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スパコミ新刊② 「SWEET DESTINATION」 

スパコミ新刊・2冊めのサンプルです。
パラレル注意な『SWEET DESTINATION』 オフセ・52p・500yen・全年齢向け。

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空折ったーさんを引いたわけでもないのに、キース(パティシエ)×イワン(潜入捜査官)…兎虎牛炎も捜査官で月がその上司だったり、モブキャラというか…セリフのある被疑者や被害者がいたりしますので苦手な方はご注意下さい。

……などといいつつ、読み返してみたら、お菓子に囲まれてきゃっきゃしているだけかもしれない…うーん。

ご趣味に合いそうな方は(笑)、よろしくお願いします!


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「SWEET DESTINATION」


(サンプルは冒頭より、1章を大体載せておきます。)


1.


「こんばんは」
《CLOSED》の札がかかっているが、このドアが開くことは知っていた。イワンは声をかける。暖かくて甘い匂いがした。明日の仕込みをしているのだろう。
 調理場からひょっこりとコックコートの男が顔を出した。この店の主だ。その顔にはにこやかな笑みが乗っている。どうしてこの人はこんなふうに笑っているのかイワンは不思議に思う。閉めた店のドアを開けて声をかけてこられたら面倒ごとだと普通は考えそうなのに。
「やあ、どうしたんだい」
 調理場から出てくる姿は、何だか楽しい遊びを思いついた犬みたいだ。そう思ってしまって、イワンはちょっと申し訳なくなった。
「あの、これ剥がれてましたよ」
 拾った紙を手渡す。外に貼られていた求人の貼紙。仕事は調理補助と菓子類の販売。時間・曜日応相談。一番下に電話番号が二つ並んでいる。一つはこのパティスリーの、紙袋にも書いてある電話番号。もう一つは、この目の前の人の携帯電話のものだろうか。
――ああまた、悪い癖だ。
 イワンが手渡した紙の両端には小さなテープが千切れてしまった跡があった。
「ありがとう。夜になって風が強くなってきたみたいだね。もっとしっかり貼ってしまわなければダメかな」
「そうかもしれませんね」
 貼紙の内容については、あえてイワンは尋ねなかった。しげしげと見てたんじゃないです、と言うかのように。
「そうだ。お礼に何か持っていってくれないかい」
「えっ、そんな…いいですいいです」
 イワンが後ずさりするより早く、店主はエプロンを翻して店の中に出てくると、ショーケースの上の個包装された焼き菓子を無造作に掴んで差し出してきた。
「じゃあ、あの、お金を払いますから」
「いいよ。いいことをした人にはいいことがある。ね?」
「かえってすみません……ごちそうさまです」
 慌てたような素振りで身を翻すイワンに、ドアまで見送りに出て、店主は笑いかけた。
「おやすみ。またお待ちしています」
 ぺこり、と小さく一礼してイワンは歩き出す。
――悪い癖、じゃなくて嫌な癖かもしれない。
 さっき数秒目を落としただけの貼紙の内容が、頭の中にしっかりインプットされてしまっていた。
 K・グッドマンという名前。それに携帯電話の番号。
 たぶん自分はよほどのことがない限り、この情報をしばらくは忘れることがない。
 どんな小さな手がかりでも記憶し、忘れないこと。それをこの数年、叩き込まれてきたのだ。
――潜入捜査官になんて、なるものじゃないな。
 風が髪をかき乱してゆく。ジャンバーのポケットに収めた焼き菓子を服の上からイワンの手が撫でた。


