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空/折 「Good Morning , Darling」 

「見切れで御免・四」ご参加の皆様お疲れ様でした。
当スペースにお立ち寄り下さった方、本をお手に取って下さったり、お喋りして下さった方、どうもありがとうございました!!
先週、スパークの申込受理葉書が届いたので、十月に向けて頑張りたいと思います。
また皆様にお会いできるのが楽しみです!!

さて、見切れ・四の新刊のおマケとして豆本を配布していました。
タイトルどおり「おはよう」なお話です。

なんか、ちょっと「あざとイワン」になったような…。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「Good Morning, Darling」



 顔を洗い、鏡を覗きこんでひどい寝癖がついていないか確かめてからキースは寝室へと戻った。
 さっき抜け出してきたベッドを見れば、数分前と変わらぬ光景があった。
 いや、ほんの少し違う。相違点に気づいて、キースの頬がわずかに緩む。
 いまだ眠り続ける恋人は数分のうちに寝返りを打ったらしい。さっきは壁のほうを向いていた顔が、いまはドアを向いている。
「おはよう、イワンくん」
 小さな声でそう呼びかけても、シーツにくるまった彼はすやすやと規則正しい寝息をたてていた。時間の許す限り寝かせておいてやりたいので、キースのほうも起こす気はない。ただ、呼んでみたかっただけだ。
 窓から差し込む朝の光の中で、その寝顔を眺める。普段ならくっきりとアーモンド型に見える、本人は大きすぎると少し気にしているらしい瞳は瞼に閉ざされていた。長い睫毛が影を作っている。
 意識のあるときは常に何かに困ったようにちょっと尖らせられている唇は、いまは脱力しきってほんの少し隙間を開けていた。
――可愛い、そして…やっぱり可愛い。
 キースは頬も唇も盛大に緩めて、それを隠すように慌てて口元を手で覆った。そんなことをしなくても眠っているイワンに見咎められるわけはないのだが。
 ベッドの脇に跪いて、さらに近くから寝顔を見つめる。目を閉じているだけでいつもよりあどけなくて、幼ささえ透けて見える。
 キースは片手を伸ばし、イワンの頬に添わせてカーブを作った。すると、見えてはいないはずなのにイワンは手のひらに頬を寄せてきた。まるで甘えるように。
 床を転げ回りそうになるのを堪えて視線を注いでいると、イワンはむにゃむにゃと何かつぶやいた。聞き取れそうで聞き取れない。
 起こすまいと思いつつ、キースは親指でイワンの下唇をなぞる。今度は微かながら「んー…」と掠れた声が聞こえた。
 無防備な愛らしさを目にして、キースの中に世界中に知らせたくてたまらない気持ちと、絶対に誰にも教えたくない気分が同居する。
 いつだってイワンは、もちろん昨夜だって可愛かった。
 視界に入ってきたのは、赤く染まった薄い耳朶。汗ばんだ首筋。それから、キースの耳は押し殺した声に混じる熱っぽさを聞き取った。それに、前に回した手に感じる自分のものとは違う脈動。
 正直なところ、できることなら顔を見たかった。
 けれどそれは瑣末なことだ。問題は、その後にあった。
 抱きついてくれるのは嬉しい。でも、これは…キースはイワンの旋毛を見下ろしながら考える。これは、しがみついていると言わないだろうか。それから。
『す、すみませんでした…』
『イワンくん?』
『……ごめんなさい』
 イワンは謝り通しだった。キースは、ありがとうのキスを贈る余地も愛の言葉を交わす暇もなく、謝罪の合間に口を挟むのが精一杯だった。
『どうして謝るんだい?』
『だって…その』
『うん?』
『気持ち…悪かったですよね』
『ええ?! な、何が?!』
『僕の…色々、っていうか全部…すみません……』
『そんなことはない、全然、まったくないとも! なぜそんな理解に…』
『……ごめんなさい』
