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空/折 「Let's make a toast to our future ?!」 R18 


酔っ払イワン+キースです。
一応R-18だけどヌルいです。(でもイタしてます…)
イワン一人称です。スパーク原稿を始めるにあたって、準備運動的にSS書いてみました。(今度の本はイワン一人称じゃないですけど。)


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「Let's make a toast to our future ?!」
R-18



 アルコールのせいでハメを外す、なんて自分には起きるはずがないと思っていた。
 家族も親類縁者もみんな酒に強いし、第一、僕には友達らしい友達もいない。最近は仕事仲間というか先輩たちから誘われたときだけ、ダイナーやバーについていくこともあるけど、そのときだって大概お茶を飲んでるし、お酒を飲んだとしても目上の人を相手にしてるんだから自制が利いてるし、一人でバーに行くシュミもない。
 自分の家で酒を呷ったって(今のところそういう機会はないけど)、廊下で眠りこけて風邪を引くとか、悪くても足元がフラついて食器棚に突っ込んでケガをするとか、その程度のことかと思っていた。
 よく聞くのは、つい飲み過ぎて記憶が曖昧になったり、普段は隠れていた別人格が現れたりするってやつ。
 泥酔した男が道端で眠りこけ、大蛇に丸呑みにされたというニュースをネットで見たこともある。あれはデマだったんだっけ。
 酔っ払って突飛な行動をとるっていうのは、やっぱり気の合う仲間がいてこそ、もっと飲めよって言われたり、気が大きくなったり見栄を張ったりするんだろうって考えていたんだ。
 それが今、二日酔いでガンガンする頭を抱えて、はじめて訪れた部屋の壁を背にジリジリと横歩きしているなんて。
 目の前にはこの部屋の主がこっちを見つめていて、僕がそろそろと右に移動すると、同じ方向(彼からすると左)に僕と同じくらいの速さで移動する。
 だから僕は壁際に追い詰められたような状況になっている。
「折が…いや、イワンくん!」
 聞き慣れない固有名詞に、すでに二日酔いから来る頭痛を抱えた僕の頭の中が、別の刺激を与えられたみたいにビリビリ震える。
「も、もういいじゃないですか!」
「もういいって?」
「その呼び方とか!」
「どうして?」
「だって……」
 あれは、昨夜だけのことだ。
 酔った口から出た、おふざけの呼び名だ。
 酔っ払ったせいでハメを外して、外しすぎて呼んだだけなのに、それを次の日の朝まで覚えてるなんて。
「もういい、って言うなら、まずはきみのその格好だ」
 名前のことは置いておくことにしたらしい。
「どうしてきみはヤモリか何かみたいに、壁にぴったりくっついてるんだい」
「そ、それはさっき、キー……」
 僕の口からも、昨夜酔っ払ったときに出た呼び方が飛び出しそうになって、慌てて口を噤む。
「だから、あの、さっきいきなり……」
 目を覚ましてどうにかベッドを這い出したばっかりの僕に、この人が飛びついてこようとしたせいだ。
 抱き締められそうになって驚いて。慌てて間合いをとろうとしたら、飛び退きすぎて背中から壁にぶち当たっちゃったんだけど。
 でも、まさか。
 寝ぼけた頭が思いついた勘違いだったかもしれない。まだ背中を壁にくっつけたままだったけど、僕は考えてみた。
 飛びついてきた、なんて。そんなことをする必要はもうないんだから。もう二人とも酔ってなんかいないんだし。
 僕がそのことを言って謝ろうかとしたら、別のことを先に言われてしまう。
「背中を見せないようにしているのは、つまり、あれかい、私が昨夜後ろから――」
「ち、違いますっ」
 違うけど、そんなことは言わないでほしい。