 シュテルンビルト市衛生局・資材管理所。
 門にはそんなプレートがかかっている。
 近所の人々もその通りに信じているだろう。
 門をくぐると、さほど広くはない敷地に、くすんだ灰色をした何の変哲もない建物がある。
 そこに出勤してくるのが、実は衛生局の職員ではないことを知っている人間はごくわずかだ。
 イワンもその中の一人、そしてここが職場だった。潜入捜査に駆り出されていないときは、だが。
 市警の採用通知を受け取ったとき、それまで生きてきた中で一番に嬉しかった。しかし、警察学校の入所期間中に呼び出しを受け、イワンの警官人生は変わってしまった。
 イワンがもし死亡すれば、新聞には市警官だと載るはずだ。それは事実だが、真実ではない。書類上、市警に籍を置いているが、問題が発生すれば市内だけでなく東海岸一帯の警察での内部調査に赴く。
 その存在自体をほぼ知られていない部署。警察であって警察でない、独立した内部調査組織。
 イワンは今まで市内どころかどこの警察署にも勤めたことがなかった。しかし、今までに手にした身分証は二ダースを超えているだろう。
 駐車場には先輩のスポーツカーと後輩のバイクが停まっていた。
 仕事の中身には疑問を感じることもあるが、仕事仲間は好きだ。
「おはようございます」
 自分のデスクに寄らずこちらへやって来るイワンに、背の高いハンサムな後輩は小首を傾げた。
「おはようございます…何か?」
「バーナビーさん、これ、よかったらお一つどうぞ」
 イワンが差し出したのは昨夜帰りがけにパティスリーでもらった焼菓子だ。
「いいんですか」
 この後輩は自分で買い込むことはないが、割合に甘いものが好きなのだ。
「はい。貰い物です。ちょうど三つあって。お二人は…まだですか」
 眼鏡の奥の目を細めて、年上の後輩はイワンが広げた手の上から菓子をひとつ取り上げた。
 俳優にでもなれそうな容姿のバーナビー・ブルックスJr.…彼も潜入捜査官の一人だ。
「おじさんたちは昨日も遅くまで飲み歩いていたようですから。迷惑なことに真夜中に支離滅裂なメールが入っていました。あの人たち遅刻かもしれませんね」
「おじさんたち、だなんて」
 イワンは苦笑する。年齢の若い二人は、それぞれベテランとコンビを組まされている。
「おはよう。ま、何してるの?」
 モデルのウォーキングよろしくやってきたのは情報分析官のネイサン・シーモアだ。ネイサンは大部屋にもデスクがあるが、自分専用の部屋も与えられている。
「ミズ・シーモア。先輩からお菓子のプレゼントだそうです」
「あら素敵。女って幾つになっても甘いもの大好きよ」
 バーナビーは敬称に『ミズ』をつけて呼びかけたが、そこに立っているのはヒールの分を差し引いてもバーナビーより背の高い人物だった。体のラインを強調したタイトなシルエットの、色鮮やかなシャツとパンツに包まれているのはどう見ても男性の肉体だ。
 内部調査室よりも深夜のクラブが似合いそうな《彼女》とはじめて会ったときにはイワンも面食らったが、こう見えてネイサンは情報分析のエキスパートだ。
「先に選んでいいのよ。アナタがもらったんでしょ」
 こういう気遣いも年上の女性そのものだった。
「僕はこういうの、時間かかっちゃうんです。このお店の、どれもハズレがないので、どうぞお先に」
「ありがと。そういえば前にもここのお店のお菓子、差し入れしてくれたわよね? じゃあ…これにしましょ」
 菓子を配り終えて席につこうとしたイワンが、気配を感じてサッと振り向いた。ほとんど同時にバーナビーとネイサンも入口のドアを見遣る。
 ドアから姿を見せたのは彼らの上司だ。全員が程度の差こそあれ硬い表情になる。
「――おはようございます」
 室長、ユーリ・ペトロフ。葬式帰りのような仏頂面。顔色は極めて悪い。つまり、いつもどおりだ。
