味して、どれを特集にするか」
 ポーン、とくぐもった音が響く。下りのエレベーターが到着したのだ。アニエスが、続いてユーリも箱の中に収まる。
「裁判官に似てるかしら」
「何がですか」
「わたしの前の仕事。現場で生存者を撮影できたからビル火災に何分、交通事故に何分、死んだ人の家族のコメントが取れたから時間を増やして、って」
「どこが似通っているんです?」
「他人の人生にラベルを貼っていくところ。この犯罪には懲役何年、反省の色が見えるから禁錮何年、再犯だから仮釈放なし、って具合に」
 そんな簡単なものではない。ユーリは苦笑を浮かべるが、アニエスは気づかないように喋り続ける。
「通り魔事件に十五分、心理学者のコメントを挟んでCM。交換殺人の続報に八分、元刑事のコメントを挟んでCM。そういう毎日。HERO.TVをリニューアルするから来ないかって声をかけられて、やってみようって思ったわ。その頃はヒーローたちの名前もマトモに知らなかったけど、いいかもって。あなたもそうかと思ってました」
「……上が決めたことです」
 エレベータが動きを止め、ドアが開く。ユーリは廊下へと足を踏み出した。視線をやると、まだドアは開いたままだった。アニエスが『開』のボタンを押しているのだ。
「悪い奴らが逃げる、ヒーローが追う。誰か助けて、って悲鳴があがる。ヒーローがNEXTを発動して、犯罪者をノックアウト。市民が笑顔でありがとう、って言う。今度はその繰り返し」
 繰り返し、という声は報道時代の回想をしていたときより幾分明るさを帯びているようだ。
「ワンパターンでしょう。でも、前の仕事より、気に入ってる。ヒーローって、目に見える希望なんじゃないかしら。悪人はちゃんと捕まえる。助けを求めれば必ず駆けつける。それに、エキサイトする実況の声と、ワクワクするBGMと実況の声とを足して、カメラワークでブラッシュアップして、みんなのところへ届けるの」
 たった数人のヒーローが街じゅうを駈けずり回ったところで、すべての悪が排除されるには至らない。希望といっても、それは上辺だけのことだ。アニエス自身が語った、時間で区切り、ラベルを貼って体裁を整えた夜のニュースとそう変わりはない。だが、ユーリはそれを指摘してやる気にはなれなかった。そんなことは当人もとっくに承知のはずだ。嫌気が差そうが疲れきろうが、TVの世界から出て行く気はないのだから。
「街に希望を振り撒いて、勢いあまって壊した建物の損害賠償事案は、こちらに回ってくるというわけですか」
 肩を竦めるユーリに、アニエスは細い眉を吊り上げる。
「約一名分が時々ね。最近は頻度も減ったと思いますけど」
「そうでしたかね」
 誰かの身の上に起きた出来事に、横からしゃしゃり出て手を加え、見世物にするのが性分なら、せめて楽しくて陽気なものを披露したい。それが彼女自身で決めた生き方なのだろう。それに意見する気はないし、そんな間柄でもなかった。
 ユーリは歩き出した。背後から「よい一日を」という声と、ドアの閉まるかすかな音が聞こえた。


(以下略)


……というカンジです。よろしくお願いします!


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Posted on 2014/11/09 Sun. 23:38 [edit]

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