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夏コミ新刊② R18 「the PARK LIFE」 

※ この同人誌は完売しました。

夏コミ1日目、8/10(土)の新刊・2冊めのサンプルです。
『the PARK LIFE』 R18・オフセ・60p。

park-kage
表紙が真っ白なのです。茶色の枠があるわけではないです…。

EROを書くなら夏でしょ!ということで(笑)、
セフレな空折を目指しました…が、ヤることヤってももだもだしているような…。
ヒーローデビュー前のイワンとキースが出会っていたら…な捏造モノです。

書いている途中で読んでいただいたら「ちょっと最初のほうが殺伐としてるかも」…と
いう感想もあったので、らぶいちゃじゃなきゃ読めない!という方はご注意下さい。

…ええと、それから夏コミ新刊1冊めもご一緒にお買い上げ下さった方にはおマケ小冊子をおつけします。「セットで」とお申しつけ下さい。
ノベルティって憧れてたけど、結局OKOnomyで出来るのはこんな形くらいしか…(ヨヨヨ)。



本文サンプルは「続きを読む」に。

★☆★☆★☆★☆★☆


本文サンプル。冒頭部分です。




1.

 その日、雨が降ることをキースは知らなかった。
 陽が落ちてからポセイドンラインの社屋を出たキースは、雨に気づいたというより、足元のアスファルトが輝きを帯びていることに気がついた。
 つい今しがた降りだした雨が路面に水を撒き、そこに街の灯りが反射して細かいプリズムのような輝きを見せている。
 頬だったか耳だったか。ほんの小さな水滴が幾つか当たって、そこでようやくキースは雨を認識した。
 今日の自分は朝からずっとビルの中で過ごし、天候の変化も意識していなかったことに気づかされる。そういえば今朝から天気予報も見てはいない。
 まだ本降りには至っていない雨脚の中、傘を広げる人はさほどおらず、傘を持っている人自体も多くはない。とすれば、天気予報でも雨の確率が低いと伝えていたのかもしれない。
 しかし、降水確率の0%というのは、本当は5%以下だか3%以下なのだと聞いたことがある。わかりやすく0%と表現しているだけで、絶対に雨が降らない保証はないのだと。
 そんなことを考えながら、キースは足を早めた。モノレールの駅まではすぐだ。大して濡れないうちに家に帰れるだろう。帰宅したら、ジョンの散歩に行かなくては。嵐でもない限り、大型犬にとって散歩は大事な日課だ。最近はひどく嫌がることはなくなったとはいえ、体の大きな愛犬を宥めてレインコートを着せるのは一仕事に違いない。
 それを終えたら夕食を摂り、そしてパトロールが待っている。雨の日は事故の発生が増える。気を引き締めてかからなくてはいけない。
 発生するかどうかわからない事故以外にもうひとつ、今夜のキースには気になることがあった。


 パトロールを終えて普段着に着替え、もう一度家を出る。そろそろ日付の変わる時刻だ。雨脚は強いというほどではないが、雨粒が途切れる気配も感じられなかった。
 キースが向かったのは、とある公園だった。
 繁華街と呼ぶには外れに位置する場所に、小さな公園があった。公園を縦断する遊歩道を抜けると向こう側は住宅が建ち並んでいて、そこに公園を設けたのはエリアを区切るための配置かもしれない。
 昨夜もキースはそこを訪れていた。ヒーロースーツとマスクをまとった、スカイハイとして。

(略)

