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空/折 「恋人未満たちのクリスマス」 


季節ネタなので、とっとと(笑)投稿。
実は、この二人で告白編を書くのははじめてかもしれない!





 わりと普通に喋るようになって三か月。プライベートでも出かけたりするようになって一か月とちょっと。
 そして、クリスマスまであと半月。
……いやいや、最後のはなんだ、最後のは。
 イワンは脳内のカレンダーを押しやった。
 確かに街には緑と赤のクリスマスカラーが溢れ、寄り添って歩くムード満点の恋人たちも目につくようになった。それでも。
 クリスマスを題材にした曲ばかりが流れるカフェの中。テーブルを挟んで向かいあっている人を、チラチラとイワンは盗み見る。
 クリスマスもこの人はパトロールをするのだろうか。
 家族や恋人たちが家の中で暖まる上空を、一人きりで飛んで。
 たぶん、するだろう。大晦日でも、新年でも。
 店内の飾りつけを眺めていたらしい視線が前に向いて、イワンと目が合う。青い瞳。
「あの、これ、家に帰ったら、カードを書いてすぐに送ります」
 イワンは内心の考えを隠すように慌てて言った。隣の椅子に置いた紙袋を指して。
「お国柄なのかな、家の慣習かな。私は子供の頃から…というかうちの一家というか一族というかはね、クリスマスのプレゼントは夏の終わりには探しはじめるんだ」
 キースは言った。
「12月に入るとプレゼントが届きはじめてね。その頃には飾りつけの終わったツリーの下に、続々と届くプレゼントを並べていくんだよ」
 この人の笑顔は寒さを感じさせない。
「楽しいですね、それ」
「そうなんだ。そしてクリスマスの朝に家族揃ってそれを開けていく。だから、イワン君の話を聞いたとき、慌ててしまってね」
「ああ、それで」と、イワンも笑う。
 今日は、仕事帰りに一緒に帰ろうということになって。道すがらの会話の中で、キースは「ご家族にクリスマスプレゼントは何を贈ったんだい?」と尋ねた。
「まだ、どうしようかなぁと考えていて」
 というイワンの言葉に「え?!」とキースは目を剥いたのだ。
 さらに、そんな顔のキースをはじめて見たイワンも、うわぁ僕は何かやっちゃったのか、と蒼白になって。往来で二人はおかしな顔のまま、しばらく見つめあってしまった。
「どうしようかなぁというのは……まさか手に入れていないということ? 届ける方法を考えているのではなくて?」
「は、い……。ショッピングモールでこの間見かけて、ちょっといいかなって思ったりはしたんですけど、って、え?!」
 話している途中のイワンの腕をキースはがっしり掴むと、引きずるようにして歩き出したのだった。
 歩きながら、誰に何を買おうとしているのかをキースは聞き出し、リストアップされたその店をイワンとともに順にめぐりながら、買い物が終わるまでつきあったのだった。
「勝手なことをして申し訳なかった」
 買い物が終わり、両手に紙袋を下げたイワンに向かって、キースはハッとしたように頭を下げた。
 イワンは驚いて「やめてください」と繰り返した。そして、おずおずと「買い物につきあってもらったお礼にお茶でもどうですか」と言ってみた。
「勝手にモールに引っ張ってきたんだから、お茶は私にご馳走させてくれ」とキースが返してくる。
 結局、カフェのカウンターでキースがイワンの分を、イワンがキースの分の代金をそれぞれ支払った。二人の頼んだものは同額だったので、それに気づいたときには二人とも噴き出してしまった。
「……おかげで、いいものが手に入ってよかったです」
「だったらお節介をした甲斐があったよ」
「お節介だなんて、そんな」
 まだ温かさの残るソイ・ラテを啜る。
「こうやって家族と離れると、メッセージとかプレゼントを贈る機会って、やっぱり大切にしなきゃ、って思いますから」
 ヒーローとしてこの街を守るということは、この街からよほどのことがない限り出られないということでもあった。
 まだ両親は健康そのものだけれど、親の死に目に会えないということだって十分あり得る。そういう職業なのだ。
「そうだね。その歳でそんな大切なことに気づける、イワン君は偉いな」
「え、そんなこと…ないです……」
 手の中のマグカップを回す。
 これは、キースが…というよりスカイハイが何年か前にどこかのインタビューで言っていたことだ。その受け売りだ。
 ヒーローとしてデビューする前から憧れて、雑誌やTV番組の中でその姿を、発言を追いかけていた。自分も同僚になるだなんて、考えてもみなかったことが現実になって。
 スカイハイの『中の人』と口をきいたら、キース・グッドマンという人の普段の姿を見たら、幻滅するんじゃないかと自分勝手な不安を膨らませていた。
 意外なことはたくさんあった。正直、知り得たことに、えーっと声をあげたいような気分になったのも一度や二度ではないのに。不思議と、失望するとか、距離をおきたいとは思わなかった。
……それどころか。
 もっと知りたいとか、もっと傍にいたいと、思い始めてしまった。
 あるときから、クリスマスとか新年を迎える瞬間を一緒に過ごしたいと、考え始めてしまった。
 好きになってしまったものは仕方がない、とイワンはおかしな諦めを自分に許していた。
 自分が日本文化に惹かれるのには、理由なんてない。今やそれが自分の職業を支えてさえいるのだ。そういう「好き」なら構わないのだ。けれど。
 今、向かい合ってお茶を飲んでいる人を好きだということは、特別な日を過ごしてみたいだなんて考えていることは、表に出すわけにはいかない。誰も得をしない「好き」だ。
「そろそろ、行きましょうか」
 ソイ・ラテを飲み干してイワンが言う。キースは微笑んでうなずいてくれた。


