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空/折 「おおむね晴れ、ところにより薔薇の花」 


空→折のプロポーズ編です。

女子組とライアンちゃんも出てきます。
(この子は苦労人っぽい気がする。さすらってるし…)


実はかわいいイラストを頂戴したので、交換こでシチュエーションをご指定戴き、空折を書きました(笑)。
飾っていいですよーとのことで、緑野おじかさん(ありがとうございました!)の四葉ありすお嬢様をぺたり。
(画像クリック→別窓で大きくなります♪)
ojikasan-alice <皆様の笑顔のためにBLを!


……どなたか、OKOと【可愛い女の子】←→【空折】の交換会しませんか?(笑)



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


おおむね晴れ、ところにより薔薇の花


 イワンは歓迎会に向かおうとする一団の最後尾にいた。
 先頭はネイサンで、その後ろにカリーナとパオリンがお喋りしながら続く。
 イワンの手前に位置するのは歓迎される側のライアンだ。芸能人として顔を知られているのに、おネエさんとJK・JCコンビの後を歩いても街行く人の視線など気にも留めていない。イワン以外の男性陣は現地集合の予定だった。
 そのライアンが、ふっとイワンを振り向いた。
「この時間でもトレーニングセンターって入れたっけ?」
 指差す先、すぐそこには、ジャスティス・タワーがある。
「え、あの…二十四時間、使え、ます」
 どうにかつっかえつっかえそう答える。
「オレ、忘れ物しちゃったみたいで。トレセンに。たぶんレストコーナーのテーブルの上」
「はぁ…」
 大変ですね、と言おうとして気づく。忘れ物を取りに行きたいから、この時間でも出入りできるのかと訊いているのだ、彼は。
「夜だと、暗証番号とか要るんだっけ?」
 そのセリフはイワンではなく、二人の会話に顔を向けてきたパオリンに尋ねていた。
「そうだよ。忘れちゃった?」
「夜なんて忙しくて行かねーからさぁ」
「ふぅん。えっとねぇ」
 まだ会って何日も経ってないのに、パオリンは随分とこの新人に懐いている。派手な外見とは対照的に、ライアンは誰にでも愛想がいい。『オレはオレは…』とばかり言っているかと思ったら、その話が案外面白く、それに聞き上手だった。
「……っていうか、アンタ行ってきてあげれば?」
 パオリンが暗証番号を耳打ちしようとするのを遮って、そう口を開いたのはカリーナだ。
「見て大丈夫なものならだけど」
「いや、悪いし」
「だってライアンは一応、主賓なんだから」
 それもそうだ。今は彼の歓迎会の最中だ。だから主役が中座するよりも……。
 カリーナは腰に手を当ててこちらに視線を据えている。ということは。
「――え、僕?」
 イワンはきょとんとした顔で人差し指を自分の胸に向ける。
「なに、嫌なの?」
「い、嫌とかじゃ」
 どうしてそうなるのか。いや、やっぱりそうなって当たり前なのだろうか。イワンは考える。
 今日、虎徹は遅くなってからでないと参加できないとはいえ、カリーナまで何だかやけにライアンの肩を持つ気がする。恋のターゲットが変わったとは思わないけれど、それにしても。
「ちょっと、往来で何よぉ」
 先頭にいたネイサンが困り顔で振り向く。カリーナとイワンが足を止め、引きずられるようにライアンとパオリンも立ち止まっていた。
「あー、やっぱオレが自分で」
「あ…いい。行くよ。行って来る」
「マジで? すみません」
 悪いし、とか自分で、とか言った割にはひどくあっさりとライアンは笑顔を見せた。
「お店の場所わかるわよね? じゃあ、あとでねぇ」
 ネイサンも当たり前のようにイワンにお使いを頼む。
 わかりました、と応えて、イワンは見切れ職人の素早さで脇道へ逸れていった。
 イワンが消えてしまうと、残された四人は歓迎会の会場へ向かうどころか足を止めてしまう。
「……今ので良かったんスかね」
 ライアンが尋ね、ネイサンが答える。
「いいんじゃなぁい? 自然なカンジで」
 チラリと女子二人に視線を移すと、二人もそれぞれにうなずいた、
「普通っぽかったと思うけど」
「うん、普段からあんなだもん。ねぇ、電話入れとかないと」
「あ、そうね。今出たところよ、って言っておいてあげなくちゃね」
「あ…そう……」
 ライアンは年下の先輩が消えていった脇道を見遣る。普段からけっこう不憫な扱いを受けているらしい先輩が、今夜幸せを実感してくれることを祈りつつ。