「あら」
 最初に声をあげたのはネイサンで、声を落として「お珍しいこと」と続ける。
「おはようございます」
 生真面目に挨拶を返したのはバーナビーだけだった。イワンは上司の歩む軌跡を目で追っている。
 通信装置を通して指示を出せば事足りるはずの彼がわざわざ足を運んだのには理由があるはずだ。
 磨き上げた新品のような革靴が大股に行き過ぎるが、足音は聞こえない。と思うとその背後からバタバタと二組の騒がしい靴音がやってきた。イワンとバーナビーが顔を見合わせる。
 ぜいぜいと息をつきながらペトロフを追ってきたのだろう、部屋に駆け込んできたのは、虎徹とアントニオ――バーナビーの言う『おじさんたち』だ。
「……な、なんで室長がいるんすか!」
 頭から落ちそうになったハンチングを手で押さえ、虎徹が尋ねた。ペトロフは腕時計に視線を落とし、足を止めずに言う。
「おはようございます。始業時間を一分過ぎていますが、二人とも今日は見逃しましょう」
 成り行きを見守っていたイワンに目を向けた。
「イワン・カレリン、こちらへ」
 振り向きもせず、奥の部屋――形だけの室長執務室へとペトロフは消えてしまう。
 イワンは手の中に握ったままだった菓子をデスクに載せると部屋の奥へ移動する。呼ばれた本人より先に歩き出したのはネイサンだ。目配せを交わしてから、その後ろを虎徹、バーナビー、アントニオも追う。
 イワンより先に入室した他のメンバーをちらりと見て、しかしデスクについたペトロフは何も言わなかった。ただし、後から入室したイワンにだけ話しかける。
「これは君ですね」
 ブリーフケースから情報端末装置を取り出し、机を挟んで向かい合うイワンに視線を合わせた。
 ペトロフが指を動かすと、画像が切り替わる。そこに映った画像にイワンは息を飲んだ。自分の横顔だ。
「撮られているの、気がつきませんでした」
 イワンは申し訳なさそうにつぶやいた。
「かなり遠くから撮影したものです。気がつかなくて当然です。こんなことで叱責などしません」
「おい、どういうことだ、そりゃ」
 ムッとして声をあげたのはアントニオだ。ベテランの彼はイワンとコンビを組んでいる。彼の目には可愛がっている後輩が苛められているように映ったのだろう。
 ペトロフはそれには答えず、イワンに対して尋ねる。
「これは、君の家の近所ですね」
「はい」
 よく知っている場所だ。今日もオフィスに来る前に、そこを通り過ぎた。昨夜も風で剥がれた求人広告を拾い上げて立ち寄った店。
 住宅街にある、小さなパティスリー。甘いものが好きなイワンは時折そこで買い物をする。
「すみやかに、この店で潜入を開始してほしいのです」
「え?!」
「現在、求人をしています。そのアルバイト店員として働いてもらいたい」
「ま、待ってください!」
 イワンは声を裏返した。
「僕らは内部調査をするんですよね? このお店がどう警察内部と関係してるっていうんですか」
「どこかの署から横流しした麻薬でもケーキに混ぜて売ってるとか?」
 混ぜっ返す虎徹をバーナビーは目でたしなめる。
「問題は、この店舗とここに映っている彼女です」
 ディスプレイには店先で挨拶を交わすイワンと店員の女の子が映っていた。彼女もアルバイトなのだろう。まだ十代でケーキ職人ではないらしく、主に販売を任され、簡単な製菓作業も手伝っているようだ。
「二名の店員のうちの一人、ここに映っている彼女の兄は四年前に失踪、**署の警官でした」
 四年前という数字、続いて挙がった警察署の名前を聞いて「もしかして」と虎徹がつぶやく。
「最近入った子たちは知らないわよね」
 ネイサンも事情に思い当たったらしい。怪訝な顔をするイワンとバーナビーに向かって話し始めた。


