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スパーク8新刊 R18 「それは未来を引き寄せる魔法」 

2013/10/27(日)の新刊サンプルです。

『それは未来を引き寄せる魔法』 R18・オフセ・60p。
soremirai

ヒーローのキース×普通の高校生イワンの夏休み、という半パラレル的なお話です。
これを書いている間がまだ暑かったのと、夏を惜しんでいたらしくて(笑)…。
薔薇・龍・砂は普通の学生やってて、ちょこっと出てきます。

けっこう日常色が強め、でしょうか。
くっついたあとにいちゃいちゃしているシーンはありますが、ERO度は低いです。(…たぶん)


また、スパーク8内にて開催の空/折プチオンリー「PRIVATE FOCUS」に参加、
シールラリーにも参加いたします。

また、プチオンリー開催記念のアンソロジーにもお招きいただき、寄稿しております。
詳しくは → こちら




本文サンプルは「続きを読む」に。
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


『それは未来を引き寄せる魔法』 ――サンプル――


(第一章の冒頭です。)


 1.


「どうせゴロゴロしているんだったら、ひとつ仕事を頼まれてもらえないかな」
「仕事?」
 イワンは顔を上げた。陽射しの中で。まだ日陰の中にいるキースを眺める。
 夏を主張しはじめた陽射しの中では目を開けていることが難しくて、キースの立っている日陰は別の世界のようにも思えた。


 時間を少しだけ巻き戻そう。
 ハイスクールのカフェテリア。その隅の席にイワンは座っていた。
 昼休みも半ばを過ぎたが、中庭には太陽が燦々と降り注いでいる。色の褪せかけたパラソルの下、イワンの他に女子学生も二人腰を下ろしていた。
 男子が一人に女子が二人というと、どちらかの女の子はガールフレンドなのかと勘繰る向きもありそうだが、この三人に関してはそんな雰囲気は微塵もない。クラスメイトの誰に訊いても同じ答えが返ってくるだろう。
 イワンの向かいに座っているカリーナは、去年のホームカミング・デイでクイーンに選ばれたという美少女だ。残念ながらその後に部内でのいざこざで退部してしまったが、少し前まではチアリーディング部の押しも押されぬエースだった。今でも校内の人気者だ。
 その隣の席のパオリンは、アジア系だということを差し引いても華奢で背も低く、ミドルスクールから迷い込んできてしまったようにも見える。実際に彼女はイワンたちの二つ歳下なのだが、飛び級制度を利用して現在はほとんどの科目でイワンたちと同じ学年の授業を受けていた。
 元チアリーダーの美少女と学校一の秀才の女の子に向きあって座っているイワンはといえば、自他共に認める特に取り柄のない少年だった。
 向かい合って昼食をとるようになってから少しして、カリーナに突然『あんたって顔は結構いいのよね』とつぶやかれたことが一度だけあるが、そんなふうに褒められたのはその一度きりで、それ以来蒸し返されたこともなかった。成績は中の上、家も金持ちでもなければ貧乏でもないし、得意な何かがあるわけでもない。不思議な取り合わせの三人だ。
「ねえ、そのゼリー食べないの?」
 パオリンが指差したのはイワンがランチボックスに戻そうとしていたデザートのひとつだった。
「ああ、うん。あんまりこれ好きじゃないんだ」
 それなのに、母親には通じないようで時々ランチボックスの隅にこれがつっこんである。
「じゃあボクにちょうだい」
 いいよ、とイワンはゼリーを押しやった。パオリンは頭を使うのにエネルギーを消費してしまうのか、いつ見ても常に何かを口に放り込んでいる。ゼリーを口に運ぶパオリンを眺めながら、これでまた母親は僕がゼリーを食べたと誤解するな、と考えたがもう仕方ない。
 丸いテーブルに五つのチェア。三つに三人が腰を下ろし、一つにはパオリンの持ち物である分厚い専門書が積み上げられていた。
 残りの一つのチェアは空だった。イワンの隣、一番日陰の色が濃い席だ。日に焼けたくないと食事を終えて腕にサンスクリーンを塗り直しているカリーナであれば、あちらの席に移っても良さそうなのに、本人もあとの二人もそれを言い出す気配はなかった。
 まるで誰かのために空けているような空席。イワンはランチボックスに手をかけたままそちらを眺めていた。
「ねえ、夏休みの予定は?」
 もう半月もしたら夏休みだ。カリーナがサンスクリーンをしまいながら尋ねる。ゼリーで口をいっぱいにしたパオリンは、お先にという目でイワンを見た。
「アカデミックキャンプには行くけど。クレジットコースがあるやつ」
 長い夏休みの前半に学業キャンプにさっさと行く学生は多い。クレジット(教科単位)を取得すれば、秋からの新学年でその教科は飛ばして次に進めるのだ。
「部活も特技もないから、それくらいしておかないと」
 とイワンは言ったが、それは進路指導カウンセラーのアドバイスの受け売りだ。秋からは最終学年になり、大学進学を目指すことになる。大学へ行くにはハイスクールの成績はもとより、勉強に取り組む姿勢だとかボランティア活動の実績も加味されるのだ。
「あたしもミュージックキャンプに行くの。あと、ボランティアで子どもたちにピアノを教えるのと、病院で音楽会を開くプログラムにも参加するし」
「音楽漬けだね」
 まぁね、とカリーナは笑う。チアリーディング部を辞めたのは部内で揉めたせいもあるが、将来は音楽の道に進もうと自覚したからでもあるらしい。
「ボクは大学のサマースクールに行くよ。あと、スポーツキャンプも幾つか」
 こちらはイワンたちとはレベルが違う。大学の単位を今のうちに取得してしまおうというのだ。どうやら彼女は大学ではダブルメジャー…専攻学科を複数持つ計画があるらしい。
「大学かぁ…」
 来年の今ごろは大学へ行く準備に追われているのか。寮へ入るための荷造りだとか。あと一年。まったくピンとこない。その前に最終学年での授業と課題をこなさなくてはいけないし、入学資格の試験もある。
「なにその言い方」
 女の子二人はイワンのぼやきに反応して笑った。