「……さん、ですか」
 背後からの声にキースはぎょっとした。雨音のせいか考え事をしていたからか、誰かが近づいてきたと思わなかった。
 慌てて振り返ると、若い男性が立っていた。この雨の中、傘を持っていない。キースは半歩前に進むと傘を差しかける。背丈は彼のほうが少しだけ低かった。
 見上げてくる彼の顔は驚くほど整っている。作り物とか人形のようだという表現はあるが、実際にそんな顔立ちを間近で見るのは初めてだ。よく見れば、若いというよりまだ幼さを残した風貌で、少年と呼んでもよさそうだ。
「どうも、あの…僕は、……です」
 名乗る声は小さくてよく聞き取れなかった。それに、名前の響きに聞こえない。
「メールくれましたよね。今日ここで、って。ちょっと遅くなっちゃったけど」
 ああ、とキースはつぶやいた。肯定の意味ではなく、事情を了解したのだ。目の前の彼は、昨夜見かけた出会いを求める人々のうちの一人なのだ。どこかのSNSで知り合った相手と待ち合わせていたのだろう。彼が名乗ったのはハンドルネームに違いない。だから、聞きなれない響きだったのだ。
「さっき来ても誰もいなくて、引き返したところの店で時間潰してたら、傘盗られちゃったみたいで。もう一回だけ見て帰ろうかと思ったんですけど」
「それは災難だったね。でも、すまない。人違いをしているよ」
 キースの言った言葉の意味がわからないかのように、彼は数秒間ポカンとしていた。少しして、「そんな」とかぶりを振る。
「僕のこと好みじゃないのはわかりますけど、でも、そっちだって身長をもっと高く言ったし」
 自分を良く装おうとするのは男女の間だけではないらしい。キースは笑いそうになった。
「好みじゃないとかそんなんじゃないんだ」
「だったら」
「ああ、いや、だからそういう意味では」
「みんなそうだ。写真を送れっていうから送ると、連絡が来なくなる。だから今回はすぐに会おうって言ったのに」
 彼は肩を落として言う。
「そんなに僕の顔、気味が悪いですか」
「それは違うよ。きっと、みんな嘘だと思ってしまうんだ」
「嘘?」
「きみは美人すぎる。雑誌か何かからモデルの写真を見つけて、加工して添付したんだと疑われているよ。十中八九ね」
「まさか。ありえません」
 お世辞だと思うことにしたのか、彼はクスクスと笑う。
「それで、どこに行きますか?」
「いや、だからあの、人違いなんだよ」
 キースが告げると、彼の眉が寄った。こうなれば説明するしかない。キースは昨日の顛末を語った。
「残念だけれど、きみのメールの相手も今日はこの場所を敬遠したのではないかな」
 彼はツンと尖った唇をさらに突き出して不満そうな表情をしている。
「きみはそういうコミュニティに属しているわけでもなさそうだ。友達もいないから情報もなかったんだろう?」
 まだ年齢も若いようだし、友達や恋人を探し始めたばかりなのだろう。どうやらつまずき続けているらしいが。
「……そういうあなたは、そっちの人ってことでしょう。昨日もここに来てたんだから」
「えっ、違うよ。昨夜はたまたま居合わせただけで」
「昨日は偶然でも、今日は何なんですか」
「少し心配になっただけさ」
 答えながら、キースは自分でも発言のおかしさに気づいていた。心配ならパトロールのルートに組み込めばよかったのだ。上空から遠巻きに見守る分には邪魔にもなるまい。それがなぜ、普段着でもう一度訪れたのか。
「とにかく、その人と会えなかったら帰るところだったんだね? 今日はもう遅い。誰も来ないよ。途中まで送って行こう。開いている店を見つけたら傘くらい買ってあげるから」
 彼は納得したのかどうかわからない。ただ、キースの差しかける傘の下でうつむいていた。
