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空/折 「ぎゅーってしていい?」 


診断メーカーさんで、すっごい可愛いネタを見つけたので!

あなたが突然好きな人に『ぎゅーってしていい?』って言われたー」さん
(な、長い…)



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ぎゅーってしていい?」



 いい天気だな、とキースは窓の外を見る。
 高層階に位置するキースの部屋からは青空がよく見える。
 リビングからの眺めは素晴らしく、他の建物は眼下にあるためにまるで空に浮かんでいるような錯覚さえ覚えた。
「本当にいい天気ですね」
 声が返ってきて少し驚く。
 声がしたほうを向けば、いま浮かべた笑顔を引っ込めようかどうしようかと考え中らしいイワンがいた。
「あ…ああ、そうだね」
 慌ててこちらも応じて笑みを見せた。どうやら考えたことを口にのぼらせてしまっていたらしい。
「昼食のあとに散歩に行こう」
 もちろん、ジョンも連れてだ。
「はい。あ…僕はいまでもいいですけど」
「いや、午後から少し曇るそうだから」
 現在はカンカン照りで、人間にもそうだがアスファルトに近い犬にとってもあまり良くはないだろう。
「そうですね」
 イワンは微笑んで膝の上に広げた雑誌に目を落とした。
 古い雑誌を片付けようとして部屋の隅に積み上げていたせいで、やって来たイワンが目を留めたのだ。
 いわゆる贈呈誌というやつで、どの誌面にもスカイハイのことが記事になっている。キースはそういうことにあまり詳しくないが、今となっては貴重な雑誌もあるらしい。イワンがソワソワとそちらにばかり目をやるので、キースはついに吹き出して、見ていいよと声をかけたのだ。
 キースはふたたび窓の外に目を向ける。
 さっき喋ってしまったのは、いい天気だという天候についての感想だけだろうか。
 他のことを口にのぼらせてしまっていなければいいけれど、と思う。
 たとえば……。
 キースはイワンの横顔にチラリと目をやった。雑誌を読むのに集中しているようだ。
 イワンがこの部屋にやってくるのは初めてではない。けれど、恋人という立場で訪れてくれたのは初めてのはずだ。
 そう、つい先日のことだ。二人は晴れて恋人同士になったのである。
 恋人か。本当に恋人になれたのかな、とキースは内心で苦笑した。
 想いを告げたのはキースからだった。
 イワンのことを意識するようになってかれこれ三、四か月も過ぎただろうか。彼がぐっと魅力的に見えてきた。惚れた欲目というやつかもしれない。
 けれど、ヒーローの女性陣までもが「折紙、最近割と普段もマトモになったよね」「うん、普通にお喋りとかも弾むカンジ」「異様にハイテンションか暗くって何言ってるかわかんないかの二択だったのにね」「ちょっと背も伸びたよね」
 などと話しているのを聞いて、少しばかり不安を覚えた。
 以前に、気になっていた女性にお礼の言葉ひとつ言えぬうちに会えなくなってしまったことも思い出された。
 並んで帰る道すがら、キースはつっかえつっかえ何とか自分の想いを告げることができた。
 驚いたのはそのあとで、隣を見ればイワンは頬を染めて顎を引いている。
 僕もです、と言われても一瞬どういう意味かわかりかねた。
 嫌われてはいないだろうと思ってはいたが、彼のほうもそういった対象として自分を見てくれているとは予想外だった。キースとしては、やらなかった後悔よりもやってしまった後悔のほうが、時が経つにつれて薄まるという経験則を応用したに過ぎない。
 嬉しいです、そうなれたらいいなって思ってました、と顔を真っ赤にしてイワンも気持ちを伝えてくれた。
 空を彩る夕焼けが自分の恋を祝福しての色合いのようにさえ思えるほどだった。
 そのときは。
 しかし、先輩後輩だの師弟だのといった関係を長く続けてしまったせいで、なかなか次の一歩が踏み出せない。
 イワンとしては恋人であろうと年長者のキースを立ててくれているのかもしれないが、どうにも打ち解けてくれているとは言い難い雰囲気のままだ。
 いつでも敬語、名前は「さん」付け、キースが何かするたびに恐縮して礼を言うし、甘えてくれたり我がままも言い出さない。
