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空/折 「Treasure hunting !!」 

さてさて、週末のスパーク8が近づいて参りました。
(そして台風も……ひぇぇ…)

今回、スパーク8内にて開催の空/折プチオンリー「PRIVATE FOCUS」に参加、また、プチオンリー開催記念のアンソロジーにもお招きいただき、寄稿しております。
(詳しくは → こちらへ。)

何よ、また告知~?(ネイサン風に)ってカンジでしょうが、
考えてみたら諸事情でイベントへ行けない方もいるはず。
普通にSSも更新しようではありませんか! (・∀・)b

実は、アンソロジー原稿を書くにあたって、草稿段階で幾つか主催さんにお見せして
「じゃあ…これ!」と決めてもらったものを完成させて寄稿したのですが、
その、選ばれなかったほうがこちらです(笑)。

……ということは、アンソロジー原稿はこれより面白いはずです(笑)。
というか、これは空/折なんですけど、ちょっと特殊かもしれません。

あんまり煽るのもアレなんで、まぁどうぞ!


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


Treasure hunting !!



 イワンが目を覚ますと、部屋には眩しい光が満ちていた。
 遅刻だ、という思考が反射的に立ち上がり、今日の午前中はオフだったと気づいてほっと息を吐く。
「ま…ぶしぃ」
 そう呻いてまた瞼を下ろしてしまう。
 それにしても今は何時だろう。
 枕元にあるはずの目覚まし時計を取ろうと腕を上げると、手の甲に何かが触れた。
 プラスチックで出来た時計の手触りではない。紙のような…その向こうにはたぶん木か合板らしき感触がある。
「あ!」
 イワンは目を見開くのと同時にがばりと跳ね起きた。斜めになっていた毛布が胸の上から滑り落ちる。
 体の下でかすかにスプリングの鳴る音。普段聞くことはない音だ。自宅では畳の上に布団を敷いているからだ。
 ベッドの上にいる。
 それが誰のベッドで、なぜ自分がその中で毛布にくるまっていたかを思い出し、イワンは慌てた。
「爆睡とか…ありえない……」
 頭を抱えそうになりながらもさっき手に触れた紙の感触が気になって振り返る。
 ベッドのヘッドボードに手のひらより一回り小さなメモが貼りつけられていた。それを剥がす。
『おはよう! 最初にサイドテーブルのライトスタンドの下を見て!』
 慌てて書いたと思われる斜めになった文字。ファンへ贈る丁寧なサインとは違うが、のびのびとした元気のよさは共通している。
 イワンがまだその中にいる、ベッドの持ち主の文字だ。
「……おはようございます」
 相手に届くはずがないのに小さな声で挨拶してみたりする。
 急に心臓がどきどきしはじめて、イワンは黄色い正方形のメモを見下ろしながら大きく深呼吸をした。
 そろそろと首をサイドテーブルへ向ける。スタンドの台座を重しがわりにして、今度は折り畳んだメモがあった。なぜだか辺りを見回しながら、メモを開く。
『おはよう、イワンくん!
 まずは謝らなくては。朝の挨拶もできなくて申し訳ない。
 よく眠っているきみを起こせなくて、
 こっそり出掛けてしまうことを許してほしい。』
「そんなの、いいのに」
 つぶやきながらメモを読み進める。
『ただし、おはようのキスはきみの額に贈らせてもらったよ。』
「う、っわ」
 イワンはおかしな声をあげて、どうやらキスを受けていたらしい額にぺちんと平手を打ちつけた。読みかけのメモはひらりと膝の上に落ちる。
「……反則だよ、この人」
 口から出た言葉は抗議じみているが、唇のほうは笑いを堪えるようにむずむずと波打った。
 ふっと息をついてからメモの続きに戻る。
『昼過ぎには一度戻れそうだから、そのときまだきみが
 そこにいてくれたら、またあとで直接言うつもりだけれど、
――昨日は素敵な夜を、そして今日は幸せな朝をどうもありがとう。』
「だから反則だって……」
 イワンはメモを顔に押し当てた。
 赤味を増した顔を上げて、文章から少し離れて、紙片の右端に置かれた単語を眺める。
『K-E-I-T-H』……キース。これを書いた人の、そしてベッドの持ち主の名前だ。スカイハイとしてのサインなら何度も見たことがあるが、キースの署名を見るのははじめてかもしれない。
 署名に唇をそっと当てる。もちろんそれは紙の感触しかしないが、イワンは自分のとった行動に照れて、勢いよく枕に突っ伏した。