 二人は並んで歩いた。繁華街を抜けて駅に向かおうとする。歩き始めてから二人は無言だった。彼は遠慮があるのかキースから遠いほうの肩が傘からかなりはみ出してしまっている。それを見てキースは差しかけた傘ごと体を寄せた。跳ねるように彼の顔が上がる。作り物めいた顔立ちがキースを見つめてくる。街灯の下で、彼の瞳は綺麗な紫色をしていた。
「そうだ、きみの名前は?」
「え、っ」
「さっきよく聞こえなかったんだ」
「……イワン、ですけど」
 つぶやいてから、彼はハッとした顔になる。さっき名乗ったハンドルネームでなく、もしかして本名を名乗ってしまったのかもしれない。
「ああ、そう。いい名前だ。私はキース。キース・グッドマン」
 はぁ、とバツが悪そうにイワンは応えた。それはそうだ。行き合っただけの相手だ。それも人違いで。名乗る必要もなかったし、キースという名を知る必要もなかったのだ。
 そのイワンの歩が緩む。キースは辺りを見回した。駅はもう少し先だ。そして、住宅らしきものは視界に入ってこない。
「……キースさん、って呼べばいいですか?」
「え、ああ。私のことかい」
「ここで、いいですか?」
「ここ?」
 イワンがキースと向かいの建物へ交互に視線を遣る。その意味に思い当たり、キースの手から傘の柄が滑り落ちかけた。
 目の前にあるのはビジネスホテルだ。ここでいいか、と言ったのはここに入ろうとしているのだ、この少年は、自分と。
「いけないよ、駄目だ。きみは一体なにを」
「それだともう少し歩きますけど」
「どのホテルがいいという話じゃない。私はそういうつもりは」
 それを聞いて、イワンは大きく一歩後退した。そこは傘のない、雨の降る中だ。
「だったら僕はさっきの公園に戻ります」
「戻っても誰もいないよ。きみのメールしていた人だって」
「でも、あなたと…キースさんといるよりマシです」
 キースは言葉に詰まる。雨の中、傘も持たずに誰も来るはずのない公園にいたほうがいいとイワンは言う。キースといるよりまだマシだと。
「誰か来るかもしれない。可能性はある。あなたは頭ごなしにああだこうだ言うだけで、話も聞いてくれない」
 言うだけ言って今来た道を戻ろうとするイワンの前にキースは回り込んだ。
「待ちなさい」
 一瞬、この傘をイワンに渡して自分は駅まで走って行こうかとキースは考えた。しかし、雨に打たれてしかめ面になっているイワンを視界に入れたら、それは出来なくなった。
「何か相談ごとがあるなら、聞くくらい聞けるかもしれない」
 二の腕を掴まえてイワンを傘の中に引っぱりこみながらそう言ったが、返ってきた発言にひっくり返りそうになる。
「セックスがしたいんです」
「ええと…いいかい、恋人を探すのはわかる。きみくらいの年齢なら焦る気持ちもあるだろう。だけど初対面の相手にそんな…それに、きみは未成年だろう。第一こんな遅くに」
「僕じゃそんなに駄目ですか。ホテル代くらい出せます。お金をせびったりしないし、歳のことなら、僕と寝ても犯罪にはなりませんから」
「どうしてそうなるんだ」
 キースが拒むたびにイワンは傘の下から抜け出して、せっかくここまで一緒に傘に入ってきた意味はなくなりつつあった。
 もしかして、とキースはふっと思う。ここで自分が手を放してしまったら、彼は自分自身かそれとも誰かを傷つけてしまわないだろうか。
 どうしても手に負えなければ警察か救急を呼ぶべきかもしれない。そうなったとしても、現在地が把握できない路上よりは建物の中のほうがいい。キースはそう判断した。
「わかった。ここに入ろう」
 キースが言うと、イワンはどこかホッとした顔になって、それから何かに挑むように口を結んでうなずいた。