「後ろからまたイタズラをされることを警戒してるんじゃないのなら、部屋の真ん中に来てくれないだろうか」
 僕の喉から変な声が漏れる。『イタズラ』なんて。
 もう一回頭を切り替えようと試みた。そうだ、あれは単なる『イタズラ』ってことだ。先輩が後輩にした、ちょっとした悪ふざけ。だから、気にすることはない。
「わかりました、けど」
 背中を壁から離す前に、ひとつ質問しておく。
「僕がそっちに行ったら、えーっと…どうするんですか」
「……『おはよう』のキスをしちゃダメかな?」
 ゴンッ、と僕の後頭部が他人様の部屋の壁を打つ音がした。
「え? だ、大丈夫かい?」
「いえ、あの、頭なら大丈夫ですけど、でも! 僕はもうここで!」
「そこで? だけど、そこでそうしている人にキスするなんて、まるで――」
「キ、キスはいいです! っていうか、キスから離れてください!」
 僕が声を裏返すと、目の前の人の顔が急に曇った。
「……つまり、それは」
「あ、あの、もうそろそろ失礼しますので」
「そうか。わかったよ。これを言うのが先だったね」
 曇っていたはずの顔が今度はパッと霧が晴れたみたいになる。まるで、正解を見つけたみたいに。
「好きだよ、イワンくん。きみを愛してる」
 僕の後頭部は壁に押しつけたまま、壁紙との最小距離に到達したままだ。これ以上逃げようがない。NEXT能力を使うことを咄嗟に考えたけど、真正面で待たれてたら何に姿を変えたってパッと掴まって終わりだ。
 にこにこと微笑みかけてくる人の顔から目を逸らせずに、どうして僕のNEXT能力はエドワードみたいに逃げるのに適してないんだろう、って考えてた。



 昨夜、あんなことが起きてしまったのは誰が悪かったのか。
 そりゃあ僕にも反省すべき点は多々あると思う。でも、ちょっとだけロックバイソンさんを恨みたい。
 元はといえば、あの人が約束をすっぽかさなければ、僕たちは二人にならなかった。
 僕らを呼び出したのはロックバイソンさんだった。なのに、言い出しっぺの張本人が約束の時間の数分前になって、今日は来られないって言ってきた。それもメールで。
 仕事関係の予定が入っていたのをうっかり忘れて、僕らに声をかけてしまったんだって。悪いな、この埋め合わせは今度するからよ、って締め括られたメールを閉じる。約束の店に向かう途中の路上で、僕が顔を上げると、向こうからやって来る人物が目に入った。
 たぶん、僕がいま閉じたのと同じメールを読んでいる。バイソンさんからのメールは宛先が二人分になっていた。
 十メートルくらい前方で、メールを読み終えた人は、さてそれじゃあどうしようか、って感じでふぅっと息をついた。顔を上げて、僕と目が合う。その口が「やあ」って動くのが見えた。こっちも会釈を返す。
 僕らはケータイをポケットに収めてから距離をつめた。
「こんばんは。あの、お疲れ様です」
 目の前の人は、今日もパトロールっていう恒例の自主活動を終えたところだった。
 僕と同じヒーローのスカイハイさん。僕と同じ、なんて言うのもおこがましい、ずっとずっと先輩で大ベテランだ。ワイルドタイガーさんとバーナビーさんが二部リーグに移籍して、女性(?)陣が三人でつるみはじめてから、僕たち三人はときどき仕事を離れても会うようになっていた。
「メールは読んだかい? そう。それじゃあ、どうしようか」
「ああ、肝心のバイソンさんがいないんじゃ……」
 言いかけて、僕は慌てて口を閉じた。人通りのある道端で『バイソンさん』だなんてヒーローネームを口にしてしまった。だけど、道行く人たちは誰も気にしていないみたいだ。
「うん、彼が来ないとは残念だね」
 バイソンさんが見つけた《いい店》とやらに、僕ら二人が誘われたのだ。
「お疲れのところせっかく、スカイハ――」
 また口が滑った。お互い素顔のときに、それも往来で呼んじゃいけない名前なのに。
「いや、疲れてはいないよ。大丈夫だ」
 少し考える素振りを見せたあとで、目の前の人はパッと笑顔になる。
