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空折 「 Humming in the Morning 」 

できあがってる空折。
年の差カプなエピソードを考えたのに、結局「ワンコ系カレシ」にしかならないのはなぜ。おしーえてーおじいさんー♪




Humming in the Morning


 キースの住まいは湾に面したビルの最上階にある。
 階、という呼び方は正確ではないかもしれない。いわゆるペントハウスというものなのだ。
 屋上に設けられた、テラスつきの見晴しが良くて開放的な瀟洒な家。
 イワンはそれを知ったとき、堅実そうな性格かと思っていたが結構ハデなことも好きなのかな、と思った。しかし、それは本人の好みというよりヒーロー業を優先させた結果だったらしい。
 このペントハウスはポセイドンラインの持ち物となっているらしかった。海を見下ろす、空に近い部屋。片側は海で、周囲にはそのビルより高い建物がない。
 つまり、その部屋なら、緊急事態が起きてしまっても文字通り、部屋から直接飛んで出て行くことが可能になっている。
 いつでも『スカイハイ』になることができる家、ということだ。
 その話をしてくれたキースの目の前で、イワンは気の毒そうな表情をしてしまったらしい。
「だけどね」とキースは笑って続けた。
「だけど、見晴らしがいいことは事実だよ。目を覚ますと、この街で一番かもしれない景色が目に飛び込んでくる。夜、帰ってきたときもきれいな夜景が出迎えてくれる。やっぱり心が和むよ」
「そうですね。確かに、それは」
 イワンも同意した。
「それに、私の好きな人がとっても喜んでくれる。ここからの眺めを」
「……それって」
 そこまでつぶやいて言葉に詰まってしまうイワンを、キースはにこにこして待っている。
「あの、それ、僕の…こと、ですか」
「もちろんそうだよ!」
 ヒーロースーツなんて着ていないのに、キースはスカイハイのような大きく両手を掲げるポーズを取った。
「君がはじめてここに来てくれたとき、すごいすごいって窓から窓に渡っていくみたいにして、いつ景色に飽きてくれるんだろう、どこで抱きしめたらいいかと頭を悩ませたっけ」
「う……。そんなにバカみたいにはしゃいでましたっけ……?」
「いや、バカだなんて思わなかった。とても可愛かったから」
「あ……はい、なんか、すいません……」
 ごく真面目なキースの応えに、イワンは肩を落とす。
「すまなくなんかないさ。こうやって、君がこの部屋を気に入って、ここでちょくちょく過ごしてくれるようになったんだから、眺めのいい部屋でよかったと思うよ」
「それは、ちょっと…違うっていうか」
 イワンはほんの少し唇を尖らせる。「うん?」と聞き返された。
「別に、この部屋じゃなくても…いいです……上の方でも、地下でも……キースさんの、いるところなら……」
 きらきらと目を輝かせ始めるキースを見て、イワンは付け加えた。
「あ、あと、ジョンもいてくれたら」
 キースの腕が伸ばされる。
 笑顔のまま抱きすくめられて、首筋にやわらかくキスされる。
 イワンが天井を見つめて、どうしようかな、というような顔をしているとキースが甘える口調で言った。
「このあと、夜景も見て行ってくれる? よく晴れて雲もないから、きっときれいだよ」
 イタズラを思いついたような表情をイワンは浮かべて応える。
「……朝日が昇りはじめた海、も好きですけど」
「趣味が合うね」
 嬉しそうな笑みが弾けて。我慢できずに声をあげて笑い合って。