「シャワーはどうしますか?」
「ああ…シャワーね……」
 部屋に入ってすぐの会話がこれだ。キースはため息をつきそうになるのを堪えた。
「私はどちらでも」
 キースには彼と寝るつもりはない。ただ、それを言えばまた揉めるだろうし、イワンは先ほど雨に濡れてしまっている。暖かいシャワーを浴びたほうが気分も落ち着くだろう。
「じゃあ…先に浴びてきます」
 イワンはユニットバスのあるドアに消えていった。キースは今度こそ息を吐いてツインベッドの片方に腰を下ろす。
 セックスがしたいんです、と彼は言っていた。とすると、今日の待ち合わせははじめからそのためだったのだ。キースのことをしばらくはメール相手だと信じていたようだし、顔もわからない初対面の相手と、顔を合わせてすぐそうするつもりだったのか。キースには理解できない。酒の勢いで意気投合するならまだしも…それだって翌朝にはきっと後悔することになるに違いない。
 ホテルに入ると決めたときの、イワンの表情を思い出す。勢いやノリとはまったく無縁の、緊張に満ちた面持ち。
 いくら絶世の美女とでも、よく知りもしない相手と密室で二人きりになるのだって普通はありえない。確かにイワンは、それこそ絶世の美少年かもしれない。長すぎる髪やオーバーサイズのあまり似合わない服装をしてはいるが。本物のメール相手がもし無事に会えていたら、文句なく差し出されたご馳走にありつくのだろう。
 自分の考えにハッとなって、キースは首を振った。彼の顔立ちがどうかなんて今は関係ない。とにかく、そんな捨て鉢になっているのはなぜなのか話を聞いてやらねばならない。何か理由があるはずなのだから。
 どう切り出せばいいだろうか。キースはぼんやりと首を巡らせる。無個性な室内だ。壁際のライティング・デスクの上に置かれた聖書の黒い表紙が目に入った。彼が戻ってきたときにキースがあれを開いていたら、イワンはげんなりしてその気がなくなるだろうか。
 フライトジャケットを脱いで、視線を左手首のPDAに移した。今は何時だろう。もう日付は変わっただろうか。
 キースはバスルームへ続くドアに顔を向ける。イワンがあのドアの向こうに消えてからどれくらい経ったのか。女性ではないのだし、時間がかかりすぎてはいないか。――まさか。
 ベッドから腰を上げれば目的のドアまではほんの数歩だ。
 ノブをひねって開ける。水音が聞こえた。小さな洗面台が見え、その奥の鏡にキースの疲れを滲ませた顔が映った。
「イワン…イワンくん」
 便器の向こうにシャワーカーテンが引かれていた。シャワーの音は続いていて、向こう側に肌色の人影らしきものが見える。イワンだと思うが、動かないし返事も返ってこない。
「大丈夫? 具合でも悪いのかい…何か言ってくれないか」
 振り返れば、イワンの脱いだ服が床に落ちていた。裸なら、まさか窓から逃げ出したわけはないだろう。
「イワンくん、悪いが開けるよ」
 カーテンを引いた。湯気の向こう、シャワーの湯に打たれてイワンは立っていた。一見して、自分を傷つけたような様子もない。キースはほっと息をついた。
「すまない。随分かかっているからどこか具合でも悪いのかと」
 イワンは何も言わず、振り返りもしなかった。白い背中をこちらに向けている。
 その姿がキースの記憶を刺激し、かつて見たあるものを思い起こさせた。そう、あれも公園での出来事だ。
 キースがまだ小学生になったばかりの頃だった。父と一緒に飼っていた犬の散歩に出かけたのだ。早朝の公園。
 木の幹に何かがあった。小さな白い裂け目に見え、近づくとそれは蛹だった。たぶん蝶の。もう羽化が始まっているらしい。背中が割れ、蝶の頭がそこから出てくるところだ。蛹自体の厚みも薄くなり、中の羽の色が透けているのだ。
 キースは息を詰めてそれを見守ったが、羽が半分ほど外へ出たところで蛹が破れずに、蝶は動きを止めてしまった。
 迷ったが、羽化の途中の蝶をそっと手に載せた。小さな指で蛹の割れ目をひろげてやる。蝶はどうにか全身を外に出すことが出来た。キースはほっとして元の位置に戻す。
 蛹から出た蝶は生まれたての羽を伸ばして乾かさなければいけない。しかし、キースが見つけた蝶の羽は折れ曲がった状態で、それ以上は伸ばしきることができないようだった。よろよろと木の幹を進むが、すぐに土の上に落下した。
