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空/折 「HEROES' big boobs!!」 


某所で一つのテーマを元に競作しましょう、という話に。
クジ引きで決まったテーマが《雄っぱい》だったのです。わーお。
男性の大胸筋にフィーチャーしたor魅力を感じる作品に対しての言葉らしいんですが…。

というワケで書いてみました。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


HEROES' big boobs!!


「イワンくん? 何か手伝おうか?」
 キッチンの入り口でキースが声をかけると、イワンが「大丈夫です」と振り返った。
「もう注ぐだけなので。ありがとうございます」
「そうかい? じゃあ先にリビングに行ってるよ」
 キースは鼻唄混じりにリビングへと向かった。
 ソファに腰を下ろそうとして、Tシャツの裾に泥ハネを見つけ顔をしかめる。ついさっきまでベランダを久しぶりに掃除していたのだ。
 本腰を入れて掃除を始めようとしたキースに、イワンは『清掃の業者さんに頼んでるんじゃないんですか?』と小首を傾げた。たまにはいいかと思って、と笑うキースに今度はハッとした顔になって『僕が仕事を片付けておけなかったせいですよね』と肩を落とす。気にしないでくれ、とキースは微笑んだ。キースの部屋に遊びに来たイワンだったが、雑誌に載せるコラムが昨日のうちに書き終えられなかったとパソコンを持参していた。
『お願いされてた分量を間違えちゃってて。あとほんのちょっとなんです』とイワンは困り顔で言った。だから、キースはそれならたまには気合を入れて掃除をしてみることにしたのだ。
 発言した『ほんのちょっと』をイワンは実行した。メールで原稿を送り終えた、とイワンがベランダに顔を出したときには、キースはかなり掃除に夢中になってしまっていたくらいだ。
 逆に、あと三十分したら切り上げることをキースが約束し、イワンはその頃にはお茶を淹れておきますね、と引っ込んだ。
 二人で暮らしているわけでも、家庭を築いているわけでもないのに、今の一連のやりとりはその予行練習のような、そんな気分になってしまってキースは口元を綻ばせた。
 こんなことで浮かれてはいけないだろうか。
 リビングのローテーブルにはイワンのノートパソコンがあった。電源は入ったままで、インターネットを覗いていたらしい。
 キースにも見覚えがある画面だった。ヒーロー関連の話題を語り合う掲示板の入り口だ。
 数百はあるだろう、スレッドのタイトルがぎっしりと並んでいる。視力のいいキースでも相当やる気にならないと興味ある話題を探し当てられそうにない。これは目の悪い人には不便だろうと考えた。
 いくつか色が変わっているスレッドのタイトルがある。
 色が変わっているということは、イワンが一度は見たことがあるスレッドということだ。
 そのうちの一つがキースの目を引いた。
『Let's talk about HEROES' big boobs!!』
 小さな字だが見間違いではない。
「HEROES' …big boobs…?」
 平たく言えば『ヒーローたちの大きなおっぱいについて話そう』だ。
 キースは眉をひそめる。
「big…?」
 その指が当該スレッドのタイトルをクリックしたのと、キッチンから戻ってきたイワンが「ぎゃあああっ!」と悲鳴をあげたのはほぼ同時だった。
 キースは反射的にホールドアップの姿勢を取った。
 トレイにマグカップを二つ載せたイワンがよろよろと、しかしお茶をこぼさないように慎重に近づいてくる。
「汚い手できみのパソコンに触れたわけじゃない。ちゃんと手を洗ったよ」
「手が清潔かどうかなんて、そんなの気にしてません」
「じゃあ何だい」
「ええと……」
 イワンはテーブルにカップを置きながら、チラリとパソコンのディスプレイに目を遣った。
 嫌な予感は的中して、イワンがもしやと思ったスレッドが開かれている。キースはこれ以上ないくらい視線を逸らしてディスプレイを視界に入れないようにしている。
「あー…まだ中身まで読んだわけじゃなくて……」
「あの…キースさんの考えたようなのじゃないですから」
「いや、その私は」
「ブルーローズとドラゴンキッドの隠し撮り画像でも並んでると思いました?」
 キースはバツの悪そうな顔をしている。イワンはすぐにも種明かしをしてやることにした。
「このスレッドでの一番人気はスカイハイさんですよ」
「えっ?」
「普段着を披露してるバーナビーさんもやっぱり画像多いですけど」
「ええっ?」
 今度はきょとんとした顔になるキースだった。
「男性ヒーローの胸について語り合ってるんです」
「ああ…はぁ……」
 キースは今の説明でわかったのだかわからないのか、どっちともつかないような声をあげる。
「あの、僕も別にこのスレッドに常駐してるわけじゃなくて、画像多いし今度ゆっくり見ようと思ってただけっていうかですね」