「ねぇ、どうだろう。きみもせっかくここまで足を伸ばしたんだから、うちに来ないかい?」
「え、いいんですか」
「大豪邸ってわけじゃないけどね。そう散らかってはいないよ、今日のところは」
 小さな冗談に僕も小さく笑った。
「じゃあ、決まりだね」
 それが、間違いのはじまりだった、と思う。


 
 スカイハイさんの自宅は、行こうとしていた店からそう遠くなかった。
 部屋に上がると、最初は飼い犬の(スカイハイさんの言葉を借りれば『ソウルメイト』らしいけど)ジョンが、僕っていうお客さんに興奮してはしゃぎまくっているのにつきあって遊んであげた。スカイハイさんは遊び足りなそうなジョンに「きみはもう眠る時間だろう」なんて人間に話すみたいに話しかけて、ケージが置いてあるって部屋にジョンは退場していった。
 それから、リビングに落ち着いて、少しして僕が目ざとく、棚に並んでる高級なお酒を見つけてしまったのだ。名前だけなら映画や小説の中で見ていた、何十年物、とかいうやつ。
 カッコいいなぁ、休みの日はああいうの飲むんだろうなぁ、と思ったけど、訊いてみたらそうじゃないって言われた。
 貰い物で、自分で選んだわけじゃないし、まだ開けてもいないよ、って。
 どうやら僕は物欲しそうな顔をしていたみたいで、スカイハイさんは『グラスを持って来ようか』と言った。
 そんないいです、いや遠慮しないで、みたいな押し問答が少しあって、結局はそれをご馳走になることにした。
 これも間違いだ。間違い、その二。
 高級なお酒は、やっぱり美味しかった。口の中に含んだ瞬間の感じも、香りも、喉ごしも、すごくよくて、あっさりしてるっていうか、しつこさみたいなものを全く感じないから、どんどん飲んでしまった。
 これがたぶん、間違いのその三だ。
 間違い探しを本格的にやろうとすると、ここから加速度的に増えていくことになる。
 どういうきっかけで、そういう話の流れになったか覚えてないけど、っていうかまぁいつものことなんだけど、僕は自分を卑下ってほどじゃないけど、腐すようなことを喋ってた。
 趣味は色々あっても、だからって友達もできるわけじゃないし、こんなに街の中には人間がいるのに気の合う人なんてみんなどうやって見つけてるんだろう、みたいなこととか。
 彼女も勿論いないし、出来る気配もない。大体、この仕事やってたらそんな時間取れないし、とか僕は喋ってた。あれっ、これって向こうから質問が出たのかな。ガールフレンドもいないの、って。とにかく、言えば言うほどノッてくるっていうか、喋るのが気持ちよくなってくるみたいなカンジで、言わなくてもいいこともどんどん喋ってたと思う。
 キスもしたことがない、って告白してた。
 気のせいかもしれないけど、それまで微笑みを浮かべて相槌を打ったり、そんなことはないよ、みんなそうさ、なんて慰めてくれたりしたスカイハイさんが、ここでちょっと変な顔になった。
 僕は慌てた。
 バカにされたのか、憐れまれたのか分からないけど、とにかく今の言葉を忘れてもらわなきゃ、と思った。
 嘘です、冗談ですよ、って言うとか、もう単純に今の失言は忘れてください、ってお願いすればよかったんだ。でも、このときの僕はもう酔いが回ってた。
 スカイハイさんはどうなんですか、みたいなことを僕の口は発言してた。
 困り顔で半笑いになっている大先輩に僕は言い募った。してみてください、とか、いつもどんなふうにしてるんですか、って。
 失礼なことを言ったのは半分わざとだ。前に俳優が、ラブシーンの演技指導をしたがらない演出家は信用できない、って言ってたのを聞いていて、それを思い出していた。『いつも通りやってみて』って言われると、どうしてお前にいつもどうやってやってるか教えなきゃいけないんだ、って思う、って言っていたから。
 本気で怒らせようとしたわけじゃなかった、はずだ。
 だけど、怒らせるよりもっと大変な、っていうか変なことが起きた。