 地面に落ちてしまった蝶を木の幹に戻したが、やはり一歩か二歩進むだけでバランスを崩して転げ落ちてしまう。
『やめてあげなさい、落ちるたびに傷が増える』
 父の声がした。一本の木の前から動かない息子に気づき、いつの間にか父が犬のリードを引いて真後ろに来ていた。
『手伝わなければ上手くいったのかな』と、もがく蝶を見下ろしながらキースは訊いた。父は首を横に振った。
『触らなくても結果は同じだ。羽化できない個体もある』
 父は言った。慰める声で。教え諭すように。
『力が弱いせいかもしれないし、アクシデントがあったのかもしれない。そういう子は死ぬ。それが自然の決まりだよ』と。
「……キースさん」
 イワンの声がキースの回想を断ち切った。湯気の向こうの白い背中。うなだれた彼の表情は濡れて張りついたプラチナ色の髪に隠されている。
 木の幹で、羽化の途中で縫いとめられたように動きを止めてしまったあの蝶と、タイル張りの壁に手をついてうなだれている目の前のイワンがキースの脳裏で重なって見えた。
 どれくらいの間彼を眺めていたのか。さほどの時間ではないはずだ。キースは慌てて口を開く。
「驚かせて申し訳ない。もう出ていくから」
「――ここで、します?」
「え…?」
 蛹の奥に透けた白い羽。ほんの少し世界に触れたところでその動きを止めた蝶。羽化に失敗した小さな生き物。
「僕なら、いいです。ベッドじゃなくて…ここでも」
 キースは手を伸ばした。イワンに触れる前に、指がシャワーの湯に触れる。キースの手はそこで動きを止めた。天井近くから降りかかる水の粒に拒まれて押し戻されたかのように。
 なぜ手を伸ばしたのだろう。初対面の人間が、裸でシャワーを浴びている。キースはその手を引っ込めようとした。
 イワンが振り向いた。額にも頬にも髪が張りついている。さっき、キースの傘を抜け出て、雨の中に立ったときと同じだ。
「……したいんです。いますぐ」
「私は、きみとメールのやりとりをした人じゃないんだ」
「いいです。そんなの、どうでも」
「そう。誰でもいいわけか」
「だって、いま」
 イワンはキースを見上げた。笑顔でもないが、泣きそうにも見えないし怒りも読み取れない。ただ、彼が懸命に何かを伝えようとしているのは確かだ。
「ここにいるじゃないですか。ここまで来てくれたでしょう」
 キースは宙に浮かせていた手をふたたび伸ばした。肘までがシャワーの湯に濡れる。イワンの顔に張りついた濡れた髪を指先で梳いて横に退けた。
 二十年以上昔に聞いた父の声が、キースの耳の奥で甦る。父は何と言った? 触れなくても結果は同じだ、と。それなら……触れても同じことだ。未来は変わらない。
 キースは半歩前に進むと、ほんの少し背をかがめた。意を汲んだようにイワンが首を伸ばしてくる。湯気の匂いがキースの鼻腔をくすぐった。二人の唇が静かに触れて、離れる。
 イワンの両手がキースの肘の内側を掴んで、手前に引き寄せようとする。キースは反射的に両腕に力をこめ、それに抗った。イワンの口から「あっ」と小さな声が漏れる。それは抵抗されたことへの抗議ではなかった。
「すみません。服が濡れちゃいますよね」
「ああ……」
「お湯、止めましょうか?」
「いや」
 キースはシャワーカーテンの端を抓みながら後ろに下がる。
「あの…僕が脱がせたほうがいいとか」
「いや、いいよ」
 そのカーテンを元通りに引いてしまえないのはなぜだろう。脱ぎ捨てられたイワンの服の位置までのろのろと後退する。
 Tシャツをたくしあげ、頭と腕を抜いた。足元にひとかたまりになった白い布を落とす。
 やめなくては。やめるなら今だ。ホテルの部屋に入ったのは夜遅くなって宿泊するためだ。イワンがシャワーを浴びているバスルームに踏み込んだのは彼の身を案じたからだ。
 キースはベルトのバックルを外し、ジーンズのホックに手をかける。だったら、今さっき彼の濡れた髪に触れた理由をどう説明する? それから、今のキスは? 言い訳など出来るはずがない。
 キースはジーンズを蹴り飛ばすように脱いで、下着も靴下も靴も、素早く同じようにした。
 イワンのところへ戻る。シャワーのノズルの下へ。これはどう言い訳する? 彼の信頼を得るために一緒にシャワーを浴びるとでも? キースに場所を譲るように、イワンは体を引いた。
「シャワーを浴びたら、家へ帰るかい?」
 イワンは笑った。キースも一緒になって笑う。そうだ、ここまでしておいて冗談にしか聞こえない。笑い草だ。