「まぁ…うん、皆、胸元にスポンサーロゴをつけているわけだから、やはり注目してもらわないといけないわけだし……」
「っていうかあの…ちょっと一緒に見ますか? 別にそんなヤバい内容じゃないですから」
 イワンがソファに座ると、キースも隣に腰を下ろした。ノートパソコンが二人の間くらいの位置に置かれる。
 スレッドの一番上には最新のコメントが表示されている。
 先週行われたチャリティ・パーティーの話題が並んでいる。ヒーローだけではなく歌手や俳優といった、いわゆる芸能人も来たもので、TVカメラも入っていたはずだ。
『タキシード一番似合うのはやっぱりバーナビーじゃない?』
 コメントに並んだURLはアップローダーのものらしい。クリックすると画像が表示される。どうやらTV画面のキャプチャ画像だ。
 それに対してコメントが寄せられている。
『服の似合う人のスレじゃないよ。オレはバーナビーのおっぱいじゃ物足りない』
『ファイヤーエンブレムだろ。デカいわけじゃないけど厚い胸だし脚の長さもバランスいいし』
『タキシード似合うのもおっぱいの格好よさもスカイハイしかいない』
『ロックバイソン一択。あれくらいじゃないとグッとこない』
 並んだコメントを流し読みして、キースは怪訝な顔になった。
「……つまり、男性的なたくましさを賛美しているのかな」
「まぁ、そんなところです」
 パッと見た部分に下ネタ的なコメントがなくてよかったと、イワンはこっそり息をつく。顔の見えないネットの掲示板には、やはりどこにでも下品であけすけな話題が転がっている。下らないが、それが実に楽しいのだから仕方ない。
 いくつかの画像を見れば、誰だかわかるように特徴的な部分は写っているものの、顔は当たり前のようにカットされていたりする。
「それにしてもすごいね。こんなに何百人もの人が、胸にだけ注目を…」
「コメント数は500超えてますけど、同じ人が何度も発言してると思いますよ」
「でも、今の私たちのように見ているだけで書き込まない人もいるんだろうから」
「そうか…けっこうマニアなファンは多いのかもしれませんね」
 イワンはうなずいた。スレッドの伸びはさほどではないが、かなり長期間生き延びているのだからそういうことなのだろう。
「きみの名前はちっとも出てこないね」
「はぁ……あの羽織袴でガッカリされたらしくて」
「凛々しくて清廉な雰囲気もあって、とても素敵だと思うけどね。きみの和装は」
「似合うかどうかじゃない、って上でも言ってたじゃないですか」
 以前、折紙サイクロンの公式ブログに和装に対してのコメントがあったのだ。いわく、背が低くてちょっと驚いた。細いなぁ、もしかしてヒーロースーツはブカブカなんじゃないの?など。
「まぁ、僕のことはいいじゃないですか」
 キースはこのスレッドで語られていることの何が面白いのかいまいちわからないらしく、イワンがスクロールするのに任っ放しになった。
 目についたコメントをいくつかイワンが読み上げる。
「『ワイルドタイガーは昔のスーツのほうがよかったのに』」
「今のワイルドくんも格好いいが、以前のスーツのほうが人間味というか暖かさを感じたのかな」
「『ワイルドタイガーとバーナビー以外の全員に言いたいんだけど、バラエティ番組に出るときは、ヒーロースーツじゃなくてもっとラフなのを着てほしい』」
「なるほど。そういったファンの生の声は貴重かもしれない」
「……体のラインが見たいだけだから、真に受けちゃダメですよ」
 そのあともイワンはコメントを見てはキースにところどころ読み聞かせてやった。
 スラングというのは実際に使わないと憶えないどころか、そんなふうに言うことすら知らないで過ぎてしまう。
 子どもの頃から英語は流暢に使えるつもりだったイワンだが、『おっぱい』を表す言葉がこんなにあるなんてはじめのうちは知らなかった。
 まだアカデミーにいた頃、女性タレントの品定めの話を振られたときにイワンが『breasts』と言ったら、クラスメイトは笑い出した。『そんな単語は鶏のムネ肉にしか使わないよ』と言われて。
 その形状からの連想だろうが女性の胸を『melons』と言ったり『rockets』と言ったりする。(ロケットみたいに突き出した胸なんてポルノでだってそうそうお目にかかれないとは思うが。)
 ヒーローたちの胸についても、所属会社や能力からの連想で、たとえば食品会社に所属するロックバイソンなら『ROCK BISON's melons』だとか、空を飛ぶスカイハイになら『SKY HIGH's rockets』だなんて。
 たぶんタイプミスだろう、『SKY HIGH's rocket』と『s』が抜け落ちたコメントに別の誰かがコメントを寄せている。『"Rocket"?! Oops!! It end up moving below!!』――おっと、ロケット一本だと下に移動しちゃうよ!
 笑いそうになって何とか堪えた。キースの耳に入れても鷹揚に笑うだけだろうと思うが、あまりにも品のなさそうなものや尾篭なコメントは読み上げずにおいた。