 交際を始めてから部屋に呼んだのだから、何か進展があって然るべきだと思うが一体どのタイミングで何をしたらいいのかもわからない。
 さっきも、いらっしゃいと言ったときに抱きしめるくらいしても罰は当たらなかったかな、などと考えてしまっていた。
 先輩後輩のときは向かい合って座っていたソファでの位置も、今日は隣どうしだ。といっても二つ並んだ一人掛けのほうに座ってしまったせいで、隣は隣でも近づくこともままならなかったりする。これも失敗だったと思う。
 その言葉は幸運にも口にのぼらせることはなかったらしい。キースはホッと胸を撫で下ろす。
 イワンが雑誌のページをめくる音が響く。部屋の隅ではジョンがつられたように大きなアクビをした。
 彼は相当、誌面に集中しているようだ。
「……ぎゅーってしていい?」
 キースはつぶやいた。ほとんど口の中で。
 イワンが顔を上げた。一拍置いてからキースのほうを向く。
 いや冗談だよ、と言おうとしてキースは口を開いた。イワンの唇が動くのが見える。
 もしかして彼は『いま何か言いましたか』と聞き返してくるのだろうか。それなら不用意なことを言わない方がいい。
 けれど、イワンの口から出てきたセリフはキースを驚かせた。
「ぎゅー、って何ですか?」
「えっ」
 何ですか? 何って、それは、つまり……。
「な」
 緊張のせいかキースの声はそこで途切れ、慌てて空咳をこぼした。
「な…何でも、ないよ」
 そうですか、と平板な発音でイワンは言うと、顔を膝の上の雑誌に戻す。
 怒っただろうか。呆れてしまったか。それでも、いきなり席を立って帰ろうとはしない。少しはキースにも分があるのだろうか。挽回をするには……
「あの」
 イワンの声がした。
 腿の上に肘を置いて、手で口元は隠れていた。長い前髪で顔の上半分も見えず、表情は窺い知れない。
「……ちゃんと言ってください」
 ちゃんと。
 ちゃんと言えという要求は、さきほどのキースの発言に対してのものだ。
 キースは窓の外を見た。ああ、いい天気だ。
 イワンは目を雑誌の記事に落としたまま動きを止めていた。手で笑い出してしまいそうな口元を隠して、懸命に俯いているのだがこちらも必死に考えをまとめているキースには、そのことに気づく余裕はなかった。
「だ…抱きしめさせてください……」
 キースの、彼にしてははっきりしない小さな声がしたところでイワンは顔を上げた。
 吹き出すというより腹から体が二つに折れて崩れるような恰好になりながら言い返す。
「――よし!」
 部屋の隅では眠たげにしていたジョンが、自分への命令かと顔を上げて耳をピクピクさせた。
 イワンが立ち上がる。その膝の上から雑誌が滑り落ちた。肘掛を越え、キースのほうに身を乗り出すように体を伸ばす。
 ほとんど放り投げられたような形で抱きついてきたイワンをキースが受け止める。そして、その背に腕を巻いた。
 いま、この部屋に突然誰かが入ってきたとしても、二人は再会を喜び合う友人くらいにしか見えないだろう。それでも、どうあっても二人はお互いを抱きしめていた。
 ジョンはそんな人間の様子を見て、なぁんだ自分のことではなかったかという目をして伏せのポーズに戻るところだった。


END


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

あなたが突然好きな人に『ぎゅーってしていい?』って言われたー」さん

好きな人「ぎゅーってしていい?」
あなた「ぎゅーって何?」
好きな人「えっ」
あなた「ちゃんと言って」
好きな人「だ…抱きしめさせてください…」
あなた「よし!」
あなたは好きな人に抱きついた!


…よし、って言ったほうが抱きついちゃうの?、と一回読んだときは疑問だったけど
気合いを入れるための「よし!」で、だから言ったほうが抱きつくのかなぁ、と。
エイヤッ、感も含めてかわいいです!

(ドキプリの百合カプイラストで見つけた診断メーカーさんだなんて…秘密…)

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Posted on 2013/06/06 Thu. 23:58 [edit]

category: SS(空折)

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