 熱い湯に打たれているとキースは少し気が楽になったように感じた。上目遣いでこちらを見ているイワンと視線がぶつかる。どちらからともなく首を伸ばして唇を重ねた。
 息を継ぐ合間に目を開ければ、イワンの伏し目がちの瞼とカーブした長い睫毛が見えた。整った顔立ちのせいか同性なのだという抵抗はあまり感じない。彼のキスは淡白で、すぐにも体を繋げたい人たちはキスなんていうステップは面倒がるのかとキースは訝しんだ。試しに顔を傾けて噛みつくようにしてみたら、びくりとイワンの肩が揺れた。と同時に口の中にシャワーの湯が流れこんでしまう。キースは苦笑した。
 イワンの手がキースの肩や腕を往復する。手ですくった湯をかけてこすっていくような仕草は、あまり愛撫という雰囲気ではないが、マッサージのようで気持ちはよかった。キースも腕を伸ばして彼の背中から脇腹まで撫で下ろしていく。
 イワンの手のひらがキースの胸から腹へと降りてくる。その手を止めてイワンは尋ねた。
「手でしてもいいですか? それとも、口で…」
 口? 聞き返そうとしたが、すぐに意味に気づくと慌てて首を横に振った。イワンの手がそのまま降下する。
 名前しか知らない他人の手が性器に触れてきた。不思議と、恐怖も嫌悪感も湧いてはこない。とても奇妙だった。
 人恋しくなる経験ならある。無性に誰かと話がしたい日や、気楽な馬鹿話をして笑い合いたくなることなら。それに、誰かに触れたくなるときや、誰かの腕に抱き締められたいことも。けれど、どこかのウェブサイトへ行ってその相手を探そうとしてみたことは、キースにはなかった。目の前の、自分の性器を握っている少年はそれをやってのけた。それだけだ。
 キースがしてきたのは、明日のスケジュールを確認して眠りにつくことだ。雨の夜に公園に出かけて行って、名前しか知らない相手とホテルでシャワーを浴びることではなかった。
 遠慮があるのかイワンの手つきはたどたどしいほどで、キースはぼんやりと立っている自分がひどく間が抜けているように感じた。イワンの肘に添えていた手を下腹へ降ろしてゆく。
「……っ」
 キースの指がそこに絡まると、イワンが息を詰めた。慌てて訊き返す。
「痛かった?」
「いえ……」
 どうしてほしいか、どうしたらいいのか尋ねてみればいいのに何と言っていいかわからない。イワンも何も言わない。だから、キースは自分自身にするときのように手を動かすしかない。
 最初のうちは快楽を追うというより、お互いにただぎこちなく手を動かしているだけだった。キースはイワンを見る。少し背の低い彼の、シャワーのおかげで血色のよくなった首筋や肩を見下ろす。イワンの利き手が動くたびにその肩も揺れた。血の通った相手と触れあいたくて今夜ここにやって来た彼にとって、今こうしているのは望みに叶っているのだろうか。
 次第にコツが掴めてきたのか、二人の手の動きもリズミカルになる。ふたつの熱く荒くなる呼吸が、規則的なシャワーの音でも隠せなくなっていく。
「気持ちいい?」
 キースが訊くと、イワンは小さくうなずいた。今のはカンニングのようなものだ。シャワーの湯ではない、彼が零しはじめたもので濡れている指に気づいて言ったのだから。
「…指、ふやけてきた」
 イワンは笑い出しそうな声で独り言のように言う。それはそうだ。キースが来る前から彼はシャワーを浴びている。続けて、子供みたいな口調で「大っきい」と自分が指を絡めているものを評した。
 褒めているつもりならこちらも何か言ったほうがいいかとキースが迷っていると、イワンが「…入るかな」とつぶやいたのを耳にして、言葉を失ってしまう。
 メールのやりとりの中ではこういった役割も話し合われていたのかもしれない。子供が興味本位で触りあっているのではないのだから当然だ。
 イワンは今どんな顔をしているのかと思ったが、キースの肩に額を載せるように首を倒していて、表情は窺い知れない。イワンはキースのものを指先で軽く弾いて、手を放しても勃ち上がっていることを確かめた。
「……そろそろ、いいかな」
 掠れた声でイワンが言った。キースは小さく顎を引いたつもりだが、彼はそれを目にしていたのかどうか。イワンが言ったのは、事を終わりにしようという意味合いではなかった。彼は自分の性器を握っているキースの手を押しやると、壁に両手と額をつけて背を向けてきた。