 それが、昨日の出来事で。
 朝日どころか、もういまは陽も高い。
 何時だろうとイワンは目をこする。
 壁の時計を見ようと寝返りを打ったら、くぅぅと胃が空腹を訴える声をあげた。
 手を伸ばしてシーツを撫でる。隣の空間はひんやりとした温度を伝えてきた。この部屋の主はとっくにベッドを出たあとらしい。
 イワンはのろのろと起き上がった。
 大きな窓の向こうを眺める。今日もいい天気だ。
 青い海に青い空。ところどころに浮かぶ千切ったような白い雲。こんな日には凶悪な事件なんて誰も起こさないでほしいと心から願う。
 洗面所に寄ってからリビングを通り抜けてキッチンへ。
 キッチンの入り口でジョンが顔をあげて、尻尾を振って挨拶してくれる。
 イワンもそのふわふわとした金色の体毛を撫でて挨拶を返す。
「おはよう、ジョン。ああ、早くもない、かな」
 キッチンに立っていた長身の影が振り向く。キッチンの窓も大きくて、そこから差し込む光の中でブロンドの髪がきらきらして見える。
「やあ、おはよう!」
 いつでもこの人の笑顔は爽やかすぎて、イワンはちょっとたじろぎそうになる。つい数時間前まで、あんなことをしてたのに……照れるあまり、またベッドルームに後退してシーツの間に隠れたくなってしまう自分のほうがおかしいのだろうか。
「おはようございます。すいません、いつまでも寝てて」
「いや、タイミングぴったりだよ。いま朝食ができるところだ」
「あ、コーヒーくらい淹れます」
「ありがとう」
 ミルでコーヒー豆を挽き終えたところだったようだ。ドリッパーにペーパーフィルターをセットして、そこに挽いた豆を入れる。ケトルは火から下して少し経っているらしく、細い注ぎ口からゆっくりと湯気を吐き出している。
 ドリッパーの縁から、湯を注ぐ。ケトルを一周させると、コーヒー豆を蒸らすようしばらく手を止める。少しすると、コーヒーのいい香りが漂いはじめる。
 トーストしているバゲットの焼き加減を見ていたキースがこちらに顔を向けたのがわかった。
「上手だね」
「え、コーヒー…いつも、こう、ですよね?」
 どうせなら、と休日の朝は豆を挽くところからコーヒーを楽しむようになって。(どうやらキースは一人で摂る朝食にはインスタントのコーヒーを利用しているらしい。大手メーカーのロゴ入りの瓶がある。)
 それから、ネットで調べたりカフェのマスターに聞いてみたりした淹れ方をやってみるようになって。
 いまさら褒めてもらえるの、という口調のイワンに、キースは笑った。くすぐったそうな笑い方で。
「歌、だよ」
「歌?」
「いま、ハミングしていたよ。イワンくんは」
「え? ホントですか?」
 聞き返しながら、そうかもしれないと思う。CMで耳に馴染んだ明るい曲。あれをいま、脳内で再生していた。思わず鼻歌を歌っていたかもしれない。
「懐かしいな。よく知ってるね」
 ドリッパーの縁から湯を細く注ぐ作業を再開しながら、イワンは聞き返す。
「懐かしい、んですか?」
「私が子供の頃に流行ったんだ」
「へぇ。いま、CMで使われてますよ。インテリアショップの、かな」
 朝のまぶしい陽射しの中で女性が目を覚ます。彼女が起き上がってそこを去ると、まだ居残っているカメラに映るベッドやファブリックの説明が画面に現れる。そして彼女は、白を基調とした洗面所を抜けて(また彼女が去ると画面には商品説明)、木目の家具が美しい落ち着いた雰囲気のリビングを素通りして、今度はビタミンカラーで彩られたキッチンへ。
 後ろ姿しか見えないが、キッチンに立つ恋人が振り向きそうになったところで彼女は彼に近づいて行く。寄り添った二人はキスをしているのかもしれない。カメラは二人を離れ、食卓の上へ、そして窓へ。
 愛のある暮らしを作ろう、というコピーが現れてCMは終わる。
 今朝の自分の行動とCMの中のカメラワークとが重なって見えたのかもしれない、とイワンは考えた。
「CMでかかっているのはインストゥルメンタルなのかな」とキースが訊く。
「歌詞は、聞こえなかったですね。たぶん」
「そう。子供の頃に親の前でうっかり歌うとひどく怒られたよ」
「え?」
 焼きあがったバケットを皿に乗せながら、キースは小さな声で歌いだした。
 優しい声だ。
 テーブルに皿を運びながらなので、声が少し遠ざかったりする。
 歌を歌っているところなんてはじめて見るかもしれない、とイワンはちょっと頬を緩ませた。
 けれど同じサビを二度繰り返されると、ようやく歌詞に意識がいく。

 Let's make love
 In the heat … of the day … and night, night, night …
 Making love … in the bed …… on the rug …… at the door …… in the tub …… On the kitchen floor
 Wherever it feels good … Let's make love

 愛し合おう、真っ昼間から、そして夜も…
 ベッドで ラグの上で ドアのところで バスタブのなかで キッチンの床で…
 気持ちよければどこででも――さあ、愛し合おう

「……っ」
 確かにそれは。
 子どもが歌っているのを見つけたら、親が叱るような歌だ。
 こんなに優しげなメロディーなのに、歌詞の内容は大人にしか理解できないようなもので、そのギャップにびっくりする。
 そしてCMの演出も理解できた。
 映像の中の女性は、ベッドから降りて、ラグを踏みドアをくぐり、バスルームを通り過ぎてキッチンに立つ恋人にキスをするのだった。聞えてはいない、歌詞をなぞるように。
 二人の愛の暮らしを辿るように。
「卵もパンも焼けた。コーヒーもできたね」
 イタズラを仕掛けるような表情になって、キースは言う。
「歌詞は知らなかったのかな、残念だ」
「残念、って」
 マグカップを取り出そうとサイドボードに伸ばしたイワンの手をキースの手が包む。
「誘ってくれてるのかと勘違いしそうになったから」
 う、とイワンは言葉に詰まる。
 その間に、先にマグカップを手に取ったキースが、それをひょいと上に持ち上げる。身長ではイワンは敵わないので、カップを再びサイドボードにしまわれても手出しできない。
「……せっかくできたのに、冷めちゃいます」
「また作れるよ」
「食べ物を無駄にしたらダメです。あと……お腹空いたんだけどなぁ」
 うーん、とわざとらしく悩んでみせてから、キースは「それもそうだ」とつぶやいた。
「じゃあ、先に朝食にしよう」
「はい、……って、先にって何ですか、先にって」
 キースはコーヒーをカップに注ぎながら、フンフン、と例のCMソングをハミングしている。まるで、放送時間を待ちきれない子供がアニメの主題歌を歌いだしたみたいに。
 噴き出しかけて、イワンは窓の外に目をやった。
 青い海に青い空。ところどころに浮かぶ千切ったような白い雲。こんなすばらしい空の下ではヒーローの力なんて必要にならないといい。
 真っ昼間から愛し合っても、どこからも邪魔なんて入らないといい。
「食事のときは歌は禁止ですよ」
 笑いをこらえながら、イワンはダイニングテーブルのイスを引いた。


《 E N D 》


 ・ ・ ・ ・ ・


 最近お気に入りのFourplayのアルバム「Heartfelt」から「Let's make love」で小話。
 歌詞カードを見るまでこんなえっちぃ内容だと思わせない(…)爽やか曲です。
 ほんとにCMで使ってほすぃ!
 グ/ラ/ミ/ー/賞?獲ったことあるバンドですが、流行ったことはない曲だと思います(笑

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Posted on 2012/01/17 Tue. 23:56 [edit]

category: SS(空折)

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