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空/折 「Especially for you」 


お誕生日をお祝いする話。
某お方のハピバメールにくっつけてお送りしていた(嫌がらせでしかない気が…)ものを、許可を得て掲載です。

そういえばハピバなSS書いたことなかったような…と、これを書いていて気がつきました。


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Especially for you


 トレーニングルームに続く廊下で呼び止められ、キースは振り返った。
「やあ、おはよう」
 キースを呼び止め、普段どおりの明るい笑顔を向けられた相手はイワンだ。
「おはようございます、ええと、あの」
 いつもより緊張を滲ませたイワンが差し出したのは、背中で隠すようにしていた小さなブーケだ。
「これを…私に?」
 イワンは顎を引く。首の筋がつっぱっているようで、油の切れかけたロボットみたいな動きだった。
「お誕生日、だって」
 台詞の後半は立ち消えになった。バイソンさんから聞いたんです、の部分は声にならなかったが、意図は伝わったらしい。
「バースデー・プレゼントかい?! これは嬉しいな!」
 キースは実に嬉しそうにそう言ってくれた。真実、嬉しいものなのだ。ヒーローとして沢山のプレゼントやグリーティングカードを贈られてはいるが、誕生日は明かしていない。だから、ごく親しい人からしか祝われることがない。
 駅前のフラワースタンドで小さなブーケがサービス品になっていたのを、ここに来る途中で見つけたのだ。本当ならもっと大きくて豪華な、贈る相手にふさわしい花束を見繕いたかったが、今日の今日では無理というものだ。それに、出先で大きな花束を貰っても処遇に困るだろうし。それから……
 イワンは口を開けて、すぐに閉じた。
 本当に言いたいのはそんなことではない。
 もちろん、お誕生日おめでとうございます、とすぐにでも言うべきだ。
 それに、いつもありがとうございます、とか。これからも頑張って下さいだとか。
 それから。
 イワンは自分のワークブーツのつま先を眺めた。
 いつ言おうかずっと考えていたことだ。
 誕生日のお祝いついでに打ち明けてはおかしいだろうか。うん、おかしい。でも言いたい。
 お祝いというのは相手を喜ばせることを告げるべきだ。それくらいわかっている。《それ》を言ったら、キースは驚いて混乱するに違いない。それどころか不快に感じたり、怒り出す可能性だってある。
 だけど、こんな機会でもなければ逆にいつ言い出せばいいというんだろうか。ハッピー・バースデイ! ありがとう、嬉しいよ。この人が最高ににこにこしている今しかない気もする。えっ、何だって? 今なら何を聞いてもそんな感じじゃないかな。真顔になる前にジョークです、って誤魔化せる。もうあと数秒の間なら。
 でも、万が一でも、0.000000何パーセントでも、この笑顔を曇らせる可能性がある言動をとりたくない。不愉快な記憶をせっかくの誕生日にリンクさせるなんて嫌だ。
 だって、とイワンは考える。
 だって、自分はこの人が好きなのだ。
 好きです。たったそれだけの言葉だ。一瞬で言い終わる。I love you. たったの三語。キースが何か言う前に、なんてね、と付け加えたらいい。びっくりしましたか、さっきの感激とで相殺にしてください、って。笑って言えばいい。
「……どうかしたの?」
 先に口を開いたのはキースのほうだった。イワンの肩が揺れる。
 早く言わなくちゃ。沈黙をこれ以上ひろげたらダメだ。一秒か二秒で済む。早く、早く。
「キースさん、は」
「うん?」
 間違えた。主語が違う。主語は『僕』のはずだった。『キースさん』は目的語で、そうだけど、いまのを一旦取り消して……
「僕が、好きです」
「……え」
「……」
 違う、違う。全然違う。いや、全然違ったら悲しいけど、そういうことじゃなくて、逆だ。逆です、今の逆に言っちゃったんです。って頭の中で言っててもダメで、口に出さないと伝わらないんだってば。知ってるよそんなこと!
 キースは動きを止めた。イワンの顔を覗き込む。そこに悪戯です、と言わんばかりの笑顔が現れるのを待っているのかもしれないが、そんなものはなかなか訪れなかった。
 イワンもイワンで半開きにした口もそのままに、こちらも動きを止めてしまっていた。頭の中は様々な思考が渦を巻いていたが、脳はその処理に精一杯で体を動かすことまで手が回らないらしい。
 キースの首がゆっくり上下に動いた。フリーズしてしまったイワンの顔と、自分の手の中の小さなブーケをかわるがわる見つめている。
 どれくらいそうしていただろうか。二人は廊下の向こうからやってきた仲間の一人にも気づかないようだった。怪訝な顔になってパオリンはその足を止めている。


「あれは…アレか?」
 奇妙な光景に足を止めた虎徹がつぶやいた。
「あれとかそれとか、単語が思い出せずに指示語ばかり言うようになると脳の老化の始まりですよ」
 十歳以上若い相棒は今日も舌鋒が冴えているようだ。整った顔に不思議そうな表情を浮かべて、廊下の隅に立ち尽くす二人の先輩を眺める。
「スカイハイさんと折紙先輩ですね」
 お疲れ様です、と口元に手のひらを添えたバーナビーが声を掛けたが返事はない。動きもない。こちらに気づいていないのだろうか。
「ほら、何だっけ、そうそう、パフォーマンス! パフォーマンスしてんのか、あいつらは」
「さあ…確かにパントマイムか何かのようにも見えますね。でもなぜそんな練習を」
「そういうんじゃなくてさ、今流行ってるのあるだろ。通りを歩いてるヤツらが全員、いきなり止まったりする」
「ああ、フラッシュ・モブですか」
 バーナビーは唇の端をもたげると、眼鏡の弦に指をかけた。
「モブというのは集団という意味ですよ。二人だけで行うにしては少人数すぎますし、第一、ギャラリーが…僕らが来るまではこちらお一人だったのでは?」
 バーナビーが指したのは、二人が来る前からそこに立ち止まっていたらしいパオリンだった。
 そのパオリンもバディと並んで小首を傾げる。
「うーん…ボクが来たときからあんなだった」
「最初は何やってたんだろうな? 踊ったり歌ったりとかもすんだろ、何とかモブ」
「だから二人だと人数が少なすぎると……」
 バーナビーが言葉を切った。「あっ」という声がギャラリーの三人の口からそれぞれ漏れる。
 大きくひとつうなずいたキースが小声で早口に何かつぶやき、硬直したままのイワンを今度は素早く抱きすくめたのだ。
 小さなブーケが音もなく廊下に落ちる。


 離れた場所に立っている三人の耳には届かなかったが、うなずいたあとでキースはこう言ったのだ。
――『それならこっちもプレゼントってことでいいのかな』
 そして、否定の言葉が返ってくる前にその贈り物に両手を伸ばした。
「……あれだけ?」
「どういう意味があるんでしょう?」
「あんまり面白くないね」
 今日誕生日を迎えたキースがとっておきのバースデープレゼントを両腕に抱きしめているとは知らず、ギャラリーの面々は不可解だとか詰まらないとかつぶやいていた。


END


May your birthday be filled with excitement,joy and laughter!! Happy Birthday!!


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Posted on 2013/10/15 Tue. 00:43 [edit]

category: SS(空折)

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