 気づいたら、僕はキスされてた。
 最初は、こういうふうに首を傾けて、くらいのアクションがあって、僕は真面目な受け答えに声をあげて笑ってた。
 そしたら、ほんのちょっと、軽く、唇の表面どうしが触れ合った。僕は酔っ払いだから、触った、とか言ってまた笑った。
 その次は、唇どうしが、何て言うかおもちゃのブロックみたいに、こっちの隙間に向こうのが嵌って、向こうの隙間にこっちのが嵌りこむみたいに、ぴったりくっつきあってた。
 そこまで来るともう笑うことはできなくなってた(物理的に口を塞がれてるっていうのもあるけど)。
 僕はぽかんとして、といっても口は開けてるっていうか、開いてるけど空いてないっていうか、舌が、僕のものじゃない舌が、僕の舌に載ってて、載ってるだけじゃなくて動いて、色んなところを、色んなところったって口の中なんてそう広くないはずなのに、触りまくられてるっていうカンジで、僕はソファの中で頸を仰け反らせたままぼうっとしてるだけだった。
 舌に載せられた、自分のじゃない舌は重くて、勿論大した重みじゃないんだけど、ちゃんと重さがあって体温があって、生きてるみたいに動いて、歯の裏とか歯茎の裏とか喉に近いほうまで突ついてくる。
 口が塞がってるからどうにか鼻の穴を意識して息を吸った。その間に唾液が湧いてきて、それを舌先で掻き回されて、それから吸い上げられた。驚く。嘘だ、と咄嗟に思ったけど、すぐそこにある喉が音を立てて動いて、それは水分を嚥下する音で、嘘じゃないって分かる。これは嘘じゃないんだって。
 頭は半分ぼうっとしてたけど、半分ではこんなふうなんだ、と思う。
 キスっていうのが気持ちいいのかどうか、正直なところ僕にはまだ判断できなかったけど、とにかく、こういう体温とか重苦しさとか逃げ場のなさとか、それでいて口の中にこれだけ色んな場所があるってこととか、僕に知らしめてくる。
 逃げ場のなさ、って思ったけど、僕はいつの間にか両腕に閉じ込められてしまっていた。背中に大きくて熱っぽいてのひらが当てられていて、それがゆっくりと背中全体を撫でていく。
 その手に力が入ったと思ったら、僕の体は斜め上に移動していた。ソファから引き上げられたのに、まだ尻の下には何か支えがあった。不安定なそれが、向かい合ってる人の腿だって気づいたのは、まだ続いたままのキスの途中だった。
 膝の先がちょっと不穏な感触を掠める。自分のだったら数えるどころじゃなく触ってきたけど、人のそれに、しかも膝頭で触ると何だか腰骨の奥のほうからムズムズしてくるカンジだ。
 僕が腰を捻ったのをどう受け取られたのか、背中を包んでいた手の片方が外れてカーゴパンツの中心に降りてきた。
 ズボンと下着の二枚の布ごしにそこをゆっくり揉みしだかれる。自分で思ってた以上に形を変えている器官を。そこから滲みだしたものでぬめって、手と布とその奥がちょっとずつ動きをずらして揺れる。
 酔っ払うと役に立たなくなる、なんて聞いていたけど、僕のそこは全然そうなってはいなかった。ああ、じゃあまだそんなに酔ってはいないんだ、これを続けてられるうちはまだ大丈夫、って思いが僕の頭を掠めたんだから、いまになって考えたらマトモじゃない状態だったんだけど。
 鼻からの息だけじゃ我慢できなくなって、頭を大きく横に振って口を解放する。ぜいぜい、ひゅうひゅう、全速力で走ってきたみたいな呼吸が僕の口から漏れていた。
 顔を離したのが合図になったみたいだった。僕の服の裾に目の前の人の両手が乱暴なくらいに勢いよく入ってきて、僕に関して言えば、だったらいいやって変に納得したっていうか、二人して競うように服を脱いでしまった。ここまで来ると、こんなことをしてるのはアルコールのせいなのか、それとも長々と続けてしまったキスのせいなのか、もうよくわからなくなっていた。