(略)


「それで、今回はどんな人として動けばいいんですか」
 潜入捜査の際には、別人として行動する。事前にプロフィールを頭に叩き込まなければならない。
「普段通りで結構です。学生証だけ用意させました」
「ぼ、僕として働くんですか?!」
 おいおい、とアントニオも呆れたような声をあげた。
「近所で見かけたこともない人物より、客として店に来たことのある顔見知りのほうが安心して雇用するのではないでしょうか。名前や職業を話したことは?」
「ない、です…けど」
「店員の女性も店主も、君には打ち解けているようです。一から人間関係を作るのでは時間がかかります」
「わかり…ました」
 ペトロフはうなずくイワンから、その背後にボディガードよろしく並んでいる三名に視線を移す。
「この任務についてのブリーフィングは以上です。自分の仕事に戻るように」
 バーナビーは一礼して、あとの二人は鼻白んだ様子で部屋を出て行く。
 イワンは打ち合わせのためにネイサンの部屋に向かうよう言いつけられた。出て行こうとするところを室長に呼び止められる。
「……なんでしょう」
「この店の関係者と、個人的なつきあいやトラブルはないですか? 常連客や出入の業者とも、店以外の場所で会うことや揉めたこともありませんか」
「ありません」
「兄が失踪した女性店員と君は年齢が近いようですが、彼女とは親密な関係にはないのですね」
「……ないです」
「では、店主とは親密な関係には――」
「ないです」
 思ったより強い声が出て、イワンは自分でも驚いた。
「店の人たちと、お店以外で顔を合わせたこともないし、名前も知りません。個人的な話をしたことも」
「わかりました。結構です」
「……失礼します」
 イワンは踵を返した。その背中を眺める二人の、一人がもう一人に呼びかける。
「ネイサン・シーモア」
 なぁに、と応えてネイサンは片方の眉をもたげた。
「やだわぁ。ペットじゃないんだから名前を呼ばれただけで擦り寄ったりしないわよ」
 挑発のような物言いにもペトロフは背筋を伸ばして前を向いたままだ。
「今朝、私が急にやって来て、彼に潜入を指示したのには理由があります」
 ネイサンは、それで?という目つきをする。
「昨夜遅く、店のポストに応募書類を投函しました」
「イワンちゃんの?」
 ペトロフは携帯電話を取り出した。
「そうです。ああ、この電話はあとでイワン・カレリンに渡して下さい。今朝、留守番電話が入っていました。まずはこれを聞いてもらえますか」
 スピーカー設定にして再生する。
『もっ、もしもし!』
 突然の大声に、ネイサンはぎょっとして身を引いた。電話の音量が故障しているのかと訝しんだが、そうではなかったようだ。
『あっ、しまった、大きな声を出してしまってすまない! イワンくん…イワンくんというんだね、おはよう! 昨日は親切にありがとう。助かったよ! あ、ああ、私はあのパティスリーをやっていて…アルバイトに応募してくれたのだから、誰かわかるかな』
 求人の応募についてのお礼と、条件があえばぜひ働いてほしいと男の声が続く。
『帰りに寄ってもらってもいいし、電話をくれても…そうだ、番号を…あっそうか、携帯電話だから番号が残るんだったね、これが私の番ご――』
 録音はそこで途切れていた。規定の録音時間に喋り終えられなかったらしい。ネイサンは堪えていたのかぷはっと息を吐き出す。
「なにこれ、かわいいわぁ」
「この電話があったために、彼に内偵を言いつけに来たのです。いまのメッセージを聴いて、どう思いますか」
 夜、店じまいをしている店主の様子がディスプレイには映し出されている。ネイサンはそれを眺めて言った。
「この人、喋ると印象変わるわね。もうちょっとダンディかと思ったわ。今の電話、女の子をはじめてデートに誘うティーンみたいだったわね」
 その返答に呆れたのか納得したのか、ペトロフは質問を変える。
「さきほどの彼の返答について、どう思いましたか?」
「どう、とは?」
「あの店の関係者と個人的なつきあいや感情の縺れはないのか、と私は質問しましたね」
「そうね」
「最初は、女性従業員と親密な関係にはないのかと尋ねました。彼は驚きもしたし、不快にも感じたようですね。少し間が空いてからNOと答えた」
 それはネイサンの記憶とも一致する。
 イワンの表情の変化は、質問を受けた瞬間に驚きが浮かび、次いで軽い怒りを含んだ羞恥がかすめ、すぐにそれらを掻き消すと表情を硬くして否と答えた。
「私は二度目にも同じ質問をしました」
 ネイサンがうなずく。
「店主とは親密な関係にはないのかと。答えはNO」
「そうだったわね」
「彼の返答は速すぎたように感じました。あらかじめ答えを用意していたかのように」
 たとえば犯人が、警官に問い詰められても『俺はやってない』と言うことをあらかじめ決めておいた場合、取調べを受けても滞りなく話すことができるだろう。
 ただし、否認しようと強く意識しておいた場合、質問へのレスポンスが、実際にその場で考えてから答えるよりも速くなる。計測すればコンマ数秒にも満たない差異だが、経験を積んだ捜査員には『何かがおかしい』と感じられるはずだ。
「先に女の子について尋かれたからでしょう。それに」
「それに?」
「お店のオーナーって男性よね?」
「女性には見えませんね」
 ペトロフは眉ひとつ動かさず、ディスプレイの上に呼び出した画像を眺めている。イワンより頭半分背が高そうだ。体つきもずっとがっしりしている。
「だから慌てて否定したと?」
「慌てて、ってどういう意味かしら」
「彼は以前、親しくなった若い男性容疑者を庇おうと命令を無視した経緯がありました」
「あれはどこかの馬鹿署長が特殊部隊なんか呼んだからでしょう。人命を助けようとしただけだわ」
 ルージュを塗った唇を尖らせてネイサンは言った。
「では、彼は店の関係者と親密なつきあいはなく、たとえ容疑者として追求せねばならなくなったとしても庇い立てする可能性は低いと判断できますか?」
「もし、あの子がその可愛い店員さんや素敵な店長さんをちょっといいなぁと思っていたとしても、あの子ならちゃーんと仕事をするでしょう。もしかしたら親友や恋人になれたはずの人と、永遠にそうはならないってだけ。あたしたちの仕事にはよくあることだわ」
 嫌味のつもりか、それとも自嘲なのか。しかし、ペトロフの耳は必要な部分しか音を拾わないらしい。
「今回の調査にイワン・カレリンを派遣することに異論はないわけですね。ネイサン・シーモア?」
「ないわよぉ」と大きくため息をつくネイサン。
 にしても、と美しくカットと彩色を施された指先がディスプレイを指す。
「お菓子作ってるとこんなにマッチョになれるのかしら。ケーキよりこの人のほうが美味しそうだわ」


(サンプルおわり。)

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Posted on 2013/04/26 Fri. 16:05 [edit]

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