(中略)


 自宅の近くの停留所よりひとつ手前で、イワンはバスを降りた。走り去るバスを見送ってから道路を渡る。ガソリンスタンドと、併設されたコンビニエンスストアがあるのだ。甘いものでも食べたかった。
 バスを降りるともう夏を先取りしたような陽射しが首筋に当たる。やけに眩しい。急に外に出たせいだろうか。少し眩んだ視界に、見覚えのある車が映った。
 濃い青のSUV。そう思ったけれど、逆光になっているせいで車の色はよくわからない。
 そうだ、アイスクリームがいい。イワンは店のドアを開けた。
 冷凍庫はレジのすぐ脇だ。小さな店だから、アイスクリームも冷凍食品も同じケースに並んでいる。
 冷凍ケースの前に立った人影が、近づいていくイワンを振り返った。「やあ」と声をかけられ、イワンは無言で軽く顎を引く。その態度がおかしかったらしくて、相手は小さな笑い声を漏らした。
 今のは変だったかもしれない、とイワンも感じた。まるで社長が平社員の前を通りすぎるときみたいな。まぁ、そんな場面はドラマの中でしか見たことはないけど。一応、目上の相手なんだし、「どうも」くらい言えばよかった。
 でも、と隣の笑い止んだ人をイワンは横目で見る。
 この人はどう見ても自分よりは年上なのに、なぜだか目上の相手だという気はしなかった。認識はある。だけど、他の大人たちとは随分雰囲気が違う。
 キース、と名乗ったはずだ。
 私の名前はキース…何とかだよ、って。姓のほうは忘れてしまった。それしか言われなかった。近くに住んでいるとか、この近くで勤めをしているとか、何の仕事をしているとか、何も言わなかった。ただ、名前だけ。
 最初に口をきいたのは、コンビニエンスストアの駐車場だった。停まっていた濃い青のSUVの隣で立ち止まって、チョコレートバーの包み紙を剥いていたら今日みたいに「やあ」と声をかけられたのだ。
 その声のかけ方が、以前からの友達にするみたいだったので、イワンは自分への挨拶だと思えなかった。だから、というのもおかしいけれど、イワンはその人の顔を見上げながらチョコバーを口に押し込んでいた。
「すまないが、きみのすぐ横にあるのは私の車でね」
 そう言われ、自分が運転席のドアのすぐ脇に立っていることにイワンはやっと気がついた。イワンがぼうっと菓子を食べている間、この人は車に乗れなくなる。
「…あ、すみません」
 チョコの詰まった口をもごもごさせながら、どうにかそれだけ言うとイワンは横歩きで車から離れた。
 車と距離をとってもまだチョコバーを咀嚼しているイワンを、車の持ち主は面白がるような顔で眺めていた。すぐに車に乗り込もうとするわけではない。
「新発売?」
「へ?」
「そのチョコバーは、新発売の商品?」
「え…んん…たぶん」
 同じシリーズの商品は子どもの頃からあるが、はじめて見る味だから手に取ったのだ。きっとそうだろう。
「あ、でも、そんなに美味しくないです」
 チョコミント味だとパッケージには書かれていた。ミントの匂いばかりがきつくて、パフはサクサクというよりガサガサしていて舌触りもよくない。
「そうかい? それはいいことを聞いたな」
 ようやく車の脇まで来て、その人は笑った。
「親切にどうもありがとう」
 本当に思いがけない親切に出会ったように笑うと、続けて「私の名前はキースだよ」と言ったのだ。
 ああ、とかへぇ、とかイワンがつぶやいているうちに、うっかり買わないように気をつけるよ、と付け加えたキースと名乗った人は自分の車に乗り込んで去っていった。