 裸になって、またくっつきあう。広いとは言えないソファの上でアルコールの入った二人でこれをやってたから、どっちかの脚が座面を踏み外して、絡みあってる二人分の体がかくん、とブレた。
 だけど、そこは酔っ払いなものだから、二人とも声に出して笑って、脱いだものを蹴散らしながらソファから転がり降りた。
 自分の体にまとわりついてきたTシャツをぽんと放ったら、それはスカイハイさんの腰のあたりに飛んで、何と勃ちあがったアレに一瞬引っかかるみたいに動きを止めてから、すぐに床に落ちていった。
 二人とも丸裸で、しかも煌々と明かりのついたリビングなんだから、お互いの体の至るところがよく見える。
「あはは……いま、Tシャツがスカイハイさんのそれに」
 僕はそこを指差して笑った。
「キースだよ」
「え」
「名前さ。スカイハイさんのそれ、なんて」
 確かに変だ。そこにいるのは衣装を脱いだヒーローでもあるんだけど、ペニスを指差しながらヒーローの名前を言うなんて、死ぬほど馬鹿げてるカンジがする。
「ああ、そうですね、キースさんの、それ……ははっ」
 まだ笑ったままでいた僕は、あっけなく床のラグの上に倒されていた。痛いとは思わなかったけど、急に視界が巡り回って、目の前には織物のアップ、背中にはスカイハイさんの、いやキースさんの体重がかかっていた。
「えっ、ごめんなさい」
 反射的に謝ったけど、僕をひっくり返した人は怒っているわけじゃないみたいで、上からはクスクス笑いが降ってくる。
「折が…違った、イワンくんのは?」
 お返しに尋かれながら、前に回ってこられた手で反り返ってる場所を探られる。
 背中にキスされたり、もう片方の手で胸なんかを弄られて、僕は半分笑いながら息を荒げていった。
 そのうち、後ろのほうで変な感じがして、僕は首を捩った。後ろを向いたけど、密着しすぎていて、視界には壁紙とか天井が見えただけだ。
「……ゆ、び?」
「そう」
 何をされようとしてるのか、半分は理解できてたけど、何だか別にどうでもいいような気がしたし、それより膨れて震える僕自身で、キースさんの掌をラグの上に縫いとめるほうが忙しかった。
 大きな手の中でぐにぐに揉まれてるそこを、腰を突き出すみたいにして掌に擦りつける。これも酔ってるせいなんだろうか。感じてるのに、いつもよりずっと長く保ってるからそうするのをやめられない。動くのを止めたら急に萎んでしまいそうになるし、ちょっとの刺激でもこめかみにビリビリくるくらい、いい。
 ずっと、かなりの時間そうして床の上で瀕死の芋虫みたいに体を揺すってたつもりだけど、実際は大した時間じゃないのかもしれない。ああ、そんなはずはないか。後ろに指が足されて、けっこう思い切りよく往復しても平気になるくらいだから、やっぱりかなり経ってたのかもしれない。それとも、アルコールが痛覚を麻痺させてたんだろうか。
「――あ」
 思わず息を止めた。指じゃないものが押し当てられてたからだ。
 押し当てられた、なんて状態はほんの一瞬で、場所を決めたあと、それはゆっくり、だけど確実に中へ押し入ってきた。鈍いけど、止まってはくれない。
「……これ、やだ」
 その声は自分の耳でも、本気で嫌がってるように聞こえなかった。
 嫌なら、手足をばたつかせることだって出来たはずだ。強く抱き締められていたって、幾ら酔っ払ってても。だけど、僕はじっと待ち構えるままの姿勢で、同じ言葉を繰り返した。
 やだ、って。じりじり押し入ってきてる、その熱さとか脈打つカンジとか、ワケわかんないどうしようもなさに圧倒されてたんだと思う。
「……無理だよ」
 熱のあがった声が掠れてる。ほとんど囁きのボリュームなのに、やめる気はない、ってハッキリ伝えてくる。
「もう、無理だ」
「……ッ」
 それから、あまり痛みを感じなくなってるらしい体は、揺さぶられ続けた。



「ま、まだ酔っ払ってるんですよ」
「そんなことはないよ」
 夜が終わって、朝が来て。
 二日酔いの頭痛だけを残して、アルコールの魔法は消え去ったみたいだ。少なくとも、僕の上からは。