 羨ましいわけじゃない。
 イワンは上昇するエレベーターの中で、ガラスの壁に映る自分の顔をぼぅっと眺めていた。
 自分が新人としてデビューしたときは、別会社に所属するヒーロー間の交流などはなくて、歓迎会なんて行われなかった。
 バーナビーさんが入ったときと、今度の二回だけだ。自分だけじゃない、ブルーローズだってドラゴンキッドだって内々に自社のスタッフが激励してくれたくらいだろう。
 なんであんなに普通に喋れるんだろう。羨ましいのとは違う。ただ、不思議なのだ。
 会って何日かで、あんなに何でも普通に話せしている。――ライアンのことだ。
 現在階を示すランプがどんどん数字を大きくしていく。
 この間だって、とイワンは思い出す。
 待ち合わせに少し遅れてきた人が、ちょっと疲れているような困ったような顔をしているのを見て、イワンは咄嗟に姿を隠した。そして、今着いたばかりのような顔をして再登場してみせた。
 謝らせたくないし、どうしたのか訊くのも悪い気がして。――これは、恋人の…キースとのことだ。
 キースは、遅刻したことを詫びようとするイワンに「実は私も今来たばかりでね」と言うと、明るい笑顔を見せた。「さあ、楽しいデートを始めよう」と。
 本当なら、何があったのか、仕事に時間を取られたのか自然に尋ねてみたらいいのだ。それで、愚痴を聞いてやるなり、疲れているなら予定を切り上げるように提案したっていい。というより、そうするべきなのだろう。
 でも、それがまだ自分にはできない。
 どちらかの部屋で朝まで過ごすような機会が増えても、何でもないことで、出来ないことが多すぎる。
 イワンの指がパスコードを入力すると、プシュン、という少々間の抜けた音とともにドアロックが解除された。
 室内に足を踏み入れると、それまで非常灯だけが燈っていた部屋にセンサーが人の出入りを感知して明かりが入る。
「……確か、テーブ、ル!!」
 背後に気配を感じて、目的の場所に向けようとしていた顔をブン、と音が出るくらい振り返らせた。
「どぅわぁぁああああ!!」
 何ともおかしな叫び声を発して、イワンは後ずさった。
 そこには奇妙な《モノ》が存在していた。
 等身大のスカイハイのヒーロースーツの上、頭の部分には真っ赤な薔薇の大きな花束が載って……。
「ああ! 驚かせて申し訳ない!!」
「スカイハ…って、キース、さん?!」
 奇妙なオブジェに見えたそれは、本物のスカイハイ…つまりキースが立っていたのだ。
 しかし、やはりその格好は奇妙だった。
 ヒーロースーツを着ているのはいいにしても、マスクは被っておらず素顔が剥き出しになっている。そして、両手でなければ抱えきれないほどの薔薇の花束。
 イワンは何年も昔の、とあるエピソードを思い出した。
 キースがある女性に好意を抱いて、彼女を公園で待ち続けていた日々のことを。公園へ向かう途中で、キースは必ず花束を買ってそれを携えていったらしい。
 結局、キースはその女性に会うことはできなかった。数週間の間、殺風景なはずの一人暮らしの部屋に花が溢れかえったのだと、後でキースから聞かされた。
 イワンは花束を胸に抱いたキースを見つめた。これはどういうことなんだろうか。
「その花…いえあの、その格好も……ええと……」
「イワンくん、きみに話があるんだ」
「えっ、あの……でも、僕、歓迎会が……」
 それに今、自分はライアンの忘れ物を取りに来たのだ。そう言おうとして、イワンはレストコーナーのテーブルを振り返る。テーブルの上にそれらしきものはない。
「すまない。ファイヤーくんたちに頼んで、きみをここに呼んでもらったんだ」
「あ…それ、じゃあ」
「忘れ物なんてないよ」
「ああ、はぁ……」
 口ではそう答えながらも、イワンはまだテーブルの辺りに視線をさ迷わせていた。