(略)


以下、ちょっと仲良くなったあたりのシーンです。



  2.(の途中部分です)



「っていうか、帰って鏡を見たら」
 イワンは声を落とすと半ば腰を上げた。耳打ちをするようにキースの顔に首を伸ばす。二人の背後を湯気のたつ皿を抱えたウェイターが通っていくところだった。
「…首の付け根に歯形が残ってて、けっこう驚きました」
「本当に? それは…」
 今思えば、とにかく最後まで済まさなくては、とばかり考えていて、無我夢中だった気がする。すまない、とキースが言う前に逆にイワンが質問してきた。
「あの、どうして僕とまた会う気になったんですか?」
「そっちが電話してきたんだよ」
「そうですけど。だって、あんなの楽しくなかったでしょう」
 キースは振り向くと、後ろのテーブルを片付けていたウェイターを呼び止めた。ほとんど空になったグラスを目の高さに掲げて「同じものを」と注文する。
 あの夜の出来事は、思い出そうともしなかったし、忘れようとしたわけでもなかった。自分がしたことは覚えているが、どう感じたかと改めて訊かれると困ってしまう。無論楽しかったかどうか、だなんて考えてもみなかった。
 キースはグラスを呷ると中に残っていた雫を舐めとった。
「あんまり酔っ払わないでください」
 イワンが少しばかり心配そうに言う。
「きみに介抱させるほど飲まないよ」
「だって、もう一回してみようとしてるんでしょう、これから」
 イワンの心配は、キースの体調というより、ベッドで役に立つかどうかという意味だったらしい。すぐに新しい飲み物が来て、キースはグラスを口に運んだ。
「……随分こだわるね」
 別に、とつぶやくかわりにイワンはバケットを千切ると深皿についたソースを拭って口に放り込んだ。
「私には理解が難しいけれど、人の出会いはそれぞれだ。きみの選択でもいいとしよう」
「理解できないって」
 イワンはうつむいて小さく笑う。確かに、キースが言えた義理ではない。出会って一時間もしないうちに、目の前にいるイワンと抱き合ったのだ。発言の矛盾は無視して続けた。
「とにかくまず出会って、まぁ親密な時間を過ごすとする。それから先は? 次も会いたくなったらどうするんだい? 普通のデートはしないの?」
「普通のかぁ…」
 イワンは子供の頃の記憶でも引っ張り出すみたいに遠い目をする。
「映画に行ったり、遊園地とかコンサートとか…ですよね」
「スポーツ観戦でも、ドライブでもピクニックでも」
「あー、僕はそういうのはあんまり」
 キースの言葉をかき消すようにイワンは早口に言った。負けじとキースも言葉を次ぐ。
「食事をするのでも、部屋で寛ぐのでもいいし…お互いを知り合うために一緒に時間を過ごすんだ。大多数の人はね」
「趣味の合う人って僕はそういそうにないし。それに」
「それに?」
「結局、喋るんでしょう。話すのは、苦手で」
「他のことは得意なのかい?」
「他のことも、そんなに…」
 イワンはそこまでつぶやいて、キースの意図したかったことに気づいたらしい。
「……得意も何も…知ってるじゃないですか」
 頬を赤くして唇を尖らしているのは、元からの容姿と相まって、何だか可愛らしく映った。十代後半の男性に可愛いなどと言っては喧嘩になるかもしれないが、それでも。
「半月かそこらで得意になるはずがないね」
 キースがからかうような口調で付け加えたが、イワンはそれを聞かなかったように続ける。
「口きくのってなんか面倒で…いや、面倒っていうか、本当のことじゃないみたいっていうか」
「みんな、嘘を言うってこと? 身長を高く言ったり、格好いい職業に就いていると言ってみたり?」
「それもあるけど……ふわふわ、するっていうか」
「ふわふわ?」
「実感が持てないっていうのかな。時間ばかり使うだけで、喋っても何も残らない気がします。何だったんだろうって」
 キースは返す言葉に詰まった。
「……たぶん、僕が変なんでしょうけど。今までもあんまり友達がいなかったから」
「あんまり、か。じゃあ、その少しの友達としていたみたいに話してみたら」
 キースの言葉にイワンは首を横に振る。
「もう、よく覚えてないです」
「面白かったこととか、珍しい経験をしたとか」
「ああ、そういえば」
 イワンは顔を上げた。
「先週のことなんですけど。歳はキースさんくらいで…」
 街で見かけた見知らぬ誰かの話かと思って聞いていたら、そうではなかった。あの雨の夜の公園のように、肉体関係を結ぶための待ち合わせをした相手の話題だった。
 キースが動揺しそうになるのをよそに、イワンは喋る。
「ショッピングモールの中で待ち合わせたら、そのフロアのトイレに行こうって。で、その人は便器に腰掛けて…狭い場所だし、僕はどうしたらいいかって壁にひっついてたんですけど」
「……ええと」
「その人、カバンから何を出したと思います? モールの中に入ってる店の紙袋だったんです。僕に、紙袋の中に足を入れて自分の正面に立ちなさいって。そうしたら、口でしてる間にドアの下から覗かれても二人いるってバレないからって」
 このまま性行為の描写まで話は続くのだろうか。キースは再度口を開いた。
「……イワンくん」
 キースが呼ぶのと同時に、ウェイターがシーフードのフィデウアを持って二人のテーブルにやってきた。イワンは何を話そうとしていたか忘れたみたいに鉄鍋を覗き込む。
「えっ…これで二人前ですか?」
「はい。ご注文のフィデウアです」
 はぁ、と微妙な返事をするイワンにウェイターは「おかわりはいかがですか?」とほとんど空になったグラスを指したが、イワンは首を横に振った。再び鍋に見入っている。
「大っきい……入るかな」
 キースは吹き出しかけて、大きくむせた。あの晩に、イワンは自分のものを評してつぶやいたのと同じ台詞だったのだ。
「殻つきの貝や海老ですごいボリュームに見えるだけさ」
 気を取り直してキースがそう告げると、イワンは「あ…僕、すみません」とつぶやいた。
「え? 何がだい?」
 妙なことを思い出したのを気取られたかと思ったが、イワンの謝罪の意味は違った。
「食事中にトイレがどうとか言って…これ、食べましょう」
「ははは」
 キースは笑った。場所もそうだが、見知らぬ相手と寝た話を打ち明けられるのかとこちらは慌てたのだ。どうも彼との会話は感覚が狂ってしまう。キースは口を開いた。
「それで、どうしたの?」
 さっきは聞くまいとしていたのに、何だか気になってくる。
「へ…ほれれ?」
 パスタを口に含んだままイワンが顔を上げる。『それで?』と聞き返されたらしい。
「その人とは…どうしたの?」
「ああ。いや、別に」
 また別に、か。しかし、イワンは口の中のものを飲み込むと補足した。
「何か笑えてきちゃって。その人、笑うなって、バレるだろって言うんですけど、だって…紙袋から人間が生えてるみたいじゃないですか。変でしょう? 何かそういう気になれなくなっちゃって、その人も怒っちゃったみたいですぐ解散しました」
「怒ったって…きみ、何もされなかったのかい?」
「全然。呆れてただけで。手軽にこっそりやりたかったのかな」
「そうか…無事でよかったよ」
「無事って…ふふ、何かされに行ったんですけどね。ははっ」
 当人は笑っているが、一歩間違えれば危険なのではないか。
「――あ、これ面白くなかったですか? あの、紙袋のところ」
 キースが考え込むような素振りをしたせいか、イワンが真剣そうにそんな確認をしてきて、キースは脱力のあまり間の抜けた笑い声を立ててしまった。