 それから何度かこのコンビニエンスストアで顔を合わせるようになった。イワンにしてみれば放課後の、大体同じ時刻だ。大抵は店内の菓子の棚の前で短い会話をする。
 それにしても、高校生のイワンにしてみれば放課後だが、キースというのは何をしている人なのだろうか。普通の勤め人ならまだ仕事をしている時間帯だろうし、夜勤に向かうにしても、夜勤明けだとしても午後の中途半端な時間にブラブラしているのは妙だ。
 多少不思議には思うものの、変質者にもカタギでない商売の人にも見えないし、とりたてて質問してみる気にもならない。ただし、お小遣いを握り締めておやつを買いに来たような顔で菓子類を物色している大人なんて、他に見たことがないというだけだ。
 そんなことを考えながら、イワンは冷凍庫の棚に並んだアイスクリームの上で視線を動かした。ちょっとしたバケツのようなサイズのものは却下だ。フルーツ味のアイスキャンディーにしようか。でも六本入りは多い。家に帰るまでにドロドロに溶けはしないだろうけど。
「どれにする?」
 なぜかキースはイワンに意見を求めてきた。
 チョコバーのことを思い出していたからか、クランチバーのパッケージが目に留まった。中身はただのバニラアイスだが、コーティング部分のチョコレートにキャラメルとプレッツェルのかけらが混じっているらしい。
「うーん、これかなぁ」
「いいね。でも三本入りだ」
 キースはいかにも残念そうな声を出した。
「一本あげましょうか」
 イワンが冷凍庫の扉を開けながらそう言うと「なるほど」とキースの声が返ってくる。
「シェアするのか、頭がいいね。だったら私が買おう」
「あ、どうも」
 冷凍庫からアイスの箱を掴んだキースが、レジへと向かう。三分の二の代金を払うべきかな、とイワンは考えたが、キースは何も言わず店を出ていってしまった。後ろからついていくと、意外と荒っぽく紙箱を開けたキースが、クランチバーを一本イワンに寄越した。
 アイスを受け取り、個包装のビニールを剥きながら日陰に移動する。こんもりと葉を繁らせた木が作った影だ。今度はキースが後からついてくる。
「なんでこっちに来るんですか」
「なんでって」
 反射的に、といった感じに一歩後退して、キースはイワンを見つめ返した。
「きみはそこで食べるのに、私には帰って食べろって言うのかい」
 キースは困ったように眉を下げる。
「帰り着く前にアイスが溶けてしまうよ」
「そんなこと言ってませんよ」
 イワンはアイスの先に齧りつきながら言う。
「こんな小っちゃい日陰に二人で入らなくてもいいでしょうってことです」
 ふぅん、とキースはつぶやいて、きょろきょろと辺りを見回すと別の日陰の中へ入り、足を止めた。イワンの斜め向かいの位置に陣取り、二人してアイスを齧る。
 こんな会話を前にもしたなぁ、と思い出す。あのときは、イワンが『なんでついてくるんだよ』と言われたほうだった。強い口調に首を竦めたら、『怒ってねぇよ』と呆れた声が返ってきて、二人して笑い出した。
 去年の夏。あれはそんなに遠い昔なんかではない。思い出した、と感じた自分自身にイワンはムッとする。
 だから、それをぶつけるようにアイスにかぶりついた。
 八つ当たりの対象にするには軟らかすぎるアイスは、そうと気づいたときには口の中に一杯になっていた。
 普通のクランチバーとさほど変わらない味だけれど、チョコの間に時々キャラメルの甘さが顔を出す。ほんのりプレッツェルの塩味がして、ガツガツ食べた割には美味しかった。
「美味しいね」
「そうですね」