 昨夜は、翌朝をキースのベッドの中で迎えるとは思っていなかった。
 仕事の打ち合わせを終えたイワンは、パトロールから帰ったキースとほんの少し顔を合わせるだけのつもりだった。
 以前、話題に出たCDを借りにキースの部屋に出向いたのだ。
 トレーニングセンターのロッカールームにでも置いておけば用は済むが、それでは詰まらない。
 少しだけでも時間を作らなければ、多忙な二人は直接会う機会を持てなくなってしまう。
 これまでは、それでもよかった。密かに想いを寄せているうちは。
 トレーニングセンターで一緒になれれば嬉しかったし、ジャスティス・タワーの前ですれ違えればラッキーだと思えた。
 けれど、お互いがお互いをを好きだと気づいてしまえば、その想いを告げあってしまえば、そんなことでは物足りない。
 といっても、気持ちを伝えあった日のあとから、まだまともなデートもできていなかった。
 いつ頃からキースが意識してくれていたか知らないが、イワンは休日が揃った二人でジョンを連れて半日ぶらぶらと買い物を楽しんだことを思い出した。あのデートとも言えないような時間がひどく貴重で、ぼんやりと過ごしてしまって勿体なかったとすら思えてしまう。
 イワンがドアチャイムを鳴らせば、部屋着に着替えたキースが顔を出した。
「せっかくだから上がって、お茶でもどうかな」というキースの申し入れにイワンはうなずいた。
 ソファの隣に腰を下ろして紅茶を啜りながら、今貸してもらったばかりのCDをかけてみることにした。
 何がきっかけだったのかはよくわからない。
 昨日や今日身近で起きたことを話して、笑ったりしていたはずだ。
 ふいに言葉が途切れて、視線がぶつかって。
 アルバムの二曲目が終わる頃には二人の唇が重なっていた。
 最初は啄ばむように。それが何度も繰り返されて、深くなって。
「……これ、退けようか」
 キースの声がして、イワンは自分が両手で包んだままのマグカップの存在を思い出す。
 苦笑いをしながらテーブルの上にカップを置いて、キースの伸ばす腕の中へ戻った。
 いつの間にか部屋から音楽は消えていた。
 イワンは演奏を終えたCDをデッキから取り出して、家に帰る気分ではなくなっていた。キースも同じだった。
 だから、二人してバスルームを経由して寝室へ向かった。
 恋人としてのデートもしないうちにそんなことになるとは思わなかった。でも、特別ためらいも起こらなかった。
 何もかもスムースにいったわけでは勿論ないけれど、キースのメモにあったとおり素敵な夜だったことにはイワンも同意したい。
 眠りにつく前に、キースから明日は朝早くから仕事なのだと申し訳なさそうに告げられた。
「だけど途中で止められなくて…ごめん」とおかしな謝り方をされて、イワンはキースの肩口に顔を埋めてくぐもった笑い声をあげた。
 そんなことを思い出しながら、イワンはぼんやりと白い天井を見上げる。
 何時間くらい眠っていたのだろう。
 視線を壁に移せば、細く開いた窓から吹き込む風にカーテンが揺れている。
「あれ…」
 枕元のカーテンにも『おはよう! サイドテーブルのライトスタンドの下のメモを読んで!』と書かれた紙片がテープで貼られていた。起きたら最初に窓を開けるかもしれないと思ったのだろう。
 朝の貴重な時間を使わせて申し訳ないと思う反面、何となくキースも楽しんでやっていたような気もする。
 イワンはベッドから降りた。手を伸ばして紙片を剥がす。
 壁にかかった時計を見上げたら、普段ならとっくに仕事をしている時間帯だった。まだぎりぎり午前中のうちだけれど、ダラダラしているうちに戻ってきたキースに会うのは避けたい。昼過ぎに戻る、と書いてあったけれど、漠然としていて何時頃なのか見当がつかない。
 借り物のTシャツとハーフパンツはぶかぶかで、それが結構気恥ずかしい。
 昨夜イワンが着てきた服はわかりやすくハンガーにかけてくれていた。そそくさと着替える。
 ドアのノブにもメモが貼られている。
『ダイニングで朝食をどうぞ!』
 イワンの唇から小さな笑いが漏れた。
 今まで見つけた紙片を重ねて携えてゆくことにする。
 子どもの頃に兄弟たちとやった、宝物を探すゲームみたいだ。
 電灯のシェードの中にあるメモを見つけると、今度は本棚の隙間に案内され、鉢植えの裏やドアの上を覗いて謎々を解いていく。
 キースのメモはわかるように置いてくれているのだけど。
 廊下に出ると壁にはまたまたメモだ。『ダイニングはこちら』の文字と矢印が書かれている。「知ってますけど」とイワンは笑みを浮かべた。これはもうキースも面白がっていたとしか思えない。
 その少し先の壁には『CAUTION』と『ジョンはリビングにいるよ』とのメモがある。そりゃあ突然飛びつかれたら驚くかもしれないけど、『注意』ってほどのことではない気がする。
 ジョンの顔を見に行ったほうがいいかなと思ったが、ちょうど腹の虫が鳴いたので先に朝食をいただくことにする。