 カフェを出ると、目の前はモールの広場だ。
 道ゆく人々がみんな嬉しそうにあちこちを、大体は斜め上を指差しては何か言い合っている。
「……ああ、すごいね」
 キースも釣られたように見上げて、笑顔になった。
「あ、ほんとだ」
 イワンも思わず目を輝かせた。
 モールのあちこちに施されたクリスマスのイルミネーションが、日が落ちてキラキラと輝いている。
 さっきはまだ日が暮れていなかったし、急ぎ足で買い物をしていたからよく見てはいなかったらしい。
 せっかくだから見ていこう、と言い合ったわけではないのに、二人ともゆっくりした足取りになっていた。斜め上を向いて、口元がほころんでいる。
「あ、うわぁ!」
 イワンが驚きの声をあげてしまったのは、ドーム状に作られたイルミネーションのオブジェの前だった。センサーが仕掛けてあるらしく、イワンがその地点を通るとドームに向けて突然シャボン玉が吹き上がったのだ。
「すごい! キレイ!」
「あ、そこだったんだ!」
 高校生くらいの少女が二人、イワンを指差して歓声をあげている。唐突な演出に固まっていたイワンも社会人としての余裕を取り戻して「どうぞ」と彼女たちに場所を譲った。
「面白い! 見て見て!」
「写真撮ろうよ、写真!」
 センサーの前で動くとシャボン玉の噴き出し方が違うので、少女たちはひとしきりはしゃぎあっている。キースとイワン以外にも足を止める人が増え、みんなしてその様子を眺めてしまう。
「あー! 自分の恋人と来たいよね!」
 デジカメを仕舞いながら、少女の一人が叫ぶように言った。それは、隣に立っていた友人にではなくて、目測を誤ったのだろう逆側にいたキースに向けての発言になってしまった。
「……そうだね?」
 思いきり目が合ったせいか、いつもの天然ぶりのなせる業か、キースは真顔で少女に相槌を打っている。周囲からクスクスと笑い声が起きた。
「やべ! すいませんっ!!」
「マジで?! ウケるんだけど!!」
 少女たちは身を翻すと小突きあいながら走り去っていった。
 彼女たちを見送ってからキースが視線を戻すと、隣でイワンが体を折って苦しげにしている。
「……キ、…キー、ス…さん……っ」
「ど、どうしたんだ、イワン君!」
「お腹…いた、い……です……何ですか、今の、っ」
「え?」
 イワンがいわゆる、ツボに入っている状態だということがわからないらしく、キースはおろおろとしてしまう。二人は、そこでまたしばらく立ち止まらなければならなかった。