 美味しいが、二つも食べる気がしない。お互いに視線で牽制しあっていたら、ガソリンスタンドに停まった車の中から父親と一緒に小さな男の子が降りてきた。向こうも、アイスをかじっているキースとイワンに気づいて物欲しそうに見ている。
 今だ、というようなつもりでイワンがキースを見ると、心得たとばかりにキースも残りのアイスを箱から出して男の子にチラリと見せた。幸い、彼の父親は車の調子について店員に相談している。男の子はこちらに走ってくると、素早くクランチバーをかっさらっていった。どうやら物陰で慌てて食べるつもりらしい。その必死の様子にイワンは思わず笑ってしまう。お腹でも壊さないといいけど。
 アイスを舐め取ったあとの棒をゴミ箱に捨てると、イワンはこちらもアイスを食べ終えようとしているキースに目を遣る。目が合うと、キースは尋ねた。
「夏休みはどうするの?」
 商品の代金を出したほうがいいかとポケットを探っていたら、全然違う話題になった。
「夏休みかぁ…」
 イワンはつぶやく。まるでぼやくように。
「憂鬱なのかい?」
「別に。キースさんも行きましたか? アカデミックキャンプとか」
「ああ。スポーツの合宿もね。懐かしいな。旅行は?」
「いや、僕はキャンプ以外では寝てると思いますけど」
「寝てる? 夏の予定が、勉強と寝てるだけ?」
 キースはパッと笑顔になった。まるで、とっておきの冗談でも聞いたみたいに。
「おかしいですか」
 そんなに妙だろうか。夏休みって、誰もが問答無用で楽しみにしていなくちゃならないものだろうか。
 夏休みか。カリーナやパオリンと一度くらいは休み中も顔を合わせる気がするけれど、一緒に何かしようと計画を立てる間柄ではない。
「笑ったりしてごめん。学生のときは、そんな感覚だったかもしれないな」
「じゃあ、キースさんの夏休みは?」
「仕事の都合で、遠出はできそうもなくてね。そうだな、ふふ…休みの日は家でのんびりしているかな」
「なぁんだ。一緒じゃないですか」
 この人もあんまり友達がいないのかな、とイワンは考える。大人の休日ってそんなものなんだろうか。それとも盛り上がりに欠ける自分との会話に合わせてくれているのか。気の毒がられているのかもしれないと思うと、自然と視線は自分の爪先に吸い寄せられる。
「ねぇ、どうせゴロゴロしているんだったら、キャンプが終わってから、ひとつ仕事を頼まれてもらえないかな」
「仕事?」
 イワンは顔を上げた。陽射しの中で。まだ日陰に立ったままのキースの顔には薄い笑みが載っている。
「仕事って…アルバイトってことですか?」
「うん、そうだよ」
 日陰の中はスポットライトの逆みたいだ。そこは別の世界みたいにも見える。影の薄くなった足元のほうは陽光と影がまだらになっている。
 そうだ、別の世界の人だ。何をしているかは知らないが、仕事をして自分で稼いでいる大人だ。友達がいてもいなくても、休みを怠惰に過ごしても構わない。
「いいです。そういうの面倒だし。寝て過ごすんで」
「ええ? おおーい、イワンくーん」
 返事なんてしなくても、別に問題なんてない。イワンは振り向かずに、頭の後ろで小さく手を振った。




(以上です。)


(よろしくお願いします!)





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Posted on 2013/10/21 Mon. 00:27 [edit]

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