 テーブルにはラップのかかった朝食の皿が載っていた。皿の隣にメモを見つけて、イワンはわくわくとそれを開く。
『ジョンは朝食を済ませたから彼の食事の心配はいらないよ。』
 その文の下に付け足したらしき少し小さな字。
『ジョンの食事は朝と晩に二回なんだ。』
 さらに『二回』の語から矢印が引っ張られていた。
『大型犬は一歳半頃から一日に二回の食事にするのがいいらしい。』
 そのあとに『それは』と理由をしたためようとして、ぐしゃぐしゃと毛玉を描くようにペンを走らせてその文字を消してあった。幾ら何でも蛇足に過ぎると気づいたらしい。豆知識を読んでみたかったような気もする。いや、本人から今度聞いてみたらいいのだ。ジョンのことになると饒舌になる人だし。走り書きのメモでも同じだなんて知らなかったけれど。
 朝食はすっかり冷めてしまっていたが、気にならなかった。さっきまでに見つけたメモを何度も読み返してしまう。
 キースが朝の支度をしながら、メモを書いては部屋のあちこちに貼っていったのだ。これも言っておこう、これも言わなくては…とメモを増やしながら。
 そっとライトスタンドを持ち上げてメモを挟み、最初にスタンドの下を見るようにメモをあちこちに貼って、それからたぶんイワンの寝顔を眺めて。
 想像しただけでくすぐったくて堪らなくなる。イワンは緩んだ頬はそのまま、食べ終えた食器を片付けた。
 そういえばキースとはメールのやりとりはしていたが、手紙はもらったことも出したこともない。
 ちょっとピンと来ないが、もう数ヶ月したら誕生日や記念日にプレゼントにカードを添えて贈ったりするべきなのかもしれない。
 最初にもらったキースからの直筆のメッセージが、そういう堅苦しくて気取ったカードの類ではなくて、このちょっと慌しく書かれたメモで良かった気がした。
 宝探しのゲームのようだと思っていたけれど、このメモ自体が思いがけない宝物のようにも感じた。今朝の、ベッドの中で感じた幸せなのにのたうち回りたいような気持だとか、わくわくしたり、くすぐったい気分も全部。
 ジョンに会いにリビングへ行く。イワンの気配か匂いでも感じていたのかジョンはあまり驚いた様子を見せなかった。
 シェルフの上に借りようとしていたCDが積んだままになっていた。その隣のオーディオプレイヤーは電源が入ったままだ。イワンの指がイジェクト・ボタンを押すと、昨夜途中までしか聴いてもらえなかったCDが姿を見せた。
 頬に血がのぼってくるのがわかる。恥ずかしいのともバツが悪いのとも違う。これをもう一度聴くのはちょっと、ほんのちょっとだけれど勇気が要る。
 CDのケースの裏面を眺めると一時間少々の収録時間らしい。今からこれをかけて、聴き終えた頃にここを出るくらいの時間になりそうだ。それまでにキースは帰ってくるだろうか。
 イワンはオーディオプレイヤーを操作しようとしてふっと顔を上げ、シェルフの上のペン立てからペンを一本抜き取った。
 廊下に出て、まだ壁に貼られたままの『CAUTION』と『ジョンはリビングにいるよ』のメモに別の色のペンを走らせる。
『CAUTION』は二本線で消して『HURRY UP!』に。
『ジョン』のあとに『&イワン』を付け足して『ジョン&イワンはリビングに』の案内に変えた。
 キースに会えそうもなかったら、このメモは剥がして持って帰ればいい。
 リビングに戻り、ディスクをプレイヤーの中に戻した。再生ボタンを押す。
 ソファに腰を下ろして、昨夜一度聴いたはずの、まったく記憶に残っていない音楽を聴いた。寄ってきたジョンを撫でてやりながら。
 アルバムの二曲目は無事に終わり、三曲目のイントロが流れてきた。イワンの膝に顎を乗せていたジョンがパッと顔を上げる。
 イワンもリビングのドアに顔を向けた。廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。ジョンは嬉しそうに尻尾を振り始めた。
 イワンは頬を緩める。廊下のメモに書いたとおり、本当に大急ぎで来てくれなくてもいいのに。それから、またこのCDはこのあたりまでしか聴いてもらえないみたいだな、と思って。
 ドアへ駆け寄るジョンを追って、イワンもソファから立ち上がった。


END


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


特殊、というのはつまり「空/折」を謳っているのにキースさんが出てこない(回想でしか)のです。
寄稿したほうは二人で出てきます(笑)し、甘みも増してます!
では、皆さま台風には気をつけて楽しい週末を過ごしましょう!!



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Posted on 2013/10/23 Wed. 05:50 [edit]

category: SS(空折)

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