 あきらかに挙動不審で、今にも逃げ出してしまいそうなイワンの前にキースはゆっくりと進むと、その場に膝をついた。
「イワンくん」
「え…あの、何して……」
「きみはさっき、どうしてこんな格好をしているのか質問をしたね」
 イワンはほんの少し顎の先を沈める。
「やっぱりこれが、私の正装だと思うからさ。ヒーローのスカイハイであること、それが私の有りようには欠かせない。私は、まだしばらくヒーローであることを辞められないだろう」
「そんなの…当たり、前です」
「当たり前かな? だけど、私はキース・グッドマンという名の一人の人間でもあるんだ。キースとしての暮らしも、幸せも、私は諦めたくない」
「それだって、普通のことじゃ…ないんですか?」
 それよりも、じっと見上げられるほうが居心地が悪い。これまでだって、キースを見下ろすことなんて稀なのだ。そっちのほうをどうにかしてもらえないだろうか、とイワンは思う。
「だから、この格好でプロポーズしたかったんだよ」
「……プ」
 噴き出したわけではない。その先の声が突然出なくなったのだ。
「きみに求婚したいんだ。スカイハイであり続け、だけどキース・グッドマンでもある私と、人生を共にしてほしい」
 なんで今。
 イワンは口を半開きにしたまま、動きを止めた。
 今頃、歓迎会をする店にみんな集まっただろうか。それなのに、自分は今、プロポーズを受けている。それも、半分だけヒーローの格好をしたキースから。
 ここに来るまで、キースとだってもっと普通に会話をしなくては、なんて考えていたのに。
「嫌かな? それとも、きみの年齢ではまだ早いって思っているのかもしれな、い…けど……」
 言い募るキースの言葉が掠れて消えた。思わず、キースは立ち上がる。
「――そんなに、驚かせたなんて…すまなかった……」
 目の前で立ち尽くしたまま、イワンは見開いた目からぽたぽたと涙をこぼしているのだった。
 イワンは自分が泣いているとは思わなかった。キースの驚いた顔を目にして、しかもそれが涙で上手く映らないのに気づいて、ようやく自分の変化に思い至った。
 キースは腕を伸ばそうとして、邪魔な存在に思い至る。真っ赤な薔薇の花束だ。奮発して用意したものの、恋人を抱きしめるのには非常に邪魔だ。愛する人が泣いているのに、抱きしめないなんて選択肢はありえない。
 とにかくそれをイワンとの間から退けようとした。つまり、床に落としてしまおうと考えた。
 しかし、その手から花束が離れることはなかった。
「す…捨てないでくださ……」
「イワンくん!」
「気持ち悪い反応しかできなくて…でも、す、捨てないでください……花も、あの、僕も……」
「馬鹿な! さっき見ていただろう? 私が跪いて、きみに結婚の許しを乞うたんだよ?!」
 イワンは深呼吸をした。息を吸うと、鼻が盛大にズズッと鳴る。
「じゃあ、地面に置くのはやめにして、あそこのテーブルに置くよ。とにかく、返事はともかく泣いているきみを抱きしめたいんだ。それだけでも許してくれる?」
「……先に、鼻を噛み」
「そんなのはあと」
 ライアンの話では忘れ物が置きっぱなしになっているはずのテーブルに、キースは小走りで花束を置きにいった。そして、足早に戻ってくるとイワンをきつく抱きしめる。
 ヒーロースーツの硬質な素材が顔や首筋に当たって少しばかり痛い。でも、そんな文句を言う気はイワンにはなかった。
「こんな格好でこんなところで待ち伏せをして、逆効果だったかな」
 キースが声を落としてつぶやく。
「ヒーローとしても、普通の人間としても、きみに想いを伝えたかったものだから、それで」
 それで、そんな格好なのか。イワンは理解できたものの、ずるずると垂れそうな鼻水のせいできちんと返事ができない。