 目新しいコメントはそうないし(あとはお気に入りの誰かの魅力について同意してばかりだ)、キースもちょうど良い温度になったお茶を啜ることに集中しているようで、会話が途切れがちになる。
「あ…もうない」
 イワンの手が空を切った。視線を前に向けたまま、さっきから手探りでマグカップに手を伸ばしていたのだ。
 お茶を飲み終えても、イワンはパソコンのディスプレイから目を離そうとしなかった。
 キースはイワンの飲み終えたカップをそっとテーブルの中央まで退けた。次に不用意に手を伸ばしたら、カップを倒しかねないと思ったからだ。
「……それ、まだ見るのかい?」
 イワンの指は画面をスクロールすることと、画像のアップロード先のURLをクリックすることを止めようとしない。
「けっこう昔の写真とかありますよ。貴重だなぁ」
 過去の投稿に遡って見ていっていたはずのイワンが、今度はスレッドを逆にスクロールしてゆく。
「この投稿者の人、もしかしてプロなのかも…だってこれ、対象に近すぎません?」
「望遠レンズというやつじゃないのかな」
「一般の人でもカメラにお金かけてる人っていますけど、でも投稿量もすごいし、取材写真の没になったヤツだったりとか」
 イワンは首をひねりながら、それでもまだパソコンに首ったけだ。
 しばらくそんなイワンの横顔を眺めていたが、少しするとキースはもじもじと体を揺らした。
「その…そんなにパソコンを一生懸命に見なくても」
「え? あ、姿勢が悪いですか?」
「そうじゃなくて、その…画面の中じゃなくて、きみの隣にあー…本物があるわけで」
 イワンが振り向くと、キースはなぜだか照れくさそうに自分のTシャツの胸元につんつん、と人差し指の先を向けた。
 そんな動作にイワンは口元を緩めたが、またふいっとパソコンに向き直ってしまう。
「もうちょっと待っててください。さっき、このスレッドを覗く前にボソッとつぶやいたことは秘密にしておいてあげますから」
「え? ボソッと…?」
「聞こえてましたよ。『big?』って。『smallじゃなくて?』みたいなカンジに言いましたよね」
「いや! いや、そのあれは…!」
「ブルーローズには黙っておきます。あ、HEROESって複数になってるからキッドにも内緒にしないと」
「イ…イワンくん!」
 含み笑いをしながらイワンはディスプレイをふたたび覗く。その隣でキースは渋い顔になった。
「……イワンくんも普通の男の子なんだね」
「は?」
「恋人が隣にいても、画面の向こうの沢山並んだ胸に夢中だなんて」
 キースの言い草にイワンは吹き出した。
 掲示板に延々取り上げられているのは男性の胸部だ。投稿者たちがどういった意図で画像を貼りつけているかはわからないが、アスリートを賞賛するような調子のコメントも多い。画像を保存したりしているのは、本当にレアなシーンの写真が紛れていたりするからだ。それに、肝心なことを言えばキースを好きになったのを除けば、イワンがTVや雑誌、街中で目に留めるのは女性ばかりだった。それも別に胸の大きい子が好きなわけではないし。
 ただ、それを言うとまた揉めそうなので、笑うだけにしておく。
「キースさんは重大なことを忘れてますよ」
 ん?とキースが眉を上げる。
「僕は単純で普通な男なもので」
「うん」
「画面の向こうにあるより本物のほうがいいです。それも、好きな人ののほうが」
「本当に?」
 唐突に横からぎゅぅっと抱きしめられて、ほんの少し慌てる。照れ臭いとかいうのより、とにかく苦しいのだ。
「……キースさ…ギブ、ギブ!」
「ああ、ごめん」
 キースが体を離してくれたので、イワンはほっと息をつく。
「今のほぼプロレス技でしたよ。自前の凶器じゃないですか」
 口を尖らせるイワンに、キースはわざとらしく笑顔を作った。
「それは、魅力的って意味で?」
「……たまには。今じゃないです」
「イワンくーん」
「だから、バーナビーさんみたいにオファーが来たからってポイポイ脱いじゃダメですよ」
 その言葉にキースは目を輝かせようとするが、イワンは言うだけ言うとパソコンに顔を向けてしまう。
「――あっ、やっぱりこの投稿者はプロのカメラマンかもしれません! これ、バーナビーさんの例の水着グラビアのお蔵入りショットじゃないですかね?! 関係者なのは確実だな…。消される前に保存しとかないと…」
「……イワンくーん」
 むくれたキースがまた横から勢いよく抱きついてくるまでの短い間、イワンは大して好きではないはずの男性の胸部ばかりを取り上げた掲示板を覗き、マウスを操りつづけるのだった。



【END】
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Posted on 2013/09/02 Mon. 20:43 [edit]

category: SS(空折)

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