 だけど、キースさんの中には何だかおかしな影響を置いていったらしくて、見た目はいつも通りシャンとしてるのに、僕を好きだなんて言って追い掛け回す。
 昨夜、僕はあのままリビングの床で眠りこけちゃったと思うけど、その僕をベッドに寝かせてくれるくらいには、キースさんは回復してたと思うのに。
 壁に背中をぴったりくっつけたまま言い募る。
「だって、何か変ですよ。冷静になったら、『しまった』って思うはずです。きっと後悔して、いま言ったことを取り消したいって」
「きみは私のことを冷静じゃないって言うけど」
「はい。絶対に」
「恋のさなかにあるってことは、冷静な状態なはずがないよ。だろう?」
「……だぁッ!」
 僕の口からタイガーさんの口癖みたいな叫び声が弾ける。
「だ、だから、その恋だとか愛だとかを僕に向かって言うこと自体――」
「きみを好きなんだ。昨夜の出来事はそういうことさ」
 うぐ、と僕の喉からおかしな音が漏れた。
「意識下で、きみを恋しく思っていたんだよ。それで、あんなことが出来た。ああいうのこそが、心も体も繋がったってことなんじゃないのかと私は」
「ちょ、ちょっと、待っ――」
「出来たどころか、とてつもなく二人とも」
 キースさんはまだ何か喋っていたけど、僕は「あーあーあーあーあー」と声を出しながら、両手を両耳にあてて、塞いだり開けたりを繰り返す。
 こっちに近づいてこられると困るからしっかり目を開けたままでいたら、キースさんは何か言いかけてから諦めて、大袈裟に肩をすくめていた。
 そうだ。
 僕の脳ミソは急に思い出す。
 昨夜、この部屋でグラスを合わせたときに言ったセリフを。
 こんないいお酒を勿体ないです、って僕が言ったら、こういう機会でもないと開けないから、とキースさんが応えて。
 きみだって、もう少し歳をとれば幾らでもこういうものをもらうことになるさ、とかも言われて。
 そうかなぁ、って僕は首をひねって。
 キースさんはグラスを掲げると、改まった口調になって言った。
『乾杯しよう』
『何に乾杯します?』
『そうだね。きみの将来に?』
『どうして僕だけなんですか』
『そうか。じゃあ、二人の将来に』
『そうですね、二人の将来に』
 そして、カチン、とグラスを合わせた。
 あのとき言った『二人の将来』っていうのは、つまり、お互いのって意味だ。二人一緒の、ってつもりじゃなかった。そう、全然。僕の、それにあなたのも、ってことだった。なのに。
 なぜだか、あのセリフはひと晩経ったら別の意味に変容しようとしちゃってる。
 いや、そんなはずはない。勘違いだ。意味が変容したわけじゃなくて、キースさんが何か盛大な勘違いをしてるから、僕まで釣られそうになってるだけだ。それだけ。
 まずはキースさんの勘違いを訂正しないといけない。ああいうことが出来ちゃったからって、別にそんなの何でもないんだって。
 そこで、僕の思考はまた立ち止まる。
 そういえば、さっきから僕は脳内で、目の前の人のことをずっと《キースさん》って呼んでる。いつの間にか。あんな呼び方は昨夜だけの悪ふざけだって、思ってた。その、はずだ。
 なのに。
 アルコールのせいで大失敗、なんて自分には起きるはずがないと思っていた。
 今さっきキースさんが言ったことが、つまり、ヤることヤれたのは二人が意識下で惹かれあってた証拠だ、っていう論にうなずいてしまえば、昨夜のあれはアルコールによる《失敗》じゃないことには、なる。
 いや、だけど。それにしても。


 < E N D >

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Posted on 2014/09/04 Thu. 22:01 [edit]

category: SS(空折)

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