『怒ったわけじゃない。だから顔を上げてくれないかな?』
 イワンの首が横に振られる。
『きみは、その…とても素敵だったよ』
『いえ、まさか! 滅相もない!』
『でも本当にそうなんだ。キュートでセクシーで』
『あーあーあーあー』
 なぜかイワンは両耳を手で塞いでおかしな声を出し始めた。
『…わかった。もう言わないから』
 キースが首を伸ばしてどうにか届いたこめかみにキスをすると、イワンは口を閉じ、耳を覆っていた手もどける。
『どこか痛くしたかい?』
 キースが問うと、イワンはうつむいたまま首を横に振った。謝罪の言葉を引っ込めてくれたのはいいが、声まで出さなくなってしまった。
『きみは…どうだったの?』
 質問の意味がわかりかねるのか、反応はない。
『つまり、あー…気分は?』
『……えっと、平気…です』
 首を振っただけでは返事にならないと思ってか声が返ってきた。
『それはよかった。じゃあ、気持ち悪かったわけじゃ…ないんだね』
 小さく頭が沈む。
『少しは、その…気持ちよく、できたかな』
 イワンの首筋がガチッと硬くなったのが見て取れた。
『おまけして採点したら、ほんの少しくらいは…?』
 さっき耳を塞ぐために引き戻されていたイワンの両手が、ふたたびキースの体に回される。ここで期待をしなかったといえば、嘘になる。が。
『…………ばか
 照れたのか拗ねたのか腹を立てたのかわからないが、イワンはそれから顔を見せてくれなかった。バスルームへも別々に行くことになったし、眠りにつくときもイワンは壁に額を押し当て、キースに背を向けてしまった。
 一夜明け、ようやく顔を見せてくれたイワンの唇に指先で触れる。
 目を覚ましたら、少しは少しは機嫌が直っているといいのだが。
「……キー、ス…さ……」
 音量は小さいが意味のある声にキースはハッとした。
「……んー…ごめん、なさ……」
 まだ眠ったままだ。それにまだ謝っている。キースはふぅっと息をつく。
「こっちこそ昨日はごめん。……ねぇ、大好きだよ」
「んー…」
「昨夜、きみに背中を向けられても平気で眠ったように見えたかもしれないけどね、あれは、その前の晩にほとんど眠れなかったからさ。明日の夜はこの部屋にきみがいるんだと思ったらひどく落ち着かなくなってね」
「ん……」
「本当に大好きなんだ。好きで好きでしょうがない。毎日どんどん、きみを好きになっていくんだ。来月は、来年はどうなっているのか怖いくらいだよ」
 イワンの唇がほんの少し綻んだ。まるで冗談に笑ったように。
「笑い事じゃないかもしれないぞ。見てくれる気はあるかい? 来年も再来年も十年後も、もっと先も…ずっと一緒にいてくれる?」
 イワンは夢でも見ているのか、ふにゃっとした笑顔を浮かべる。
「……いー、です…よ……」
「えっ!」
「――ふぇ、っ?!」
 イワンの目が突然大きく開いた。偶然に意味の通った返事をされたキースと、二人して驚いた顔をつき合わせる。
「……まさか、跪いて…今の、本当に…夢かと……プ、プロ、プロポ……」
「え? き、聞こえていたのかい?」
 イワンはアッパーシーツを引っ張りあげて、これ以上ないくらい驚いた顔を覆った。目の前に突如現れた白い幕にポカンとしていたキースだったが、シーツがピンと張られているということはイワンが仰向けでいる証拠だった。シーツの脇を手を掴むと、そこから肩まで潜り込む。真っ赤になったイワンがそこにいた。
「キ…キースさん、僕、あの」
「もう一度最初から言うから、改めて答えをもらえるかな? ああ、その前に
――Good Morning, Darling !!」


E N D
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Posted on 2013/09/01 Sun. 23:59 [edit]

category: SS(空折)

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