「それに、既婚者の知り合い一ダースばかりに、どういうタイミングで結婚を決めたかと尋ねたら、みんな口を揃えて『そんなものは勢いだ』と言うものだから」
「……ダイガーざんも?」
「うん、ワイルドくんも、うちのCEOもね!」
 イワンは少し笑った。それから、ゆっくりと体を離す。
「ぢょっど…本当に、鼻噛んでぎまず」
 トイレから戻ると、キースは休憩用のベンチに腰を下ろしていた。花束を膝に載せて。
 イワンは慌ててその手を取って立ち上がらせる。だって、それはいつかの彼女に会えなかった頃の寂しい夜にしていたポーズだったから。
「イワンくん?」
「じゃあ、あの…僕も、勢いで返事しちゃいます」
 俯いたイワンがそう切り出すと、キースはものの見事に慌て出した。 
「え?! えええっ?! いや、何なら私は幾らでも待つよ!!」
「待たないでいいです。もう、OKしますから」
「そうだ、わかるよ。きみは慎重な人で、それがきみの美徳でもあるのに私ときたら……えっ?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「い、いいのかい?!」
「いいです。だから、これ…僕がもらうんですよね?」
 力が抜けて、床に花束を落としそうなキースの手から、イワンは数え切れないほどの大輪の薔薇を受け取った。
「勿論だ! これはきみのものだよ! そ、それから私自身もね!」
「はは…すごい」
 どう振舞っていいか決めかね、微妙に間の抜けた空気が漂う中、イワンの携帯電話が鳴った。メールの着信を知らせてくる。
 送信者はネイサンで、『アンタたち二人は今日の歓迎会は免除してあげる』とあった。
「『ライアンちゃんも、主役でもないのにデカイ花束抱えて来ないでいいですって言ってるわよ』って。え? どうしてその名前が」
「元はといえば、ライアンくんにこの花束を見られてしまってね」
「ああ…それは……」
 オレにくれるんですか、と訊かれ、そこでようやくキースは今日がライアンの歓迎会だと思い出したそうだ。そのうちにネイサンもやって来て、それじゃあどうにかしてプロポーズをしちゃいなさい、という話になったらしい。
 付き合っていることくらいは何となく知られていたかもしれないが、ここまでしっかり知られていると思うと、イワン的には何だか気が重い。
「ところで、僕がこの部屋に入ってくるまで、どうして電気が消えてたんですか?」
 イワンは訊いた。単純な疑問だ。センサーが人間がいるかどうかを感知して照明をつけるはずだ。
「ああ。センサーは足元のほうについているからね。ふわふわ浮かんでいればいいんだ。三分くらいで電気は消えるよ」
「う、かんで…って……」
「きみを驚かせたくて。その、やりすぎだったみたいだけど」
「そのスーツも私用で使っちゃマズイですよ。このへんに鼻水ついたし」
「今はNEXTを使わなくても宙に浮かびそうだよ。幸せでね」
「それ、会社に戻さなくても大丈夫なんですか?」
 赤い目をしばたきながらそう質問するイワンは照れ隠しもあるのかもしれない。
「向こうにマスクもあるよ。花束ときみを抱いて、部屋まで帰ろうかな」
 おどけてキースが提案する。イワンは笑った。
 そんなことをしたら、真っ赤な薔薇の花びらがシュテルンビルトの空から降ってくることになるかもしれない。
 甘ったるいお伽噺のラストシーンみたいだ。
 イワンはどんな顔をしていいかわからなくなって、両手で抱えた薔薇の花の中に顔をうずめた。


END

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Posted on 2013/11/06 Wed. 17:37 [edit]

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