 それからも、またゆっくりとモールの中を歩く。
 二人はゲートの近くの、エントランスと呼ばれる場所にいた。ここを抜ければショッピングモールの敷地はもうすぐ終わりだ。
 モールで一番大きなツリーを見上げて、キースが小首を傾げている。
「ツリーに仔豚を飾るって、どこの風習だろう」
「仔豚? あ、このキャラって……ああ、これですよ」
 イワンは立て看板を見つけた。このショッピングモールのマスコットキャラクターの仔豚が天使バージョンになって、こっそりとあちこちのイルミネーションに紛れ込んでいるのだ。
 ちょっとだけ自分の……折紙サイクロンの見切れに似ているなんて考えてしまう。
「向こうにもいますよ」
「ああ本当だ。目がいいね。あ、あれも?」
「そうですね、天使じゃなくてトナカイのツノだ!」
 ホラあっちも、と叫びながら、気がつくとイワンの手はキースの袖をつかんでいた。
「――あ!」
 ハッとして手を離す。
「本当だ。面白いね」
 キースは離れていったイワンの指先にちらりと目をやったが、そんなに気にしたような素振りもなく、色の変化を続けるイルミネーションを眺めていた。
「……すみません」
 キレイで、楽しくて。思わずはしゃいだあとには、振り子が逆に戻るようにガクンと落ち込んでしまう。
 今の絶対に引かれてるよな、とイワンは自分を嗤った。やけにヘラヘラしてバカみたいだ。
「え? 何がだい?」
「なんか、テンションあがっちゃって」
「ああ、わかるよ。キレイなものを見ると楽しくなるね」
 そうじゃなくて、とイワンは思う。僕が勝手に盛り上がってたのは、イルミネーションがキレイだったからだけじゃないんです。
 さっき耳に入ってきた少女のセリフを思い出す。
「自分の恋人と……来たいですよね」
 言葉の途中で、イワンは視線をブーツのつま先に向けた。
 恋人どうしのデートみたいな場所に来て、そういう雰囲気のまっただ中にいるから、勘違いしかけたんです。
「そうだね」
 返ってきたキースの声は明るかった。
「そう…ですよね」
「イワン君も?」
「え?」
「君も、自分の恋人と来れたらよかった?」
「そ、れは……」
 それは、そうだ。今、隣にいるのが自分の恋人だったらどんなにいいだろう。
 隣にいる、この人が恋人だったら。
「でも、僕は……こ、恋人なんて、いないし……」
「そうか。そうだね」
 笑い出す寸前くらいの、明るい声でキースは言った。そんな言い方しなくてもいいんじゃないですか。キースさんにだってつきあってる人がいないことくらい、これだけ一緒に行動していればわかります。だから僕が、おかしな期待しちゃうんじゃないですか。
「だったら、いい方法があるよ」
「いい方法?」
 イワンは顔を上げて、首を横にねじる。キースは体ごとイワンの方に向き直っていた。
「あー、時間もうすぐじゃない?」
「そうだねぇ」
 子ども連れの夫婦がそんな会話をしながら、二人の横を足早に過ぎていく。
「……イワン」
 キースは急に笑みを引っ込めた。イワンは思わずカクカクと体ごと、キースの方を向く。回れ右の途中で止まったような恰好だった。
 キースはたぶん一秒にも満たないくらい目を閉じて、その瞼を開けると言った。
「私の恋人になってください」
 その瞬間、辺り一面のイルミネーションがフッと掻き消えた。
 イワンは自分の脳の容量がオーバーして暗転したのかと考えた。そんなわけない。じゃあ停電? いや、その前に今の言葉は何だ? 幻聴? 新手のNEXT? キースさんが、僕に……恋人に…なんだって?
 ファンファーレのような音とともに、イルミネーションが一斉に点灯する。
 周囲がキラキラと輝く中で、イワンの視界に一番に飛び込んできたのはキースの青い瞳だった。
「……うん」
 大音量とまばゆい光に驚いて発したみたいに、イワンの口からあっけなく声が出た。
 うん、って! なんてラフな返事をしちゃったんだろう。いや、ちょっと待って、あれっ「うん」って…YESって言っちゃった……!
「――ありがとう、そして」
「え、あの、僕は」
「素敵なプレゼントを、ありがとう」
 頭の中では様々な言葉を飛び交わせながらも言葉にならずに立ち尽くしているイワンを、キースは半歩間を詰めると、思いきり抱きしめた。
 クリスマス・メドレーが流れ、すべてのイルミネーションが音楽に乗って明滅する。それが日に三回、一時間ごとに行われる《音と光のショー》だということに、イワンとキースが気づいていたかどうか。
 人々が歓声をあげて、思い思いに上の方を指差したり見上げている中で、二人だけは目を閉じて抱き合っていたのだから。


《 E N D 》


 ・ ・ ・ ・ ・

  I just want you for my own
  More than you could ever know
  Make my wish come true
  All I want for Christmas is... You

     「 All I Want For Christmas Is You ―恋人たちのクリスマス― 」

 訳:
  あなたが考えてるよりずっと
  私の恋人になってほしいの
  願いを叶えて
  私がクリスマスに欲しいのはただ、あなただけ


緊張(?)のあまり口調が逆になる、というのをやってみたかったのですが。
マライアさんのこの曲、大好きです。でも歌詞を訳してみると……まだくっついてない?!
邦題が秀逸すぎて気づいてなかったZe! ということでこの題です。皆さま、よいクリスマスを!!
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Posted on 2011/12/19 Mon. 00:58 [edit]

category: SS(空折)

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