 (中略)


「今日はきみのしたいようにするよ」
「え…でも」
 イワンは大きな瞳を続けざまに瞬かせているだけだ。
「そのために来たんだろう? してみたいことは?」
 あまりに突飛だったり痛々しい行為を求められたら叶えてやれる自信がないが。経験を急ごうとするくらいだから何か要求があるだろうと思ったのだが、そう切り出したキースにイワンは「僕は…別に」とうつむいただけだ。
 しかし、キースがイワンの肘を手で包むようにして手前に引くと、体重を預けるみたいに上半身を傾けてくる。イワンの長い睫毛が瞳に翳されて、瞼を閉じるのが見えた。二人の唇が輪郭を重ね合う。
 イワンの両手は体を支えるようにシーツを垂直に押しているだけだったが、以前と違ってキースの上下の唇を唇で交互に挟んだり吸ってきたりする。微かに濡れた音が響く。
 唇のほうはされるままにしておくことにして、キースはイワンの肘に置いていた手を脇腹に移すとそっと撫で上げ、撫で下ろした。もう片方の手で後ろ髪を撫で、うなじからこの間噛みついてしまったらしい首の付け根まで手のひらを滑らせると、イワンは息継ぎの合間に熱い吐息をこぼした。
 脇腹の手を前に回り込ませると手のひらでゆっくりと胸を撫でた。腹筋はかなり引き締まっているイワンだが、胸部はほっそりとしていかにも少年らしい体格をしている。指先で触れるとそこだけ感触の違う粒をキースの指がそっと抓む。
「……あ、あの……」
 指の腹でそこを捏ねるキースに、イワンは唇を離すと抗議じみた声をあげた。
「痛かった?」
「そんなところ、いいですから」
 イワンは少し早口になった。
「みんな、こういうところは触らないの?」
「さあ…っていうか……」
 イワンは身をよじってキースの手から逃れようとする。
「けっこう…くすぐったいです」
 イワンは唇を舐めるとこちらの胸に手を伸ばす。キースは彼のするままにさせた。確かに遠慮がちなイワンの指の感触はむずむずとする。だから、キースは親指と人さし指できゅっと抓みあげるようにした。
「わ、っ……や……」
「嫌? 気持ちが悪い?」
 女性のように下地がぐらぐらしないせいで、彼の小さな粒は二本の指でいくらでも引っ張ったり押し潰したりできる。
「なん、で…そこばっ、かり……」
「ごめん。こっちが利き腕だから」
「ちが…」
 キースがもう片方の乳首に手を伸ばすと、イワンは力なく首を横に振る。
「嫌かな? どう?」
「どう、って…あ……」
「気持ちいい?」
 まだ触れる前から固く尖っていたもうひとつの粒を弄れば、イワンは膝頭を擦り合わせた。脱がずにおいたボクサーブリーフの前が明らかに形を変えているのが見える。
 見ているうちに腿もぴったりと閉じられて、時折小さく震えてさえいる。キースがその腿を手のひらで覆うようにひたりと重ねると、イワンは瞼を跳ね上げた。
「……その、本当に」
「ん?」
「男同士でしたことないんですか? 自分はそういうのじゃないって、雨の中で言ってましたよね」
 イワンは腿に置かれたキースの手に自分の手を重ねた。指を一歩一本抓んで引き剥がそうとしている。そうされると意地でも手を退けたくない。腿と腿の間に指を差し込んだら、間近に見えるイワンの眉間に皺が寄った。
「きみとのことは数に入れてもらえないのかな」
「あ…それはそうですけど、それまでに…は」
「ないよ。お話だとよく聞く、学生時代にふざけているうちに級友と何かあったりだとか」
「あ、あるんじゃないですか!」
「…そういうこともないよ。どうして今そんなことを?」
 だって、と言ってイワンは言葉を切る。
「じゃあ、どうしてこんなに平気なんですか」
 イワンはチラリと視線を下げた。キースの指は腿をそろそろと上に伝っていって、あと少しで下着の布地に触れる位置にいる。
「平気どころか頭がクラクラするよ。今こうしていても」
「嘘ばっかり」
「本当だよ。口から心臓が飛び出しそうさ」
 手を浮かすと、下着の履き口に指をかけた。
「触ってもいい?」
「待ってください、僕が」
 イワンの言は無視して、ボクサーブリーフの上部に指をかけて引っ張ると中身がぷるんと頭を覗かせた。それを根元まで露出させると、今度は後ろ側から手を入れて尻の丸みを揉むようにして下着を引き下ろす。
「腰を上げて。脱げないよ」
 イワンは少しばかり悔しそうに鼻を鳴らしたが、キースに従ってのろのろと尻を持ち上げた。膝まで下着を下げた中途半端な恰好がやけに無防備に映る。
「モールで会った人とは結局何もなかったの?」
「え…そうですけど」
「こうされるはずだったのにね」
 キースがカクンと頭を前に倒すと、かなり角度のついたイワン自身の先端にキスするような恰好になった。
「ぅわ、ちょ…ちょっと…」
 慌てたのはイワンのほうだ。
「噛みついたりしていないけど」
「そういうことじゃ…ほんと、何で平気でそんな」
 キースにとっては、イワンをからかうような感覚が強くて、オーラルセックスなのだという意識があまりない。
「僕が…あの、僕がします」
 イワンは腿に載ったキースの手を払うようにして腰を上げた。キースの前に立ち、膝をつくとキースの腰を覆っているタオルの端に手をかける。
「させてください。やってみたかったんです」
 そう宣言されては言い返しようがない。イワンは巻きつけられていたタオルを解き、その奥のものに顔を寄せた。
 彼もまた、あまり躊躇うことなくキースのものを口に含んだ。全長を手で支え、頭を降ろして飲み込んでいく。
 イワンの口の中の暖かさや舌の柔らかさは心地がいいが、それが昂りにつながるわけではない。おっかなびっくり輪郭をなぞるような触れ方では逆にじりじりした気分にさせられる。キースはもう少しで、自分から彼の喉の奥に腰を進めてしまいそうになった。
 感触自体が快感を生んだわけではない。イワンが苦しげに眉を寄せて肩で息をついている様子だとか、性器の先に唇を押し当てたままキースの表情を確かめるために顔を上げてくるときの顔つきが、キース自身に熱を集めていった。


(後略)


…よろしくお願いします!

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Posted on 2013/07/25 Thu. 00:26 [edit]

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